challenge
39.Marry in haste , and repent in leisure
2025/11/05 17:07【お題】ダンデ×ソニア
39.Marry in haste , and repent in leisure 急いで結婚してゆっくり後悔するのだ
「結婚なんて、急いで決めるもんじゃないぜ」
その言葉に、思わず飲んでいたコーヒーを喉に詰まらせたオレは、間一髪差し出されたティッシュで口元を覆った。
「げぇっほ、っ」
「大丈夫かキバナ」
オレの喉及び鼻に痛恨の一撃を与えた男が、呑気な顔で気遣ってくる。大丈夫なわけない、みんなの憧れであるドラゴンジムの広告塔が、人前で鼻からコーヒーを吹いている図なんざ死んでも見せられるか。
「意外な自説だね。根拠を聞いても?」
オレの傍らでエスプレッソをすすっていた救世主は、ティッシュケースをこちらに投げながらダンデに問いかける。
「そうか?」
ネズの問いに、ダンデはきょとんとした。カップを掴む左手薬指には、真新しく光るマリッジリングが存在感を示している。宝飾品に興味がないダンデが、バトルの時すら外さないその約束のしるしを、早くも後悔しているとは、にわかに信じがたい。
まして、相手はあの、ソニア博士だ。
簡単に、恋愛感情ですといえるような生易しいものではなく、まるで呪いのような情熱の果てに、ようやく手に入れた唯一の女。
そんな彼女との結婚を、急いで決めたのは誰あろう、オマエだ。
そんで、なんで後悔してんの? オマエ、そんな男だっけ?
オレの心の問いに答えるように、元チャンピオンは至極あっさりとのたまった。
「もう少し時間があれば、もっといい結婚式にできたんだ」
「ん?」
「はぁ?」
期せずして、オレとネズの間の抜けた声がハモる。オレより先に立ち直ったネズが、あー、とわずかに呆れたような声を上げた。
「もしかして……ソニア博士のお色直しの回数が、不満?」
それに、ダンデが前のめりに食いついた。
「そうだ! いま思えば、三着しか着なかったのはもったいなかった。オレカラー、ワンパチイメージ、リザードンイメージの他にも、オレの手持ちや、彼女の元手持ちたちや、他にもいろいろなポケモンコーディネートのドレスを考案する時間を取ればよかったんだ。それに、結局シュートでしてしまったが、ブラッシーやハロンでも、場を設ければよかった。それから……」
普段それほど口数の多くない男の暴走は、その後数時間も続いた。最後の方は、ネズは完全に無視して作詞のノートを開いていたし、オレも自分のポケッターの更新作業に勤しんでいたが、それでも止まることのないダンデは、下手すればもう一度結婚式を挙げかねない。
オレはここにいない彼女に向かって、心から同情の苦笑を浮かべた。
