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11.a love marriage 恋愛結婚

2025/10/08 16:28
【お題】ダンデ×ソニア



 恋愛結婚に憧れるんだよね、と、彼女は言った。
 その突拍子のないセリフに、ダンデは日に焼けた顔をぱっと上げる。
「れんあいけっこん? って、なんだ?」
 結婚はわかる。恋愛も……なんとなく。でもそのふたつは、わざわざ重ねて使うものか?
 ダンデの問いに、ソニアはふふん、とわずかに小鼻を動かす。なにかものを教える時の彼女の癖で、大変にこまっしゃくれている。けれどダンデは、幼馴染の類稀な知性に絶大な信頼を置いているので、その表情を見るのが好きだった。
「恋愛結婚っていうのは、恋愛して、結婚することだよ」
「そんなの、当たり前だろ?」
「ううん、世の中にはね、お見合い結婚とか、政略結婚とか、恋愛じゃないはじまりの結婚はたくさんあるの」
 オミアイ。なんだかよくわからない単語に、ダンデが首をかしげていると、傍らに転がっていたホップが、ぐずぐずとむずがりだした。もうそろそろ起きるかな、汗かいてるから着替えさせなきゃ、と、まるで実の姉のように甲斐甲斐しく言って、ソニアは立ち上がる。
「わたしは、お母さまとお父さまみたいに、ひと目会った瞬間から、このひとだったんだ、って思えるような恋愛結婚がしたいんだ」
 ホップの着替えとタオルを手に、ソニアは妖精の羽根のようにふんわりと笑う。ダンデはその笑顔に、出会った瞬間からずっと目を奪われ続けているのだが、恋愛結婚に憧れるソニアは、果たしてダンデと出会った時、どんな感想を抱いたのだろう。

 ――というようなことを、いま唐突に思い出したのは、神の啓示というやつか。
 明日に迫った結婚式の準備に追われ、ゆっくりする暇もなかった恋人――婚約者と、ようやくふたりきりになれた。あと少しで、ダンデは悪友に独身最後のパーティーへ連れ出され、ソニアにも友人たちが大勢駆けつけてくる。
 そのわずかな間隙に、ダンデはソニアへこっそり問うた。
「ソニア。憧れの恋愛結婚にはなったのか?」
 その言葉に、ソニアはきょとんとしてから、真夏の太陽のように晴れ晴れと笑う。
「残念ながら、ひと目会った瞬間から、このひとだったんだ、とは思えなかったな」
「そうなのか」
「ふふ。でもその代わり、他の誰も目に入らなかった。ダンデくんだったんだ、って知らないうちから、ダンデくんだけだったみたい」
 そんな殺し文句を言って、ソニアは軽やかにダンデにキスをする。妖精の羽根のようにふんわりとしたくちびるに、ダンデはたまらない気持ちでキスを返した。


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