わたし。〜1〜
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「またって云っても、何時もの事じゃないですか」
へらりと力無い笑いが口から零れる。私が包帯でぐるぐる巻きになっている事。大抵私が怪我を負って来ることも。
当たり前だった。
一体今更何を云って居るのだろう。
―――私の異能、『無痛』。
其の名の通り、痛みを感じないというものだ。役に立つのか立たないのかさっぱりわからない、謂わば我楽多に近い能力。其の所為か、私は怪我に気づかないことが多々ある。何時の間にか、血が出ていた、という事が頻繁にあって。
其れは今に始まった事じゃない。入社当初からこうだった。太宰さんだってとうに知って居るはずだ。其れなのに、太宰さんは、否、彼だけじゃ無い。
「何時ものこと?嗚呼そう君の其の状態が?私には悪化しているようにしか見え無いけれど」
「…そう云ったって、仕方がないですよ。私は平気です」
「平気、ねぇ」
太宰さんは盛大に溜息をついて、私にずかずかと歩み寄る。うすらと細めた鷲色の目が私を覗き込んだ。其の目は私を呆れたように一瞥して、微かに眉間に皺を寄せた。私は特にいう言葉も無い儘、唯自分の真っ白な手を見詰めた。蛇に睨め付けられた蛙の様な空恐ろしい気分で、思わず下唇を軽く噛んだ。