夢小説
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今日はボスの日だと同僚から聞いた。カントー地方では馴染みがないけれど、上司に感謝をしたり贈り物をしたりする日らしい。
同僚は部下の成果が一番の贈り物だと張り切って仕事に出た行ったけれど、私にそんな気は起きなかった。
ロケット団の仕事なんて全く良いものじゃない。民間人を脅して、ポケモンを利用して、傷つけて……けれど、純粋にサカキさんに好意を向けて成果を出そうと努力する同僚が、私の目には羨ましく映った。
サカキさんの事を好きな気持ちは私も同じなのだ。それが敬愛なのか、性愛なのかは自分でもわかっていないけれど。
それを今すぐ確かめたいわけじゃない。でも日頃の感謝くらいなら伝えられるかなと思い立った私は、腰のボールからピジョットを繰り出して、サカキさんのいる仕事場に向かった。
*
お月見山の頂上に着いた私は地面に降り立ちピジョットをボールに戻すと、辺りを見渡した。すると巨大な岩や鉄骨を運ぶゴーリキーが十数体歩き回っている中にサカキさんを見つける。部下に指示を出しているようだ。右手にはクリップで束ねられた書類、左手はいつも通りスーツのポケットに突っ込んでいるけれど、その姿は凛々しかった。
思わず見惚れていると、サカキさんに気づかれ歩み寄られる。
「ウエサキ?何の用だ」
「あの……」
そうだ。日頃の感謝を一言伝える為にここまで来たんだと思い出し、軽い地響きが鳴り響く地面を足裏で感じながら、私は口を開いた。
「サカキさん、いつもありがとうございます」
素直にそう感謝を伝えると、怪訝そうな顔をされる。当たり前だ。今は仕事中だし、こんな風に改まって感謝を伝えたのは初めてだ。
「どうしたんだ、急に」
「たまには伝えておこうかなって……」
サカキさんはほう、と一言呟くと、ニヤリと笑う。
「君もたまには部下らしくボス、サカキ様、と呼んだらどうだ」
その返事に私は目を丸くする。
考えた事はある。みんなみたいにボス!サカキ様!と彼を慕う事が出来たら満たされるだろうかと。けれどサカキさんにみんなと同じ目で見られて、みんなと同じ扱いをされるのは、なんだか少し嫌だった。
「……嫌です」
「上司の命令に逆らうのか?」
口角を上げ、けれど目を細めて威圧してくるサカキさん。
その視線に胸がドクリと鳴り、いくら意地を張っても私もみんなと同じなんだなと、自分自身に落胆する。
「……サカキ、様……」
せめてもの反抗でキッと睨みつけるがサカキさんの口角は上がったままで、まるで子犬でも見ているかのような目をしていた。
「フッ。良い響きだな」
「色んな人に呼ばれてもう聞き飽きてるでしょう」
「君の声だから価値があるんだ」
「またそんな適当なこと言って……」
この人の戯言にはうんざりだと言わんばかりに溜め息をつくと、サカキさんはおもむろに背筋を崩してこちらに顔を近づけた。
「私が本気だと言ったら……ウエサキ、君はどうするんだ?」
鼻先同士が当たってしまいそうな距離。
固まっているとサカキさんの温かい吐息を感じ、思わず後ろに一歩下がる。
その瞬間、ドン、と人に当たる感触がして、体に軽い衝撃が走った。
「おいウエサキ!抜け駆けすんなよ!」
耳元で叫ばれた私は驚いて振り返る。
そこには今日が何の日か教えてくれた同僚が不服そうな顔で立っていた。
「抜け駆け?一体何の話だ」
「今日はボスの日だからサカキ様に日頃の感謝を伝えようって話をしてたんすよ」
いつかはバレてしまうと思っていたけれど、思わぬタイミング、しかも本人の目の前でその魂胆をバラされてしまった私は恥ずかしくなって俯いた。
すると後ろから小さな笑い声が聞こえて来たけれど、顔を上げる事が出来ない私は振り向く事すらしないまま、意識だけを後ろにやった。
「君も可愛いところがあるんだな、[#dc=1#]」
耳元で聞こえる色気が乗った低い声。
いつもの戯言。ただの言葉遊び。しかしその淡々とした自分の心情とは裏腹に、どんどん顔が熱くなっていく。
敬愛だったらよかったのに。
私は心の中でそう呟くと、サカキさんの顔を見ないまま駆け出した。
どうしようもなく熱くなったこの顔を見られないように。
同僚は部下の成果が一番の贈り物だと張り切って仕事に出た行ったけれど、私にそんな気は起きなかった。
ロケット団の仕事なんて全く良いものじゃない。民間人を脅して、ポケモンを利用して、傷つけて……けれど、純粋にサカキさんに好意を向けて成果を出そうと努力する同僚が、私の目には羨ましく映った。
サカキさんの事を好きな気持ちは私も同じなのだ。それが敬愛なのか、性愛なのかは自分でもわかっていないけれど。
それを今すぐ確かめたいわけじゃない。でも日頃の感謝くらいなら伝えられるかなと思い立った私は、腰のボールからピジョットを繰り出して、サカキさんのいる仕事場に向かった。
*
お月見山の頂上に着いた私は地面に降り立ちピジョットをボールに戻すと、辺りを見渡した。すると巨大な岩や鉄骨を運ぶゴーリキーが十数体歩き回っている中にサカキさんを見つける。部下に指示を出しているようだ。右手にはクリップで束ねられた書類、左手はいつも通りスーツのポケットに突っ込んでいるけれど、その姿は凛々しかった。
思わず見惚れていると、サカキさんに気づかれ歩み寄られる。
「ウエサキ?何の用だ」
「あの……」
そうだ。日頃の感謝を一言伝える為にここまで来たんだと思い出し、軽い地響きが鳴り響く地面を足裏で感じながら、私は口を開いた。
「サカキさん、いつもありがとうございます」
素直にそう感謝を伝えると、怪訝そうな顔をされる。当たり前だ。今は仕事中だし、こんな風に改まって感謝を伝えたのは初めてだ。
「どうしたんだ、急に」
「たまには伝えておこうかなって……」
サカキさんはほう、と一言呟くと、ニヤリと笑う。
「君もたまには部下らしくボス、サカキ様、と呼んだらどうだ」
その返事に私は目を丸くする。
考えた事はある。みんなみたいにボス!サカキ様!と彼を慕う事が出来たら満たされるだろうかと。けれどサカキさんにみんなと同じ目で見られて、みんなと同じ扱いをされるのは、なんだか少し嫌だった。
「……嫌です」
「上司の命令に逆らうのか?」
口角を上げ、けれど目を細めて威圧してくるサカキさん。
その視線に胸がドクリと鳴り、いくら意地を張っても私もみんなと同じなんだなと、自分自身に落胆する。
「……サカキ、様……」
せめてもの反抗でキッと睨みつけるがサカキさんの口角は上がったままで、まるで子犬でも見ているかのような目をしていた。
「フッ。良い響きだな」
「色んな人に呼ばれてもう聞き飽きてるでしょう」
「君の声だから価値があるんだ」
「またそんな適当なこと言って……」
この人の戯言にはうんざりだと言わんばかりに溜め息をつくと、サカキさんはおもむろに背筋を崩してこちらに顔を近づけた。
「私が本気だと言ったら……ウエサキ、君はどうするんだ?」
鼻先同士が当たってしまいそうな距離。
固まっているとサカキさんの温かい吐息を感じ、思わず後ろに一歩下がる。
その瞬間、ドン、と人に当たる感触がして、体に軽い衝撃が走った。
「おいウエサキ!抜け駆けすんなよ!」
耳元で叫ばれた私は驚いて振り返る。
そこには今日が何の日か教えてくれた同僚が不服そうな顔で立っていた。
「抜け駆け?一体何の話だ」
「今日はボスの日だからサカキ様に日頃の感謝を伝えようって話をしてたんすよ」
いつかはバレてしまうと思っていたけれど、思わぬタイミング、しかも本人の目の前でその魂胆をバラされてしまった私は恥ずかしくなって俯いた。
すると後ろから小さな笑い声が聞こえて来たけれど、顔を上げる事が出来ない私は振り向く事すらしないまま、意識だけを後ろにやった。
「君も可愛いところがあるんだな、[#dc=1#]」
耳元で聞こえる色気が乗った低い声。
いつもの戯言。ただの言葉遊び。しかしその淡々とした自分の心情とは裏腹に、どんどん顔が熱くなっていく。
敬愛だったらよかったのに。
私は心の中でそう呟くと、サカキさんの顔を見ないまま駆け出した。
どうしようもなく熱くなったこの顔を見られないように。