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6.a love story 恋愛小説
2025/10/03 13:39【お題】ダンデ×ソニア
「ソニア、いるか?」
今日も今日とてアポナシで研究所に来たダンデくん。
「ダンデくんいまわたし手が離せないから」
早口で言って、わたしは中二階の書棚の前から離れない。いつもなら、いそいそと階下に降りて、ご丁寧に『今日はなに?』とか聞いてあげるけど、いま、ちょっと怒ってんだよね。
数日前、バトルタワーの休憩ブースで話してるダンデくんとキバナさんの会話を盗み……いや、偶然聞こえてきたことには。
『ソニアはオレにとって、ちょうどいいんだ』
って。
ちょうどいいってなに。都合がいい女ってこと?
あーそうですか、幼馴染を怒らせるとどういうことになるか、たまには身をもって思い知れ、ノンデリオーナー!
今日という今日は、絶対に相手しない。カレーも出さない、紅茶も淹れない、論文も見せない、資料も探さないんだから!
という、恨みたっぷりの視線をちらりと階下に向けると、ダンデくんは案の定、わたしの机に一直線に向かって珍しい資料や本がないか、チェックしてる。ダンデくんの行動なんて、寝てたって推理できるぜ。
そしてそこに仕掛けた、罠よ。
ダンデくんのごつい手の中にあるそれは、いかにも読みかけの、恋愛小説。しおりを挟んだそのページは、幼馴染同士の恋愛が、まさに成就しようという名場面だ。
お互いに、幼馴染の気の置けない距離に胡坐をかいていたふたりが、失いそうになって初めて、そのありがたみに気づく……という、ド定番の流れである。
ダンデくん、それを読んで、少しは思い知ってよ。
幼馴染のソニアちゃんだって、いつきみの傍から離れるか、わからないんだよ?
「ソニア」
「んひゃっ」
いつの間にか物思いにふけっていたらしいわたしの背後で、ダンデくんのテノールが響いた。ちょ、距離よ。この距離は、ポケモンとのそれでしょうが。
「なに、ダンデくん」
「ソニアもああいうの読むんだな」
「読むけど……」
「じゃあ、ちょうどいいな」
またそれ? むっとしたわたしがくちびるを尖らせた先で、ダンデくんはニッと太陽みたいな笑顔を浮かべた。
「幼馴染でも恋愛対象になるなら、ぜひオレの恋人になってくれ、ソニア」
「へ?」
「幼馴染としてのきみも最高だが、恋人になってくれればオレの人生にちょうどいいんだ」
「ちょうどいいって」
「この上なく、ジャストだぜ」
そう言って黄金の瞳が容赦なくこちらを射抜いてくる。わたしはちょうどいいの意味をいま一度辞書で調べよう……と、現実逃避のように思った。
