1000文字で綴るアイラブユー

 ※No.21【Our love will last forever 永遠の愛】の、ソニアサイドです



 この国の英雄になった、幼馴染。
 幼い頃、昼も夜もなく一緒に過ごし、遊び、学び、まるでひとつの生き物のように溶け合って育った、唯一無二の少年は、いま、ガラル中の羨望と憧憬を集め、綺羅星のように輝いている。
 思えば、五歳のころから十歳まで、彼と親密だったのはたったの五年。その後、生きる世界が大きく変わり、様々な事情で会えなくなって、以来八年。
 ともに育った時間よりも、長い時が過ぎてしまった。
 その間、彼は常にガラルの最先端を行き、年を追うごとに唯一無二の存在として輝きを増していった。対する自分は、何者でもなかった事実に打ちのめされながらも、何者かであろうとする己の矜持に従って、我武者羅に進んだ。
 その歩みの差は歴然で、決して追いつけないほどの距離が開いてなお、ソニアのこころの中には、幼い頃のダンデとの思い出、彼への無条件の信頼、決して消えない痛みにも似た思慕が溢れていて、彼女は長い長い時間をかけて、そのこころにふたをして、鍵を閉めた。
 美しい思い出は、彼女の歩みを鈍らせる。
 慕わしい気持ちは、目指すべき場所を迷わせる。
 だから、まっすぐ前を向くために――いつかきっと、この足で再び彼の隣に立てる、そんな自分になるために、ソニアは思い出との決別を選んだ。
 そして、いま。
 やるべきことを終え、再び故郷で努力を重ねる日々を送る彼女の前に、扉があった。
 十歳のころに別れ、それから遠く隔たった時間の末に、訪れた再会。その瞬間を前に、ソニアは高鳴る鼓動を抑えようと、深呼吸する。
 研究所の扉は、高い位置に曇り硝子がはめ込まれている。そこから覗く薄明の色は、先ほどおおきな火竜の羽音が告げた来訪者を示していた。
 いつまでたっても開かない扉を前に、ソニアは決然と前を向く。
 会えばきっと、長い間閉じ込めていた気持ちが溢れてしまうだろう。
 まだ、何者でもない自分が抱えるには、おおきくて厄介で、もしかしたら目指す道の妨げになってしまうかもしれない。
 ずっと必死に目をそらしていた想いは、惨めで情けない自分を浮き彫りにするだけかもしれない。
 それでも。
 扉一枚隔てた先にいる、綺羅星のような彼に会う、ただそう思うだけで湧き上がるこの気持ちは、どうしようもないほどに正直な、ソニアの気持ち。
 たとえこの再会が、未来をどんなふうに変えてしまっても。
「……なーにやってんの、ダンデくん」
 見上げた先にある黄金の瞳に焦がれる、この瞬間はソニアだけの永遠。


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