challenge

13.one-night stand 一夜だけの関係

2025/10/10 09:22
【お題】ダンデ×ソニア


『ダンデなら、一晩だけでも大歓迎よ!』
 深夜、軽く研究資料を読み込んでいた傍らで、つけっぱなしのテレビから聴き慣れた名前が飛び込んできた。自動的にそちらを向くと、賑やかなパブの酔客にインタビューしているらしき映像と、年若い女性客がキャラキャラと楽しげに笑っている様子。
『ダンデ、あたしを好きにして!』
 テロップには、このほど十度目の防衛を果たした伝説のチャンピオンを寿ぐ文字と、彼のバトルを観戦する市民の特集が組まれていた。ライブ映像らしいそこは、試合の興奮冷めやらない様子のファンが大変な盛り上がりを見せている。
 アルコールで大胆になっている女性たちは、ダンデのポスターやユニフォームにキスをしまくっていた。男性客はそれを見て囃し立て、インタビュアーもエールを片手に乾杯の音頭を取っている。
 その乱痴気騒ぎを横目に、ソニアは静かにリモコンを操作する。ぷつりと途絶えた喧騒のあと、シンと静まった夜更けの気配に、そっと息をついた。
 無敗の王者、か……
 十度目の防衛は、最近では快挙といえる。もっと長く王座に君臨していたチャンピオンはいるけれど、ローズ委員長の暗躍の下、ガラル全土がこれほどポケモンバトルに熱狂してからの王者は、やはり一線を画す存在だった。
 国を挙げての英雄になった、幼馴染。
 見知らぬ女性に、一夜限りでも、なんて臆面もなく秋波を送られる存在になってしまった彼を思い、ソニアはこてん、とおでこを机につけて唸る。
「……遠いなぁ」
 未だマグノリア博士の自称助手としてくすぶっている自分には、到底追いつけない存在。そんなふうに思うこと自体、胸のどこかがきりきりと痛むのに、今夜のソニアはさらに自分をいじめる。
「……一晩だけでも……、とか」
 見知らぬ女性から、男性としてそれほどに魅力があると称えられて、ダンデはどう思っているのだろう。悪い気はしないだろうか。それとも、当たり前だと嘯いて、夜ごと列をなす女性と楽しんでいるとか……
 互いに夢中になってポケモンを追いかけ、日が暮れるまで一緒に駆けていたあの頃、こんな未来が待っているなんて、ソニアは想像もしなかった。
 ぐう、と低く唸って、得体の知れない痛みに身を折る。
 遠く離れた一等星。誰もが手を伸ばし、彼を捕まえようと躍起。
 ソニアの両手は、すでに幼馴染のそれと離れ、自分の夢へとひたすら向かう。
 でも、それでも。
「……ダンデの、ばか……」
 理不尽な嫉妬に狂いそうな夜だった。


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