わたし。〜1〜
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「ユキ。聴いてるかい?」
「…、あっごめんなさい、何の話でしたっけ」
「まッたく、ぼうっとして。もッと警戒心を持てって云ってるだろ」
「ごめん、なさい与謝野せんせ…」
呆れたような顔付きで、与謝野先生は手際良く私の腕に包帯を巻いていく。床には古い包帯が幾重にも重なり、其らは薄らと黄ばんでいたり、黒ずんでいたりして、あまり綺麗とは言い難いものであった。丁度とり替え時だった。
まあ、何時ものことだかんね、と笑う先生。私は何だか申し訳なくて、ただはにかむことしかできなかった。
きっと、先生を知る人物なら誰だって疑問を抱く筈だ。如何して『あの』与謝野晶子が、何故異能を使った治療をしないのかと。其の理由は些か単純である。
―――此れは探偵社からの、
私に対する戒めだからだ。
「全く、気を付けなね?アンタの“無痛”の異能はある意味厄介なんだから」
「…はい」
「ユキ、アンタは何時も返事だけが立派なンだ」
そう云って先生は私の頭を撫でた。私は顔を上げず、ただ自分の固く握られた拳を見て、新しくて、真っ白な包帯を眺めた。
緊張感と優しさの、アルコール消毒の匂いがした