あなたとわたしのいとおしい5つのねつ
今日のけんかは、若が悪い。すっごくすっごく心配したんだからね、ボク。
珍しく、若もそれを自覚して(さんざんシグや爺にも絞られたからね!)きっぱりはっきり謝ってきた。
んー。ホントに反省してそうだし、しおしおになっちゃってちょっぴりかわいそうだし……
そろそろ、許してあげよっかな?
て、内心では思いつつも、やっぱりもうちょっと思い知らせといたほうがいいかなあ。普段のいろんなあれこれの、カタキうちってわけじゃないけども。
そんなふうに、意地悪なこころがぴょこりと生まれちゃったものだから。
あ、そーだ。だったら、いつものお返しだ!
って、にまっと笑って、若の服の端をちょいちょい、とつまんで引いた。
「ん」
しおしおになった若は、耳の垂れた大型犬を思わせる感じでこちらを見下ろす。ぺそっとした表情がなんともいえずかわいそうだったけども、ここはあえて、こころを鬼にするんだ。
「反省したの?」
「した」
「じゃあ、態度で示そうね」
「……」
ぶすくれたいのをこらえるように、若はむにゅむにゅとくちびるを曲げている。けどもそのまま、ボクが促すのに逆らわず、カウチに腰を下ろした。長身の若が座って、ボクがそれを見下ろす形になると、なんだかとっても楽しくなってくる。若は、そんなボクを恐ろしげに見上げたまま、賢明にもくちをつぐんでいた。
「はい、じゃ、次同じことあったら、どうしますか?」
「……まず、シグに報告」
よくできましたの、キス。ほっぺ。
「シグが反対したら?」
「……理に適ってたら、諦める。勝ちの目があるなら、根拠を示す」
ちゅっ。おでこ。
「やってみて、やっぱり駄目だなってなったら?」
「……イチかバチかはしないで、即時撤退、リカバリ重視」
完璧!
さて、どこにキスしよっかな? って、うきうきと若の眼を見たら。
「……っ」
さっきまでの、しおたれたワンコみたいな若はもうどこにもいなくて、いつのまにかギラギラと、燃えるような碧玉の隻眼がばっちりとボクを見据えていて。
あ、まずいっ、て思った時にはもう、鞭のようにしなる力強い若の腕は、ボクのカラダに巻き付いていて。
ちょっと待ってよ、て言おうとしたくちびるが、伸び上がるように迫った若のそれに容赦なくふさがれた。
「んーっ、ん!」
ずるい! ずるい!!
まだ、二回しか焦らしてないのに! 若なんて、いっつも三十分は時間かけるくせに!
反省、全然足りない! また同じことするぞ、これは!
思いながら、ぽかぽかと若の背中をぶつけど、まるで装甲板を叩いてるみたいに全然手ごたえはないし、こぶしは痛くなるし、くちびるは離れないどころかますますぎゅうぎゅうきつく抱きしめられるしで。
――結局、負けた。
以来、極力若とはけんかしないように注意してる。自分の行いも正すし、若の無茶・やんちゃもできるだけ未然に防ぐ……のは、難しいから、シグと爺との連携を、これまで以上に強化。
がんじがらめの監視体制に、若は窮屈だってぶつぶつ言うけど、もう、甘い顔はぜーーーったいにしないぞ!
て、こころに誓ってる。