challenge
14.Just for you ただあなたのために
2025/10/11 14:22【お題】ダンデ×ソニア
くしゃくしゃの髪の毛をさらにかきむしりながら、ソニアが唸っている。
何徹目なのか聞くのもはばかられる、よれよれの姿。目の下のクマはどす黒く、カサカサに粉を吹いたような肌は睡眠不足が極まって青白い。いつもお洒落に着こなす白衣はすっかりシワとシミが浮いてしまっていて、その下のシャツは何時間着ているのだろう。
眠気覚ましのコーヒーは、紙が散乱した机上から最も遠い場所にある。チェストの上には、ワンパチ型マグカップの外、ありとあらゆるコップがあった。洗う暇もなかったのか、ピザやカップデリバリーの残骸もうずたかく積まれている。食べ物と飲み物の匂いが充満して、お世辞にも清潔とは言えない空間があった。
ソニアは時折、愛用の万年筆の尻を噛む。非常に行儀が悪く、不衛生な癖だが、幼い頃から直せない悪癖だ。ソニアが集中した後のペンはボロボロで、子供の頃ダンデが貸したそれは何度も餌食になっていた。ソニアは平身低頭謝って、弁償すると訴えたが、ダンデは気にしない。ソニアの歯形がついたペンは、不思議とこちらの頭もよくなるようで、テストの験担ぎによく使用していた。
そういうわけで、ソニアは煙草を絶対に嗜まない。一度でも手を出したら、ヘヴィースモーカー一直線だ。煙草の香りは、ポケモンも、ダンデも苦手なのでありがたい。
ぬぅん、と、ソニアが低く唸った。論文の佳境は、いつもの洒脱な彼女を原始人のように変える。きっと百年の恋も冷めるよね、と自嘲したソニアに、ダンデはなんと答えただろう。
彼女の散らかしたものを淡々と片付けながら、ダンデはちいさく笑った。
邪魔にならないよう、そのおおきな身体をこそこそとさせながら部屋中を歩く。ごみを分別し、食器を洗い、床にこびりついだシミをこすり落として、すっかりへたってしまった観葉植物に丁寧に水を与えた。
紙類は判断できなかったので手をつけなかったが、積み上げられた本はきちんと分類し、丁寧に重ね直す。それからエプロンをつけ、冷蔵庫から材料を取り出し、ことことと調理を始めた。
徹夜続きの不摂生には、刺激の少ない、野菜たっぷりのスープがいい。デザートに用意したプリンは既製品だが、その他はすべてダンデの手作りだ。
彼を知る者が見れば、顎を外して驚くだろう甲斐甲斐しい姿に、しかしソニアは気づいていない。気づいても、驚くには値しない。
それは、ソニアのピンチには当たり前に見られる、ダンデの愛の献身だった。
