1000文字で綴るアイラブユー
36.Thank you for having discovered me 私を見つけてくれてありがとう
「みぃつけた」
ウールーの飼料置き場。ふかふかの藁山をよじ登った先の、中二階の隅にある、木の箱。
その中に隠れていたソニアは、ふたが外れて差し込んできた眩しい日の光を浴びて、満面の笑みでこちらを見下ろす幼馴染を見上げて、くちびるを噛んだ。
「みつかったぁ」
くすん、と鼻を鳴らす。そうしないと落っこちてきそうな涙が、ギリギリのところでまぶたに溜まっていて。眩し気に瞳を細めたら、それだけでポロリと零れてしまいそうだから、急いでうつむいた。
「じゃあ、つぎはダンデくんのばん――」
そう言って、木箱の中から立ち上がったソニアの顔を、ダンデは無造作に掴みしめた。ふわふわの黄昏色の髪を押さえて、面食らったソニアが顔を上げる正面に、らんらんと輝く黄金の瞳を据えて。
「ソニア、泣いてたのか?」
「!」
容赦のない言葉に、ソニアは我慢していたものがあっという間に溢れて、ぼろぼろと大粒の涙を零していた。
「やだぁ、ダンデくんのばかぁ!」
「ソニア」
悔しくて恥ずかしくて、涙と一緒に無茶苦茶な感情が溢れてしまって、ソニアはわんわんと声をあげて泣いた。どうしてそっとしておいてくれないのか、なぜ馬鹿正直に暴くのか、理不尽な怒りを向けた幼馴染は、ただおろおろとソニアの泣き顔を見つめ、それから不器用に服の裾で涙を拭いた。
「ふぇっ、えっ……ダンデくん……」
「うん、うん、ソニア」
感情のほとばしりが弱まってきて、ソニアはぐずぐずと鼻を鳴らしながらダンデを見やった。ダンデは白桃のようなソニアの頬が、涙でまだらに赤くなっているのを見やって、困ったようにほほ笑む。
「ソニア、ワンパチがさっきから心配してるぜ」
「あ」
見ると、恐らくここにダンデを導いた裏切り者が、あるじの様子にぴすぴすと鼻を鳴らしながらせわしく足踏みしている。ダンデの足にすがりつく、ヒトカゲもこちらを見上げて瞳を潤ませていた。
「あぁ……ご、ごめ」
思わず謝ろうとしたソニアを、ダンデはぎゅっと抱き寄せた。少年の身体はしっとりと汗ばんで熱く、細い腕がぎゅうぎゅうと彼女を締め付ける。
「謝ることないぜ! だけど……ひとりで、泣くなよ」
「……うん」
くすん、と最後におおきく鼻を鳴らして、ソニアはぎゅっとダンデの背中に腕を回した。
ダンデは決して、ソニアがひとりで泣くのを許さない。
それはただ彼女を抱きしめることしかできないほんの幼い頃から、その生涯が閉じる時まで、変わらない彼の我儘だった。