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38.I dream about you every single night

2025/11/04 14:34
【お題】ダンデ×ソニア



38.I dream about you every single night いつもあなたの夢を見ている。 



 チャンピオン戦を防衛すると、必ず見る夢がある。
「……」
 茫漠とした白い空間にたたずむダンデは、見覚えのあるその場所をゆっくりと見渡した。
 この場所に来るのは、都合九度目……初めて見た夜は、まだ十歳の幼い日だった。
 普段、夢はあまり見ない方だ。たまに見るとしても、その内容は大体同じで、登場人物は家族や友人、そして幼馴染。手持ちのポケモンや、まだ見ぬ伝説のポケモンなどにもお目にかかるが、皆勤賞はたったひとりだ。
「おお」
 思い浮かべた瞬間、すぐ傍らに彼女が現れた。夢とはかように都合がいい。ダンデの目の前で、ソニアは春陽のようにやわらかく笑った。
「ダンデくん、チャンピオン防衛おめでとう」
 これはまさしく昨夜、電話口で言われた言葉。毎年贈るファイナルバトルのチケット席は、ついぞ埋められたことはないけれど、こちらが連絡をすればそれを無視するソニアではない。時刻は深夜を過ぎているというのに、ファイナル戦のその日だけは、決してダンデの電話に文句を言わない彼女だった。
 けれど、結局は電話だ。
 その声も、言葉も、悲しいほど遠い。
「ダンデくん」
 にっこりと笑いながら、ソニアはダンデの胸に飛び込んできた。そのためらいない体温に、ダンデは反射的に腕を回す。大人になった彼女とは、もうこんなふうに気安く触れ合ったことはない。なのに、そのやわらかさもうっとりするようないい香りも、まるで本物のようにリアルだった。
 初めてこの場所の夢を見た十歳のころは、てらいなくつなげていた手と手。それから数年は、無邪気に触れあえた。
 転機が訪れたのは、十五の歳。こころと体のバランスが危うい、微妙な年ごろの夢で、ダンデは初めてソニアを奪った。
 自分の願望が露骨に反映されるこの空間で、ソニアはいつだってダンデの望むままに振舞う。時に、彼自身気づいてもいなかった赤裸々な欲望を思い知らされて、まどろみの中、のたうって泣いた年もあった。
 そんな思春期を超え、いまのダンデが年に一度のこの逢瀬に、ソニアに望むことはたったひとつ。
「――ソニア、名前を呼んで」
「ダンデくん」
「もっと」
「ダンデ……ダンデくん」
 天使のように優しく、女神のようにやわらかな腕に包まれて、ダンデはソニアを想う。
 そしておそらく――そう遠くない未来、夢のソニアと決別し、現実の彼女に手を伸ばすのだ。
 どれほど夢が心地よくとも、ダンデにとってのソニアは、かけがえのない彼女ただひとりなのだから。


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