1000文字で綴るアイラブユー
40.Only you can make me happy or cry 私を幸せにするのも泣かせるのもあなただけなの
同じ研究室の男の子から、デートに誘われた。
彼とは興味のある分野も近く、話もすごく合う。実験や調査を一緒にしていると、その人となりが透けて見えるけれど、彼はいつも冷静で、相手をきちんと気遣いながらも、自分の信念を曲げずに立ち向かえる勇気のあるひとだ。
知的な会話も世間話も気持ちよくできるし、ランチの好みや好きなポケモンも似ていて、本当に、気楽に付き合える友達。
デートも変に気づまりになることもなく、いつもの研究室での距離感を保ちながら、こちらをきちんと女の子として扱ってくれて、とっても楽しかった。
日々の忙しさや、研究にかかるプレッシャー、緊張感、将来への不安なんかも共感できて、無理なく付き合っていけるような、そんな素敵な男の子。
彼とのデートのあと、夜にかかってきた電話に、だからわたしは、一瞬出ようか出まいか迷った。
画面に映し出された名前は、遠い故郷にいる幼馴染。一か月に数回、思い出したような頻度でかかってくる短い電話に、わたしはいつも、こころを乱される。
今日は、このまま無視しちゃおうかな。
常に応答できるわけじゃないし、たまに着信に気づかない時もある。折り返すこともあれば、そのまま次の電話まで放っておく場合も。
そんなふうに、お互いになんの約束もない、気ままな関係。
この電話に出なければ。次回の電話に出なければ。
段々と間遠になって、いつの間にか切れてしまっても不思議じゃない、細い脆い絆の糸は、でも、なぜかきらきらと輝いて、目が離せなくて。
だから結局、わたしはいつも、彼の声を聞いてしまうのだ。
「――はい、ダンデくん」
『よお、ソニア。元気か?』
コール音の長短など、一切歯牙にもかけないいつも通りの声に、わたしは苦々しく笑った。
ダンデくんはいつも、こちらのことになんてお構いなし。かけたいからかける、ただそれだけ。
わたしがどんな気持ちで、きみの声を聞いているかなんて、きっと一生気づかない。
「元気だよ。……って、こないだ話してまだ十日じゃんか」
『十日も経てば、元気じゃないかもしれないだろ』
「まあそりゃねえ」
『でも、元気ならよかった。それでな――』
いつも通りのダンデくんの声が、わたしのこころにしみていって。
優しくて気が合う男の子との、楽しかったデートの記憶が、あっという間に塗りつぶされていく。
――ああなんて、残酷。
残酷で、憎らしいほど愛おしい幼馴染の声を聞きながら、わたしはそっと瞼を閉じた。