challenge
8.I'm into you 君に夢中
2025/10/05 09:25【お題】ダンデ×ソニア
出会った頃、自分達はまだプライマリースクールに入りたての、幼い子供だった。
いつもどこかしらに擦り傷をこさえた活発な少年と、それに振り回されながらも負けずに動いていた少女。風邪をひけば鼻を垂らし、調子に乗ってはずっこける。いつもおやつを口いっぱい頬張って、虫歯になったと大騒ぎ。寒い日のおねしょ、腐ったきのみを食べてお腹を壊した現場、そんな気まずい成長過程をつぶさに目撃し合って、血の繋がりよりも濃い、唯一無二の時間を無邪気に過ごした。
情緒が発達するずっと前から、性差なく過ごしてきた幼馴染。自分の顔よりも見飽きた相手に、今更夢中になることなんてない、と高をくくっていた。
それなのに――
「わわわ、時間ないっ」
目をやった時計は、デッドラインまでいくらもない。待ち合わせ場所にちょっとでも遅れたら、良かれと思った恋人が、最悪の選択……ちょっとその辺まで、ソニアを探しに行こうかな……を発動して、せっかくのデートが終日捜索に終わってしまう。
焦れば焦るほど、ソニアのファッションは決まらなかった。
楽しみにしていた日の前日、これにしよう、と決めたコーディネートはルリナのお墨付き。もともとソニアのセンスもよく、彼女の手持ちでデートに耐えられない二軍衣装はほとんどない。
それなのに今朝になって、秋雨前線が近づいた影響かぐんと冷え込んだ。予定していたスカートは、可愛らしいラインだけどちょっと薄い。ボトムスを変えれば当然、トップスも変わり、アウターも変わる。靴も、アクセサリーも、バッグも、髪形も、ぜーんぶ変わるのだ。
ソニアは焦りながら、頭の中でダンデの好みを思い浮かべた。
ダンデくんの好み……甘い系? クール系? 色は暖色? 寒色? 髪型はふわふわ? かっちり?
ここにきて、リサーチ不足に臍を噛む。研究者としてなんという体たらくか。恋人の好みも知らず、のほほんと過ごしていたなんて!
でも、ついこの間まで幼馴染だった彼の前で、どんな格好をしようとも、全然気にならなかった。着飾るのは自分のためだけで、誰の目にどう映るか、なんてことはよほどでないと二の次。
ましてや、ダンデくんなんて。
今更、気取ったって手遅れなのに。
それなのに……いまは。
「ワンパチどうしよう、決まんないよぉ~」
ベッドの隅でソニアの衣装にうずもれた相棒は、のんきにあくびをこぼしている。ソニアはべそをかきながらも、ダンデの目に映る最高の自分を目指して動き続けた。
