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#10.惚れる【ダンデ×ソニア@Pokémon Shield】

2026/06/01 17:37
【お題】ダンデ×ソニア
 


 *#09.悩むの数日後のお話です。



「いや~、買ったねえ!」
 シュートシティ中心部にある高層複合ビル上階。完全予約制エリアであり、芸能・リーグ関係者御用達の安心設計な上、運河を臨む絶景も楽しめるそこで、ソニアは満足そうに戦利品を眺めて言った。
「ホント。久々に楽しかったわ」
 彼女の傍らのリゾートチェアに深く腰を掛け、長い脚を組むルリナがほほ笑む。言葉通り、今日は思う存分気になったアイテムをチェックし、納得のいく散財を果たしていた。
「でも、本当によかったんでしょうか……わたしたち、色々買ってもらっちゃって」
 ソニアとルリナの正面、二人掛けのゆったりとしたソファに座っていたユウリが、申し訳なさそうに眉を下げる。その隣で、あまり表情の変わらないマリィが、一生懸命に頷いていた。
「いいのいいの。ダンデくんがおごるって言ってるんだから、思いっきり甘えちゃえばいいのよ」
 ふふん、と胸を張って、ソニアはダンデから預かったブラックカードをちらりと掲げる。本日の会計は、すべてこの魔法のカードが請け負っていた。年少組のふたりは、複雑そうに顔を見合わせる。
「でも、ダンデさんにおごってもらう理由がなくて……」
「なんか、ネズさんとの約束? みたいなこと言ってたわよ。詳しくはわかんないけど、ダンデくんがいいって言ってるんだから、気にしないでいいってば」
「そうよ。相手は十年無敗のチャンピオンだった男よ。わたしたちがショップごと買い占めたって大したダメージは与えられないわ」
 ルリナが切れ長の瞳を細めるのに、ユウリとマリィはもう一度顔を見合わせて、それからこくんと頷いた。
「そういうことなら……お言葉に甘えます。ありがとうございます、ソニアさん」
「ありがとうございます」
「え、いやいや、お礼はダンデくんに言ってあげて~」
 慌ててソニアが言うと、ルリナが呆れたように半眼を閉じる。
「いいじゃないの、そこは『どういたしまして。旦那に伝えておくわね』で」
「だ、旦那じゃないしっ」
「婚約したんでしょ?」
「婚約は結婚じゃないですっ」
「あら。結婚しない可能性でもあるの?」
「……っ、ない、けどぉ……っ」
 途端にソニアがへにゃりと真っ赤になった。年上の女性のそんな可愛らしい様子に、ユウリとマリィは思わず瞳を輝かせる。テーブルいっぱいに並ぶ色とりどりのアフタヌーンティーセット越しに、少女たちの好奇心が爆発した。
「あの、ソニアさん、今日は、ダンデさんとのお話聞かせてもらえませんか!」
「へっ!?」
 ユウリのキラキラとした眼差しの隣で、マリィが遠慮がちに上目遣いになる。
「あたしも、色々聞きたい……今日、おふたりに誘ってもらって、ばり嬉しくて、昨日眠れんとでした。センスいいコーディネートとかたくさん教えてもらったのも楽しかったけど、やっぱり、一番聞きたいの、そこやけん……」
「え、え、なに、そうなの? えー、なんか恥ずかしいな……」
 照れたように自分を扇ぐソニアに、ルリナがちいさく笑う。
「年頃の女の子だもの、身近なコイバナは気になるわよね」
「って、ルリナまで……」
「いいじゃない。この子たちなら信用できるし、たまにはあなたの惚気も聞きたいわ」
 親友の嫣然としたほほ笑みに、ソニアは火照った顔を冷ますべく、爽やかな柑橘の香りがするアイスティーを一口飲んだ。それから、いつまでも年下の少女たちに情けない面は見せられないと、余裕ぶった笑みを浮かべる。
「仕方ないわね。特別に、なんでも質問に答えてあげましょう」
「やったぁ!」
 きゃあっと高い声を上げて手を取り合うユウリとマリィ。完全に周囲の視線や声を遮断するプライベートなボックス席だったが、ソニアは一応声を潜める。
「はいはい、お嬢さん方落ち着いて」
「あ、ごめんなさぁい」
 肩を竦めながらも、ユウリとマリィは嬉しそうにくすくすと笑う。そんな少女たちに、ソニアはやれやれと肩を竦めた。
「楽しそうなところ悪いけど、わたしとダンデくんの話なんて、そんなに面白いもんでもないよ? キラキラしたコイバナとか期待してたらがっかりさせちゃうかも」
「あら、そうなの?」
 ニヤリと笑うルリナに、ソニアはツンと澄ました顔を向ける。
「そうでしょ。ルリナは全部わかってるくせに」
「確かに、あなたたちとはジムチャレンジのころからの付き合いだし、まあ大体のところは聞いてるけど……わたしにも、わからないことがあるのよね」
「わからないこと?」
 きょとんと目をまるくしたソニアに、ルリナはきらきらと光る美しいアクアマリンの瞳を細めて問うた。
「あなた、いつからダンデに『惚れた』わけ?」
「へっ?」
 ぎょっとしたように声を上げるソニアに、ルリナはターコイズブルーのネイルが繊細に施された細い指先をピンと向ける。
「ずっと好きだったのはなんとなくわかるわよ。すごく仲のいい幼馴染だったものね。でも……いつ、あなたの中で、ダンデが『男として』意識されたのかしら?」
「うぇっ!」
 まさかの角度で抉られた鋭い問いに、ソニアは再び真っ赤になった。照れ屋な彼女がこんな質問にまともに答えられるはずがない。けれども、憧れの眼差しでソニアを見つめる好奇心いっぱいの少女たちの存在が、彼女の逃げ道を塞いでいた。
 ダンデからいきなり頼まれたミッション。
『ネズの妹のマリィくんが、ソニアとルリナにファッションのアドバイスをして欲しいと言ってる。ついでにユウリくんも誘って、全部オレの持ちでショッピングに連れて行ってくれないか』
 ……なんて、太っ腹なリクエストにふたつ返事でオーケーしたけれど、こんな展開が待っていたとは想像もしなかった。
 ぐぬぬと呻きながらも、ソニアは火照ったほほを極力無視して、学会の質疑応答の時のような冷静さを取り戻すべく咳をした。
「コホン。……えー、その質問につきましては、非常に難しい問題であり、一言で説明するには時間が足りなく……」
「あら、逃げたわよ、このオネーサン。なんでも質問に答えてくれるって話だったのにね?」
「ちょっと、ルリナぁ」
「ふふふ。じゃあ、こっちから聞いてあげるから、それに答えるカタチにしましょう。さあ、お嬢さんたち、どんどん質問してごらんなさいな」
 ルリナの言葉に、ユウリとマリィが顔を見合わせる。一瞬の視線の交錯の後、ユウリがパッと手を上げた。
「じゃあ、わたしからお願いします! ソニアさん、ダンデさんのどこが一番好きですか?」
 率直な問いに、ソニアはたじろぐように瞬きをしてから、腹をくくって答えた。
「……えーと……ポケモン馬鹿な、ところ……?」
 その答えに、思わず少女たちが笑う。ルリナも噴き出したのを見て、ソニアはむくれたように赤いほほを膨らませた。
「なによぉ! だって、そこが一番いいとこじゃん!」
「ふふふ、まぁねえ。逆に言えば、そこしか取り柄がないというか……」
「そ、それは言いすぎですよぉルリナさん……ダンデさん、カッコいいじゃないですか」
 ユウリのフォローに、ルリナは至極真面目な顔で小首を傾げる。
「そうなの? わたしの目にはカッコよさよりも『手がかかるソニアの幼馴染の残念さ』の方が見えちゃうのよねぇ……」
「ブレないねぇ、ルリナは」
 苦笑するソニアに、今度はマリィがハイっと手を上げる。
「次、あたし。ちいさいころからずっと一緒だったら、きょうだいみたいな感じにならなかったとですか?」
「う~ん、そうだよねぇ。でも、わたしたちは10歳のころに離れたから、ずっと一緒って感覚は薄いかも。もちろん、5歳のころからのアレコレは覚えてるし、だからきょうだいぽいって言えなくもないけど……」
「あら、じゃあ、ホップと同列?」
「えっ!?」
 ルリナのツッコミに、ユウリが思わず高い声を上げる。ハッとして彼女が口を押さえ、不安そうにソニアを見つめるのに、ソニアはやわらかくほほ笑んだ。
「あはは、わかりやすい例がいたわね。ホップは完全に弟。ダンデくんは、そうだな……やっぱりホップに比べれば、きょうだいっていう感覚は全然なかったわね」
「じゃあ、ずっと惚れてたとですか?」
 ズバリとしたマリィの問いに、ソニアは澄ました顔で小首を傾げる。
「さあ? そのへんは、ホントにわからないのよね~。気が付いたら好きだったし……」
「男として?」
「そこ、こだわるわねルリナ……」
「あ、もしかして、昼間にできない話になるかしら?」
「ちょっ、ルリナっ」
 ルリナの際どいからかいに、ソニアはさすがに澄まし顔を続けられずに真っ赤になった。
「教育上よろしくない質問は拒否します!」
「え~……残念」
「ユウリぃ?」
「あ、じゃあ、ダンデさんのどんなところにドキドキしますか?」
 その質問に、ソニアは短い眉を寄せる。う~ん、と真剣に小首を傾げた。
「ドキドキする……? 迷子の連絡が来て、そこがマジで全然わからないところだったときとか……?」
「そーゆー意味じゃなくてぇ……」
「わかってる、ちょっと待って……」
 まぜっかえすソニアに、ユウリがくちびるを尖らせる。ソニアは瞳を閉じて思い返した。
 ダンデのドキドキするところ……夜の話は当然できない。そうじゃなくて、日常で、彼のなにに胸を高鳴らせるか……?
「……あ。あれだ」
「どれ?」
「一日の終わりに、手持ちたちのルーティンケアをするんだけどね、ダンデくんの手持ちって大型が多いし、物理特化型ばかりだから結構大変なの。爪を削ったり牙を磨いたり、錆防止や葉水のケアしたり……そういう、細かい作業をちまちまやってるおっきな背中とか見ると、ドキドキするなぁ」
 ふんわりとほほ笑むソニアの答えに、少女たちはぱちくりと目をまるくした。それから、どことなく不思議そうな顔で問う。
「ドキドキ……しますか、そういうの?」
「するねえ。あ、あと、ワンパチの涎にまみれても構わずトレーニングしてるところとか。ダンデくんが腹筋とか腕立てとかすると、なぜか登ってくのよね、あの子」
「……上級者すぎてわからん……」
 マリィがぽつりと呟く。その時になって、ソニアは年下の少女たちからまったく賛同を得られていないことに気づき、わずかに慌てた。
「えっ、だめかな? あ~、やっぱりわたしとダンデくんじゃ、キラキラしたコイバナにならないぃ~」
 項垂れて首を振るソニアに、ルリナがクックッと低く笑い続ける。親友の追い打ちに、ソニアが恨みがましい視線をやった。
「なによぉルリナ。バカにしてるなぁ?」
「してないわよ。お熱いわねぇって思っただけ」
「どこが!?」
 ソニアだけでなく、ユウリとマリィも目をまるくする。いまの言葉のどこに、熱愛を感じさせるものがあったのか、我ながら情けないと思いながらもソニア自身さっぱりわからない。
 けれどルリナはなめらかなシャドウの引かれた切れ長の瞳を色っぽく細めて、至極あっさりと答えた。
「ふたりでいることがすっかり『日常』になっても、そこにドキドキできるなんて、もう、なにからなにまで全部好き、って言ってるようなものじゃない?」
「は……」
 その言葉に、ソニアはなにも言えずに固まる。彼女の白い顔中が、見る見るうちに熟れたイチゴのような色になっていくのを眺めながら、ルリナは満足そうにほほ笑んだ。
「婚約おめでとう、ソニア」
 こころからの祝福は、さわやかなアクアマリンの色をしていた。



《恋する動詞111題》
#10.惚れる【ダンデ×ソニア@Pokémon Shield】
 



【恋する動詞111題☆★#1~20お気に入り投票】
お題も20作達成いたしました!
ダンソニお題でお気に入りのお話などありましたら
是非教えてください🫶💕💕

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