1000文字で綴るアイラブユー
就寝前の寛ぎの時間、ダンデはウイスキーグラスを揺らしながら、大画面の薄型モニターに見入っていた。
『――ではここで、本日のゲスト、ガラルポケモン研究所所長のソニア博士をご紹介いたします』
落ち着いたスタジオのやわらかな照明を受けたソニアは、わずかに緊張したような面持ちで、柔和な笑顔を浮かべた。
『初めまして、ソニア博士。本日はよろしくお願いいたします』
『よろしくお願いいたします』
『ソニア博士は、昨年出版された【ガラルの歴史】が十度目の重版となり、二年連続の年間ベストセラー作品となりました。その後も精力的に活動を続けられ、このほど伝説のポケモンにまつわる新たな歴史書をお書きになられたんですよね』
『ええ』
番組の趣旨は、ソニアの著した新たな本の紹介と、その中で明らかになった伝説のポケモンについて。ポケモンと人との歴史、調和、未来志向を謳う、国営放送ならではの丁寧でアカデミックな雰囲気が好印象だった。
あまりメディア慣れしていないソニアにとって、重鎮といえる歴史ある番組に出演することはいい経験になり、今後の活動の足掛かりにもなる。出演オファーを受けた時は、色々と迷ったようだったが、画面の向こうで自信たっぷりに話す彼女は、どこからどう見ても立派なポケモン博士だった。
「――やぁっぱ見てるぅ……」
その時、背後から憮然とした声が降ってきた。ダンデが仰ぎ見るように首をそらせると、こちらを見下ろすソニアは、化粧の落ちた幼い顔でむっと眉を寄せていた。
「寝てたんじゃないのか」
「水飲みたくて起きたの。なんだよぉ、隠れてこそこそと……やらしー」
「やらしーって……」
思わず絶句するダンデの傍らにやってきて、ソニアは照れ臭そうに画面を見やった。
「本番って頭真っ白になるよね……あ、噛んだ」
「気にならないぜ。初回にしては完璧だ」
無造作に回した腕で、ソニアの薄い肩を抱き寄せる。ダンデに寄り添いながら、ソニアはもこもこのパジャマに顎をうずめた。
「うー恥ずかしい……わたしのいない時に見てよぉ」
「早く見たかったんだ。ソニアの雄姿」
「そんで夜中にこそこそと、にやにやしながら見てたの?」
にやにや、と言われて、思わずつるりと頬を撫でる。
「にやにやしてたか?」
「後ろ姿からもうね」
「そうか……」
そのままソニアにそっとくちびるを寄せて、ダンデは軽いキスを贈る。
画面の中では、ダンデの喜びが誇らしげに顔を上げ、眩しいほどに輝いていた。