1000文字で綴るアイラブユー
リーグから与えられた新居は、だだっ広く閑散としている。
手持ちのポケモンが大型が多いため、家具も厳選されて極力少ない。実家で暮らしていたころの、声を上げれば誰かしらに届く親密な空間とは比べ物にならなかった。
十三歳のダンデは、毎日この広い部屋に帰ってきては、寂しさに耐えている。
リザードンをはじめとする、大切な相棒たちが傍にいてくれて、それでようやく保っているようなものだ。ポケモンが傍にいれば、たいていのことは我慢できる、無視できる。
けれども、寂しさだけは。
彼女が傍にいない、恋しさだけは、誰がいても癒すことはできない。
十歳のころに傍を離れ、以来三年。チャンピオンとしての日々は幼いダンデの手に負えないほどに目まぐるしい。母親をはじめとする家族が恋しいのは、まだ耐えられる。幼いながらに一家の長のような覚悟を、十歳のころからダンデは持っていた。
けれど、ソニアがいないのは。
幼馴染で、親友で、ライバルで、なににも代えがたい存在としての彼女が、いないのは。
まるで次元が違う。ソニアが傍にいないことは、ダンデを成長させる試練ではなく、疲弊して擦り切れさせる苦行だ。
自分がこれほどに弱く、女々しい性格をしていることを、ダンデは知らなかった。日々、ポケモンバトルに明け暮れ、そのことだけを考えていられる時間はまだいい。いけないのは、こんな夜。
ひとり寂しく都会の部屋にたたずみ、幼馴染と過ごしたかけがえのない日々を思い起こす、夜だ。
ぼんやりとした眼差しで、ダンデはテレビに目を向けた。いま、なんの番組を放送しているだろう。ドラマもニュースもバラエティも、ダンデの孤独を埋めてくれるはずがない。
ポケモンたちを呼ぼうか。ボールに納め、やすんでいる彼らを起こしてまで、この空虚を埋めることはためらわれた。リザードンならば。いや、相棒は今日もいいバトルをしてくれた。トレーナーとして、かれの安息を妨げることはできない。
それに、ソニアのいない寂しさは、ソニアでしか埋められない。
ダンデはそっと、懐に忍ばせたスマホロトムに手を伸ばした。つるりとした表面に指が触れ、ピクリとかれが気付いた気配がする。
けれど、ダンデはロトムを呼べない。
ソニアはいま、自分の夢に向かって頑張っているのだから。自分と同じく、ただひたすらに前を向いて、努力している彼女の邪魔はできない。
ソニアに会いたいと思う気持ちを封じて、ダンデは深くため息をついた。