夢小説
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「ドーブル、今日は何を描こうか」
「ドブルゥ」
今日はドーブルとスケッチをする為にウバメのもりに来ている。木々が生い茂っていて薄暗いけれど、この辺りに危険なポケモンは生息していない。
私はドーブルを引き連れてずんずんと奥へ奥へと進んでいった。
「……あれ?」
スケッチ風景を探してしばらく歩いていると、赤髪の男の子が道の真ん中に立ち尽くしていた。男の子の足元にはぐったりとしたチコリータ。
「その子、大丈夫?」
「…………」
「ねぇ、元気なさそうだよ」
「……馴れ馴れしく話しかけるな。お前には関係ないだろ」
男の子はぶっきらぼうな上に一向にこちらを見てくれないけれど、どんどん顔色が悪くなっていくチコリータが心配だ。
「これ、余ってるからあげようか?」
私はポーチから取り出したキズぐすりとどくけしを手渡した。すると男の子は初めてこちらに視線を向けたかと思えば、私の手のひらから道具を乱暴に掴み取り、鋭い目で睨みつけてきた。
「フン……礼は言わないからな」
「うん。その子が元気になればそれでいいよ」
「……どっかのアホと似たようなツラしやがって」
「どっかのあほ?」
「ああ……クソ、思い出したら腹が立ってきたぜ。あのヒノアラシ、次は絶対に倒してやる」
ヒノアラシ……もしかしてゴールドの知り合い?でも同じポケモンを持ってる人なんてたくさんいるだろうし……あれ、でもヒノアラシって珍しいポケモンなんだっけ……?うーん……
私が首を捻らせうんうん唸っている横で、男の子は長い赤髪を揺らしながらテキパキとチコリータの手当を始める。
「丁寧に手当してあげるんだね」
「フン……道具と同じだ。今後使えなきゃすぐに捨ててやるさ」
「ふぅん……」
「……怒らないのか?」
「へ?どうして?」
「弱いヤツは大抵、ポケモンは道具じゃないだの大切に扱えだの、抜かしやがるんだ」
「あー、うーん……人にもポケモンにも、相手を選ぶ権利は平等にあると思うんだよね。相性もあると思うしさ」
「…………」
「それに、私は道具も大切にしたいんだ」
「道具を大切にする……?」
「うん。私モンスターボールはいつもピカピカに磨いてるし、思い入れのあるキズぐすりのボトルは綺麗に洗って飾ってあるんだ。だから道具みたいに扱うな!って言葉を聞くと、えっ!?って一瞬ビックリしちゃうんだよね」
「……変なヤツ」
「あはは、よく言われる」
私は大切なガラクタで彩られた自室を思い浮かべ、頬を掻く。私はあの部屋を気に入っているけれど、引かれたり笑われたりすることが多いのだ。
ポケモンだって、捕まえた後にまた野生に逃がしたり、他の人に譲ったりしたことが何度もある。人間にもポケモンにもそれぞれ生き方や相性があると思うのに、それを許さない人がこの世界にはたくさんいる。私にはそれがよく、わからない。
「……フン」
男の子は私に興味なさそうな様子でまた無言で視線を逸らしてしまったけれど、私にはそれが居心地良かった。
*
「うーーん、いい」
指でカメラワークを作り出し、男の子がチコリータを手当している姿を映し出す。
「いいよね、ドーブル」
ドーブルの方を向いてそう聞くと、大きく頷きながらしっぽを震わせ、絵の具のような液体を地面に飛ばす。お絵描きの準備万端のようだ。
「ねぇ、あなたとあなたのチコリータを描かせてくれない?」
「…………」
ダメ元でそう頼んでみるも、返事はなし。わかっていたけれど、やっぱり残念。
「ダメかぁ……」
「……ほんと鬱陶しいな、お前」
「ご、ごめんね……」
「チッ……オレの気が変わる前に、早く描けよ」
「えっ!?」
予想外の返答に、私とドーブルは顔を見合せた。
「い、急いで描くね!!」
「……フン」
今日、スケッチ場所にウバメのもりを選んだのは大正解だった。
私はこの出会いがなんだか特別なものに思えて仕方がなくて、ニヤけ顔で鉛筆を手に取った。
「ドブルゥ」
今日はドーブルとスケッチをする為にウバメのもりに来ている。木々が生い茂っていて薄暗いけれど、この辺りに危険なポケモンは生息していない。
私はドーブルを引き連れてずんずんと奥へ奥へと進んでいった。
「……あれ?」
スケッチ風景を探してしばらく歩いていると、赤髪の男の子が道の真ん中に立ち尽くしていた。男の子の足元にはぐったりとしたチコリータ。
「その子、大丈夫?」
「…………」
「ねぇ、元気なさそうだよ」
「……馴れ馴れしく話しかけるな。お前には関係ないだろ」
男の子はぶっきらぼうな上に一向にこちらを見てくれないけれど、どんどん顔色が悪くなっていくチコリータが心配だ。
「これ、余ってるからあげようか?」
私はポーチから取り出したキズぐすりとどくけしを手渡した。すると男の子は初めてこちらに視線を向けたかと思えば、私の手のひらから道具を乱暴に掴み取り、鋭い目で睨みつけてきた。
「フン……礼は言わないからな」
「うん。その子が元気になればそれでいいよ」
「……どっかのアホと似たようなツラしやがって」
「どっかのあほ?」
「ああ……クソ、思い出したら腹が立ってきたぜ。あのヒノアラシ、次は絶対に倒してやる」
ヒノアラシ……もしかしてゴールドの知り合い?でも同じポケモンを持ってる人なんてたくさんいるだろうし……あれ、でもヒノアラシって珍しいポケモンなんだっけ……?うーん……
私が首を捻らせうんうん唸っている横で、男の子は長い赤髪を揺らしながらテキパキとチコリータの手当を始める。
「丁寧に手当してあげるんだね」
「フン……道具と同じだ。今後使えなきゃすぐに捨ててやるさ」
「ふぅん……」
「……怒らないのか?」
「へ?どうして?」
「弱いヤツは大抵、ポケモンは道具じゃないだの大切に扱えだの、抜かしやがるんだ」
「あー、うーん……人にもポケモンにも、相手を選ぶ権利は平等にあると思うんだよね。相性もあると思うしさ」
「…………」
「それに、私は道具も大切にしたいんだ」
「道具を大切にする……?」
「うん。私モンスターボールはいつもピカピカに磨いてるし、思い入れのあるキズぐすりのボトルは綺麗に洗って飾ってあるんだ。だから道具みたいに扱うな!って言葉を聞くと、えっ!?って一瞬ビックリしちゃうんだよね」
「……変なヤツ」
「あはは、よく言われる」
私は大切なガラクタで彩られた自室を思い浮かべ、頬を掻く。私はあの部屋を気に入っているけれど、引かれたり笑われたりすることが多いのだ。
ポケモンだって、捕まえた後にまた野生に逃がしたり、他の人に譲ったりしたことが何度もある。人間にもポケモンにもそれぞれ生き方や相性があると思うのに、それを許さない人がこの世界にはたくさんいる。私にはそれがよく、わからない。
「……フン」
男の子は私に興味なさそうな様子でまた無言で視線を逸らしてしまったけれど、私にはそれが居心地良かった。
*
「うーーん、いい」
指でカメラワークを作り出し、男の子がチコリータを手当している姿を映し出す。
「いいよね、ドーブル」
ドーブルの方を向いてそう聞くと、大きく頷きながらしっぽを震わせ、絵の具のような液体を地面に飛ばす。お絵描きの準備万端のようだ。
「ねぇ、あなたとあなたのチコリータを描かせてくれない?」
「…………」
ダメ元でそう頼んでみるも、返事はなし。わかっていたけれど、やっぱり残念。
「ダメかぁ……」
「……ほんと鬱陶しいな、お前」
「ご、ごめんね……」
「チッ……オレの気が変わる前に、早く描けよ」
「えっ!?」
予想外の返答に、私とドーブルは顔を見合せた。
「い、急いで描くね!!」
「……フン」
今日、スケッチ場所にウバメのもりを選んだのは大正解だった。
私はこの出会いがなんだか特別なものに思えて仕方がなくて、ニヤけ顔で鉛筆を手に取った。