1000文字で綴るアイラブユー
32.If you can dream it, you can do it. 夢なんか見なけりゃかなわないんだ
「ねぇ見て、ダンデよ!」
構内のカフェテリア。同じ研究室の友人と休憩に訪れたそこで、巨大なモニターに映し出されていたのは、遠い故郷のニュースだった。ガラルほどではないが、この地方でもポケモンバトルは盛んで、トレーナーの数も年々増えているらしい。ポケモンリーグも積極的な興行活動として、ガラルのリーグ情報をよく扱うようになっていた。
画面の中では、手に汗握るバトルの状況が流れている。その迫力に、おおっとどよめきが上がった。ソニアの傍らでも、友人が高い声を上げる。
「すごい! ねぇガラルって、ポケモンバトルがこんなに盛んなの?」
「うん、まあ」
当たり障りなく頷いて、ソニアはシェイクのストローをすすった。今回の研究でたまたま一緒になった彼女たちとは、あまり突っ込んだ話はしていない。知人と友人の間くらいの立ち位置なので、グループが別れれば、自然と疎遠になるだろう。
それまでは、当たり障りなく接するだけ、と、ソニアは一気に糖分を摂取する。
「いいなあ、ガラルは。チャンピオンダンデの情報たくさん拾えて~」
「あら、あなたダンデのファンなの?」
「うん!」
楽しげな友人たちの声に、ソニアは喉奥のシェイクを無理やり飲み下した。これ以上余計なことを聞いたり聞かれたりする前に、差し迫った研究発表の資料制作に戻ろうと、席を立ちかけた時。
「ねぇ、ソニア。ダンデって、ステディいるの?」
いきなり問われて、ソニアはぎくりと固まった。それから、いまはあくまでも『ダンデの幼馴染』ではなく『ガラルのいち国民』として聞かれているのだと、思い直して息をつく。
「知らない。聞いたことはないけど」
「へぇ、ノースキャンダル? ガラルって意外と保守的ね」
「じゃあ、いまからガラルに留学して、バトルで勝ち上がってダンデに挑戦すれば、ワンチャン彼をゲットできるかもね?」
友人らはくすくすと笑う。本気とは思えない夢物語だが、いつだって可能性はある。
ダンデに挑戦して、彼に勝って、彼をゲットする。
そこに至る、何重もの苦難を乗り越えさえすれば、夢は叶うだろう。
「……わたし、先行くね」
「はーい」
軽く答えてソニアを見送る少女たちの、罪のない夢物語に、ソニアはため息をついた。
――わたしの夢も、見なけりゃ叶わない。
けれどその夢の、なんと遠く、なんと眩しいことか。
最後に一度だけ、画面の中で不敵に笑う幼馴染の顔を振り返ってから、ソニアは足早にカフェテリアを後にした。