1000文字で綴るアイラブユー



 37.I was born to meet and be with you 私はあなたに出会うために生まれたの



「そりゃもちろん、ワンパチだね」
「えぇ~」
 がっくりと肩を落とすユウリ。傍らで、ホップがやっぱりな、と苦笑している。
 ポケモン研究所の休憩時間、ユウリのお持たせでテーブルいっぱいに並んだシフォンケーキをつつきながら、ソニアは軽く肩をすくめた。
「えぇ~って言われてもねぇ。ワンパチとの出会いは、わたしにとってかけがえのないものだもの」
「それはわかりますけど、もっとこう……えっと、いるじゃないですかぁ。ソニアさんが、このひとと出会うために生まれたんだなぁ……って思えるひとが」
 先ほどよりも、だいぶ直接的な催促の言葉に、ソニアはふむ、と紅茶を飲み込んだ。
 恋に恋するお年頃のユウリは、たまさかこんなふうに、姉貴分であるソニアにコイバナをけしかけてくる。自分達よりも、一歩先を進んだダンデとソニアの恋模様は、憧れでもあり、目標でもあるらしい。
 そんな可愛い妹分の、今日のお題は『なにかと出会うために生まれた、と感じることはあるか?』という、なんともロマンティックで少女趣味なものだった。
 ここで『ダンデと出会うために生まれた』と言えれば、ユウリの乙女ゲージも満タンになるし、ソニア自身も可愛げのある女になれるだろう。 
 だがあいにく、最年少ポケモン博士という超絶狭き門を潜り抜けた生粋の理系女子は、ロマンティックのコーティングを秒で引きはがす癖があった。
「う~んそうねえ。わたしがブラッシータウンに来るきっかけは、両親との死別だったから、決して嬉しい運命じゃなかったしねえ」
「えっ」
「意気投合して挑戦したジムチャレンジだって、子供心にも厳しい洗礼はいっぱいあったし。その後の、ポケモン博士を目指す道だって、出会わなかったら目指してなかったかもしれない茨道だったし」
「えぅ」
「だから、ダンデくんに出会うために自分が生まれたとは、なっかなか思えないかもなぁ~」
「うゅ……」
 存外重い話に、ユウリは目に見えてしゅんとなってしまった。ちょっぴりからかいが過ぎたかと、ソニアが慌ててフォローする前に、シフォンケーキを飲み込んだ未来の弟が、可愛い彼女の頭を撫でていわく。
「大丈夫だぞ、ユウリ。ソニアは、生まれた意味なんか関係なく、アニキと一生一緒にいるって決めたんだから」
「お、おう」
 突然の正論に、ソニアは思い切り照れ臭くなって、つい左手の薬指に嵌めたリングを触る。最近の習い性になったそれを見やって、ホップは大人びた笑みを浮かべた。


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