wild police story
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
バイクショップではたいした情報が得られなかったため、私達は警察学校へ戻ることにした。
道すがら先程の萩原君の話を聞くと、偶然にも萩原君は伊達班長のお父さんがコンビニ強盗に襲われていた時その場に居合わせたらしい。
班長のお父さんは班長含む買い物客の目の前で人のコンビニ強盗に土下座をした、と言うのが彼の当時の記憶だった。
「はぁ!?犯人に土下座!?」
と松田が呟くと、萩原君は「まぁまぁ、続きも聞けって」と彼を宥める。
「班長は血まみれの親父さんに気を取られて気付かなかったかもしれねぇけど・・・あの後男の仲間が数人店内に入ってきたんだよ。」
班長のお父さんはそれに気付いていた。だから1人を捕まえるのではなく、警察が来るまでの間時間稼ぎをしたのだそうだ。
警察官の到着は思ったより早かったので、それも班長のお父さんが呼んだのだろう、と萩原君は語った。
「あの時、子供の俺や、妊婦さんや老人や女子学生とか、たくさんいたからね・・・」
「班長のお父さんは優秀な警察官だったんだね・・・私だったら最初の1人の時点で捕まえに行ってたかも・・・」
「まぁでも、確かにそんなことがあったんなら伊達班長が親父さんの事を腰抜けだと思っちまうのも無理ねぇな・・・」
「ああ・・・現職の警察官が犯罪者に土下座だからねぇ・・・」
確かに。事情をしらなければ情けない警察官という風に見えてしまうのも仕方ない。
「でも、班長のお父さんはそう思われてでも、その場にいた班長や萩原君・・・全員の為に土下座をしたんだね・・・かっこいいよ。」
私の言葉に3人ともが頷いた。
「まぁ班長の気持ちも分からなくねぇよ・・・俺も親父が殺人容疑で誤認逮捕されたとき・・・人殺しの息子だと言われまくって親父のことを嫌いになりかけてたから・・・」
ランドセルの裏に「人殺し」と書いた紙を貼られたり・・・など、松田の過去を聞いた私と諸伏君がしんみりとしている中、当の本人である彼はケロリとした顔で言った。
「まっ!俺の場合はジムの人達に「親父を信じて待て」って言われて・・・気持ちを折らずにいけたんだがな・・・」
そう言ってニカリと笑う彼につられて私達の表情も緩む。
そんな会話中、クイッと優しく腕を捕まれ咄嗟に振り向くと、そこにはどこか遠くを見つめる諸伏君の姿があった。
何を見ているのかと思い、視線の先を彼に合わせる。どうやらコンビニをみていたようだ。何か買いたい物でもあるのだろうか。
「だから諸伏よぉ・・・昔何があったか知らねぇけど・・・話してくれたら俺らのしょーもない助言が何かの助けになるかもしれねぇぜ?」
そんな松田の言葉も聞こえていないのか、諸伏君は食い入るようにコンビニを見つめている。
じっくり観察すると、どうやら看板のライトが不規則に点滅している事に気付いたあれはもしかして・・・
(モールス信号?この間授業で習った・・・でも、一体誰が・・・)
「た・・・す・・・け・・・て・・・」
「今かよ!?」
「ち、違うよ!ほら!奥の通りのコンビニの明かり!」
「まるでモールス信号みたいに点滅してる・・・」
私と諸伏君が指をさしてアピールすると、2人の視線は一斉にその方向を向いた。
「おいおいありゃー・・・」
「みたいに・・・じゃねぇな・・・」
コンビニでモールス信号・・・となると恐らく、あのコンビニには今・・・
「強盗がいる・・・?」
「その可能性が高いな・・・で、どうする?」
私の言葉に松田が応える。
「相手は何人いるか分からない。凶器もナイフなのか、銃なのか・・・」
諸伏君も中の状況が掴めない事に頭を捻っていると、良い案が浮かんだのか萩原は「良いこと思いついた!」と携帯を取り出した。
「何か作戦があるの?」
「ああ・・・班長の親父さんがやろうとしたことを、俺らがやるのさ!」
そう言った萩原君の意図をくみ取り、私達はコンビニの近くへ向かった。
店内はウソのように静かで普段と変わりない様子だった。
「えー!臨時休業?」
「運悪かったね・・・違うコンビニに行こっか。」
等と買い物に来た一般客のカップルを装って私と諸伏君が近づくと、自動ドアは開かず、張り紙が貼ってあることに気付く。
「・・・どうだった?」
近くの建物の影に隠れていた松田達と合流すると、コンビニの状況をつたえた。
「入り口は施錠されていて改装中の看板が貼ってある。」
萩原君の調べでそんな知らせはなかったということがわかり、やはり中に銀行強盗がいるのだと確信する。
「でも、誰が一体モールス信号なんて・・・」
「そんなの1人しかいないだろ?」
私の疑問に松田が自信満々に答えたため、私もああ、と納得する。頭の中には綺麗に輝く金髪の彼を思い浮かんだ。
そうこうしているうちに周りに集まったのは警察学校の同期達だった。ざっと20人程はいるだろう。
作戦はこうだ。
まず変装した萩原君、松田、諸伏君、私の4人がコンビニに押し入る。
相手を油断させるためにテンション高めで・・・萩原君流に言うと「パリピ風」ってやつだ。
私達に犯人グループが気を取られているうちに他の皆が大勢で押しかけて、数の多さで制圧する。
まさに、あの日伊達班長のお父さんがやろうとしていたこと・・・
「はい、頼まれてたやつ!」
「ありがとね!」
同期の女の子から袋を受け取った萩原君が中を開くと、入っていたのは派手な服装とサングラスだ。
「パリピ感」をより高める為に服装も変えて、サングラスをかける。萩原君が少し楽しそうにしていたのは見なかった事にしておこうと思う。
私も派手なジャケットを羽折ると女の子達が袖を折ったりなど即席で調整してくれた。
「こんな感じかな?」
「ありがとう。」
「ううん、千代田さんも気をつけてね。」
その時、コンビニに一台の車が近づいて行った。
車には有名な警備会社のロゴが入っており、中から2人の警備員が出てくるのが見えた。
警備会社が異変に気付いたのかとも思ったが、それだと2人で向かうのは数が少なすぎる。
恐らく、中にあるATMの現金補充に訪れたのだろう。
となると、犯人達の狙いは恐らくこの現金が出てくるタイミング・・・
「よし、じゃあ行きますか!」
萩原君の言葉に頷くと、私達は突入していった。
「「チョリーース♪」」
この恥ずかしいかけ声と共に4人で中に入ると案の定ぽかんとしている犯人グループの姿があった。
「おい、マジか!?あれってライフルじゃね?」
「チキってんじゃねぇよ!映画とかの撮影用のパチモンだっつーの!」
「ねぇねぇ何の映画?俺らも出させてよーー!!」
「あたしヒロイン役がいいなーー!!」
突然現れた陽キャ集団に犯人グループはたじたじだった。
その勢いに乗って他の同期達も突入してきたので、私と諸伏君は降谷君や客が隠れている場所を探し始めた。
バックルームから鍵を奪い従業員の休憩室を開けると、捕らわれていた人達が怯えた表情で待機していた。
「待たせたな、ゼロ!」
「班長、降谷君、皆無事!?」
「ヒロ!千代田さん!」
「な、何で、お前たちが…?」
降谷君は私達が来ることを分かっていたみたいで、少しほっとした様な顔を見せた。
伊達班長は私達が来た事に対してびっくりしている。
「看板のモールス信号を受けて犯人達を制圧しにきたんだよ!」
「力じゃなく、数でね!」
私が大きく扉を開くと大勢で犯人達を制圧する同期達の姿が班長の目に飛び込む。
「まあ、班長の親父さんがやろうとした事をやったまで…そうだよな?萩!」
「ああ!」
松田の言葉に萩原君は大きく頷いた。
もちろん、急に出てきたお父さんの名前にどういう事なのかいまいち理解ができないといった様子の班長に萩原君は私達に聞かせたようにあの日の班長のお父さんの事を話し始めた。
「だからあの土下座は命乞いなんかじゃなく…誰も傷付けてたまるかっていう…警察官のハートがそうさせたんじゃねーの?」
班長はその言葉に上を見上げて押し黙る。
彼もきっとあの日の事を思い出しているのだろう。
「そう言えば千代田さん…!」
警察学校への帰り道、何やらそわそわした様子の諸伏君が話しかける。
「諸伏君?どうしたの…?」
「その…バイクショップで、手を…」
その言葉に私はハッとする。
しまった、無意識とはいえあの時彼の手を握ってしまった…
「ご、ごめん…急に握っちゃって…」
慌てて謝ると彼はブンブンと素早く首を横に振った。
「いや、全然大丈夫!でも、どうして?」
そう問いかけられて、私は少し考えるとこう答える。
「何だか、諸伏君が不安そうだったから…かな。私も不安な時は良くお母さんにこうして手を繋いでもらってたから。」
「え……?俺、そんなに不安そうだった……?」
諸伏君の顔がみるみる曇っていくのがわかった。
また事件の事を思い出しているのだろうか。
「諸伏君?」
「今…もう一度…いいかな…?」
不安そうな表情でこちらを見る諸伏君の手をゆっくりと取る。
「うん……私の手ならいつでも貸してあげるよ。」
「…千代田さんて凄いね。」
そう言うと、彼はホッとした様に笑った。
「どうして?」
「千代田さんと手を繋ぐと、とても安心するから…」
事件に巻き込まれて・・・命の危険を感じて不安にならない人なんていない。私も事件に巻き込まれた事があるからこそわかる。
私は親や周りの人達が支えてくれたから立ち直ることが出来た。
でも、彼の場合はご両親を・・・事件が起きたのが確か、彼が小学校1年生の頃・・・
そんなに小さな時にお父さんもお母さんも奪われてしまった彼の気持ちを考えると、胸の奥が痛んだ。
「もう大丈夫だよ、ありがとう。」
そう言って笑う彼につられて私も笑顔になるのだった。
大丈夫、君には降谷君も、松田も萩原君も班長も・・・みんながいるから。
諸伏君はこれからもずっと・・・どうか笑っていて欲しい。
