わたし。〜3〜
夢小説設定
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「こんにちは~」
「只今戻りました」
白昼の探偵社。扉を開けると、空調設備から流れる冷やっとした空気が頬を掠める。顎を伝っていた生温い汗が、途端温度が下がり、体が冷え始め、こみ上げたくしゃみをひとつ、噛み潰した。
「ユキ」
「与謝野せんせ、こんにちは」
「怪我、してないだろうねェ?」
「はは、真逆。今日は授業に体育があったわけじゃないですし、怪我する要素無いですよ」
「_________どうだか」
と、別の方向から声が聞こえた。
其の方向には、長椅子の背もたれから飛び出た太宰さんの鷲色の蓬髪が目に入った。顔をこちらに向けないまま―――
嫌味っぽく言ったのは分かった。
「太宰さん、」
「なんてね。冗談さ」
此方に顔を向けて、太宰さんはへらりと笑った。さっきまでの声色からは考えられないような、悪戯っぽい笑顔だった。
「冗談って、もう、」
「ユキの『大丈夫』は大抵の場合大丈夫じゃないからねェ」
与謝野先生は肩を竦めて呆れた顔で言う。
「与謝野せんせ、」
「違いない。ばればれなのにね」
「乱歩さん…!」
探偵社の中でどっと笑いが起こる。腹の底からかあっとこみ上げる何かが頭の天辺まで到達し、顔が火照る。絶対今、私顔真っ赤だ。嗚呼もう、さっきまでの冷えは何処へ。私は足早に自分の席へと急いだ。