wild police story
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「えっ、私?」
「うんうん!勿論千代田さんも来るよね!」
先日のコンビニ強盗の事件以降、他の教場の人達からもよく声をかけてもらえるようになった。
特に突入前に着替えを手伝ってくれた子達とはこの数日間でぎゅっと距離が縮まったように感じるのは、私の思い込みだろうか。
「そうそう!萩原君達と仲いいんだから、いてもらわないとね!」
彼女たちが誘ってくれているのはこの間諸伏君達が参加するといっていた合コンだ。
・・・といっても、それにかこつけて食べたり飲んだりする会らしい。ちなみに女子は皆萩原ガールズなので、あまり他の男子には興味ないらしい。
(降谷君も諸伏君も・・・一応松田も華があると思うけどなぁ・・・)
「嬉しい!誘ってくれてありがとう!」
「全然だよー!てかサクラって呼んでも良い?」
もちろん!と元気よく答える。
名前で呼び合う友達なんてほとんどいなかったのでとても新鮮だし本当に嬉しかった。
「おい千代田!早く来いや!」
「はーい!」
大きな声の正体は松田だ。
話に夢中になっていたが、そういえば休憩中に皆で野球していた所だった。
「松田君に睨まれちゃった・・・」
「きっとサクラ取られて嫉妬してんのよ!嫉妬!」
「・・・残念ながら、松田が目つき悪いのはいつもの事だから・・・」
そう言う私に彼女達は笑った。
「じゃあ、また夜にね!」
「うん!またね。」
「おせーよ、球拾うのに道草食ってんじゃねーよ」
私が戻るなりそう悪態をつく彼は、いつも通りの松田だった。
(うんうん、やっぱり目つきも態度も悪いのが松田だよね。)
心の中で頷くと、私は彼に笑いかけた。
「ごめんごめん、ちょっと話しててさ。」
「しっかし、ここだとあんまり球飛ばせねぇよな・・・今度は公園でも行ってやるか?」
「大丈夫大丈夫、松田のバッティングじゃ、敷地外までは飛ばないから・・・いたーーい!!」
そう言った瞬間、頭を思いっきり叩かれた。
「もう・・・女子に向かって暴力反対・・・」
「誰が女子だよ?てめぇなんざゴリラだろバーカ」
「松田ぁ・・・?」
「おー怖っ。ほら、さっさと行くぞ」
そう言って歩き出す彼の背中を慌てて追いかけながら、ちらりと腕時計を見る。
もう休憩時間が終わる頃だった。
今日の訓練が終わり、自室に戻るとこれから行われる飲み会への準備を始める。
(誰がゴリラだ・・・後悔させてやる・・・!)
いつもはナチュラルメイクだけど今日は大人っぽく見えるように少しだけ濃いめに仕上げる事にした。
あまり華美だと教官に会ったときに怒られるので、少しだけ・・・
髪も下ろして・・・ちょっとだけ巻こうかな・・・
服装だって、普段はパンツスーツが多いけどたまにはスカートを履いてみよう。
これで少しは女らしくなっただろうか・・・
上からスーツのジャケットを羽折り寮を出ようと門に向かうと、丁度班長と出会した。
「班長!」
「もしかして千代田か?髪下ろしてると別人みたいだな!」
「もしかしなくても千代田ですけど・・・班長、彼女いるのに合コン参加していいの?」
そう問いかけると班長は「オウ!なんたって今日は萩原の奢りだからな!」と言う。
なるほど、人数合せに来てくれたら奢ってくれる・・・と、萩原君太っ腹だなぁ、等と班長と会話しながら集合場所である居酒屋に着くと、もうすでに何人かが到着していた。
「揃ってるか?」
班長が声を掛けると全員がこちらを振り返った。
「いや、後は萩・・・が・・・!」
松田はそこまで言うと持っていた携帯をポロリと落とした。
「えっ!サクラちゃん雰囲気全然違うね!かわいー!」
「本当?ありがとう。」
女の子達に褒められて素直に嬉しくて笑顔でお礼を言った。皆も気合いが入っていてとても可愛い。
「おまっ、お前が来るなんて聞いてねぇ!!」
「・・・だって松田には言ってないし・・・」
松田はビシッと私を指さして声を荒げるが、それを中断するかのように伊達班長が全員に店内に入るように促す。
「ここにいても他のお客の邪魔になるし、先に入るか!」
「「はーい!」」
萩原君には悪いが、伊達班長の一声で私達一行はお店の中へと入っていった。お座敷に案内されたので靴を脱ぎ、掘りごたつ式の席に通される。
男女別れて一列ずつに座ることになり、私は一番端の諸伏君の目の前に座った。
席に着いてメニュー表を見ているとすぐに店員がやってきて、飲み物や料理を注文していく。
「それじゃ、カンパーイ!!」
「「「カンパーイ!!」」」
そして始まった飲み会だが、お酒が入ったことで場はかなり盛り上がっていた。
「えーー!伊達君彼女いるんだー!」
「わかるーー♡」
私も強く頷いておく。彼ほどの男に彼女がいないはずは無い。
隣の松田はというと…
「松田くんは?」
「あ゛!?」
「い、いないよね…」
「わかるーー…」
こちらにも頷いておくと、目の前では諸伏君が料理上手という話が始まっていた。
「ねえ、サクラってこの間さぁ…」
「?」
突然の問いかけに疑問符を浮かべていると、隣の彼女はとんでもない発言を始めたのだ。
「諸伏君と手つないでたよねーー♡」
「えっ!?」「はぁ!?」
男性陣からは驚きの声が上がる。
私は突然そんなことを言われ、思わず食べていたものを吹き出しそうになった。
(み、見られてたーーー!!)
内心冷や汗をかきながらも平静を保っていると、目の前に顔を真っ赤にした諸伏君が…
「いや、あれは、その、俺の手が当たっちゃって……!」
必死に弁解している姿になんだか申し訳なくなってくる。
「そ、そうそうそう!それでたまたま手を繋いでるように見えたんだよね!」
あせりながらそう言うと、なんとか納得してくれたようで、その場は収まったようだった。
「えーっサクラちゃんと諸伏君、お似合いだと思うけどな…」
「諸伏君に私はもったいないって・・・そもそも彼氏いないし…!」
「意外だなぁ、サクラちゃん、彼氏いると思ってた!」
別の女の子がそんな風に話を振ってきたので、今度はそちらへと意識を向ける。
「だってさ!サクラちゃん可愛いし!」
「こいつが可愛い?どこがだよ!」
話題が出た途端、松田君は不機嫌そうに言った。
「松田君…もしかして、嫉妬?」
ニヤニヤしながら隣の彼女が彼に問いかけると、彼は顔を真っ赤にして否定する。
「ちげぇよバーカ!!」
そんなやり取りをしていると後ろの襖がガラッと開く。
遅れて到着した萩原君は「悪ぃ悪ぃ・・・遅れちまって・・・」と手を上げて個室へと入ってくる。
パチリと視線がかち合うと彼はにっこり笑って「千代田ちゃん、今日は一段と可愛いね・・・ま、いつも可愛いけどさ。」と一言。
キザったらしい台詞だが彼が言うと様になっていて、思わず顔に熱が集まる。
「あ、ありがとう・・・」
「おい萩・・・何で遅れたんだよ。」
「いやー来る途中の長ぇ階段でおばーちゃんが立ち往生してて・・・おぶって階段上がったら、さっき神社で引いた大吉のおみくじ落としたなんて言うからよぉ・・・」
その大吉のおみくじは捜しても見つからなかったらしく、何と彼は一緒に神社に戻っておみくじを引きまくったらしい・・・
(本当ならめちゃくちゃ優しいけど・・・)
男性陣が絶対ウソだろ・・・と言わんばかりの視線を送る中・・・
「わぁ♡やっさしぃ~♡」
とフィルターがかかったみたいにキュンキュンする女性陣・・・
萩原君がやって来たことで会話はさらにヒートアップしていくが、この場は最早萩原君の独壇場だった。
会話が盛り上がるにつれてお酒のペースも進む。隣の子のペースに合せて飲んでいると、結構酔いも回ってきたようだ・・・
「ねぇサクラちゃんは、好きな人いるの?」
「え~いないよぉ・・・」
酔いが回っているせいか上手く頭が回らない。
そんな私の回答を聞いてさらに質問してくる彼女・・・。
「じゃあさー、初恋の人は??」
そう言ってきた彼女に全員の視線が集まるのが分かった。
「え~~」
「ほらぁ、教えて!」
アルコールのせいで正常な判断が出来なくなっているのか、普段なら絶対に話さないようなことも口走ってしまうものだ。
「小さい頃に私を助けてくれた刑事さん・・・」
「それって警察官になるきっかけになったっていう・・・憧れの人?」
降谷君の言葉にこっくりと頷く。
女子組に更に詳しい説明を求められたので、酔っ払いながらも説明することにした。
「私の両親・・・弁護士なんだけど、そのせいで恨みを買うことも多くて、逆恨みしたグループに私が拉致された事があって・・・その刑事さんは一人で乗り込んで私を助け出してくれたんだ・・・沢山怪我してたのに、笑って抱きしめて「お前が無事でよかった」って言ってくれて・・・かっこ良かったなぁ・・・」
当時の事を思い返していると、フッと酔いが醒めて我に返った。
(しまった・・・お酒の席でこんな事件の話なんて・・・!)
皆の顔を見ると、全員が固まってしまっているのが分かる。
慌てて訂正しようと口を開いた瞬間、隣から聞こえてきた声に遮られてしまった。
「千代田って、子供の頃そんな目に遭ってたんだな・・・」
声の主へと視線を向けると伊達班長が重たい雰囲気でこちらを見ていた。
(まずい・・・皆の空気を暗くしてしまった・・・)
そう感じて焦って続きを話し始める。
「で、でもその人もうおじさんだし、奥さんも子供もいるし、綺麗なおねぇさんに鼻の下伸ばすし・・・!尊敬はしてるけど、ただの子供の頃の初恋ってだけだから・・・!」
何とか笑顔で誤魔化すように言い切ることが出来た。
「まぁ、初恋は叶わないって言うしねぇ・・・」
「だから、ホントに一瞬なんだって!というか、恋って言うより憧れみたいな・・・」
わたわたとわたわたと弁解していると、ふと正面から視線を感じた。そちらを向くと諸伏君がじっとこちらを見つめている。その視線があまりに真っ直ぐだったので目が離せないでいると、彼はにっこりと笑った。
「じゃあその人は千代田さんのヒーローだな!」
「・・・うん!」
その言葉を聞いたとき、何だか胸がポカポカ温かくなった気がしたのだった。
