1000文字で綴るアイラブユー
――ん、すっごく欲しい。昔から……欲しくて欲しくて、好きで……
――えぇ? ゲットしてくれる? んんー、嬉しいけど、いい
――自分で手に入れなきゃ、意味ないから
――どんな? んー、そうだなぁ……きれいで、強くて、優しい
――色? えっと、紫と……金色
――あはは、ねぇ。おんなじ。ぐうぜん、ぐうぜん
――うん、すごく好き……諦めるなんて、できないなぁ
――……でも、諦めなきゃかなぁ
――うん、しょうがないもん。だって、わたしじゃ無理だもん
――手が届かない……ずっと、ずっと、ずっと……
――もう……どうしよう
――どうしたら、諦められるのかなぁ……
くてん、と酔いつぶれたソニアの頭が、もうちょっとでテーブルにぶつかるというとき。
すかさず差し入れられた褐色の手のひらが、危なげなくそのちいさな額をすくい上げた。
そのまま、ゆっくりと上体を起こし、ぐらぐら揺れる頭をそっと肩にもたれさせると、そのあたたかさになつくように、ソニアはムニュムニュとくちびるをゆがめながらちょうどいい具合を探して、すりすりとほほを寄せる。リラックスした筋肉のやわらかさに満足すると、うっとりと寝息を深くした。
「……寝かしつけ上手ね」
「慣れてる」
ソニアを刺激しないように、ダンデは常よりも静かに囁く。いったん寝落ちしてしまった酔っぱらいは、あと数十分はこのままだと知っているけれど、なんだか今日は、いつもよりも甘やかしてやりたい夜だった。
そんなダンデを呆れたように見やりながら、ルリナは神秘的な切れ長の瞳をすいと細める。
「とうとう、諦めるって言ったわよ」
昔から、潰れるほどに酔っ払ったソニアが繰り出す定番のうわごと。どうしても欲しいポケモンがいる。かれを手に入れるために、ずっと努力をしてきた。子供の頃から憧れ、諦められないソニアの夢。
年々、彼女のうわごとは悲壮感を増し、その唯一の聞き手だったルリナは、ひどいおせっかいだと承知していながらも、不器用すぎる親友の執着を、いっそ流し去る覚悟で聴衆を増やした。
ソニアの愛しいポケモンは、ぐでんぐでんになったソニアが吐き出すうわごとを、一言一句真剣な表情で聞き取ると、ひどく寂しげな表情で苦笑した。
「それは困るな。ソニアは諦められても、ポケモンはすっかりその気だ」
「自分からボールに入れば?」
「それもいいが、ずいぶん前から用意しているボールに彼女を入れる方が早い」
さらりと言って、紫と金の男は幸せそうに笑った。