wild police story
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「お前等が手にしているのは”SAKURA”!日本警察正式採用5連発リボルバーだ!!」
射撃訓練場には教官の大きな声が響き渡る。
私は始めて実弾を込めて握る拳銃に緊張がとまらなかった。
初めて触る銃の感触、重み、冷たさ、全てが新鮮で思わず何度も握りしめてしまう。
そんな私を見て隣に並んでいた萩原君が笑った。
「千代田ちゃん・・・そんなに握りしめたら危ないぜ?」
「ははは・・・」
そんな会話をしていると自分達の順番が訪れた。
前の列の入れ替わると教官の合図で一斉に射撃が始まる。
私が5発撃ったうち、真ん中を捉えたのは1つだけだったが的に当てることは出来ている。
「5発ほぼど真ん中!やるねぇ、降谷ちゃん!」
そんな萩原君の声に2つ隣の的へ視線を向けると、降谷君の的は5発とも真ん中の10点エリアだけに穴が空いていた。
「凄い…!」
「降谷!なかなかいいセンスをしているが…上には上がいる事を覚えておけ!貴様らの先輩に最初の試射で満点!つまり20発全弾ド真ん中に的中させた天才がいるからな!」
(その話、どこかで聞いたような…?)
思い出そうとしても思い出せない記憶の中を探っていると、防音用イヤーマフを着けているにも関わらず「クッソ・・・!」と大きな声が隣から聞こえる。
どうやら松田は全然弾が当たらないらしい。
「全然当たらねぇ・・・」
「どうした?松田・・・ケンカっ早いガキには拳銃は難しいか?」
と、教官にも煽られる始末・・・しかし彼の耳には全く届いていないようで、何を思ったか松田はその場に座り込み・・・なんと拳銃を分解し始めた。
「ちょ・・・松田!?」
「あーやっぱりシリンダーストップいっちゃってたわ!バレルとシリンダーの軸線もズレてたしこれじゃ当たらねぇぜ。」
「松田ァ!!!直ぐに元に戻せ!!」
案の定、松田は教官に怒鳴られる事となる。
しかし、カチャカチャと拳銃を分解する彼の手つきはとても手慣れていてるように見える。
そんな彼を見ていると、隣にいた萩原君は「あちゃー」と腕を組む。
「またやっちゃったか・・・」
「また?」
「陣平ちゃんは分解魔!ガキの頃から何でもかんでも分解しなきゃ気が済まねぇんだよ!」
「あ、悪趣味・・・」
なんと萩原君のお姉さんの携帯も分解してしまったという話を聞いて、彼に自分の電子機器は絶対に地近づけないようにしようと誓った。
結局松田のせいで拳銃訓練は中止となり、拳銃などの訓練に使用した装備は返却する事となった。
しかし、補助教官がひとつひとつ装備の確認をしていくと、銃弾が一つ返却されていない事が分かった。
「まあ、全てといっても松田の拳銃はバラバラのままなのでまだ回収していませんが・・・」
当の本人はそんな事気にもせず、ふわぁと大きな欠伸をしている。
「何でまだ組み立ててないんだ!?」
「はぁ?立ってろって言ったじゃないっスか。」
「まぁいい・・・くすねた弾を直ぐに出せ!そうしたら今回は見逃してやる!」
「弾なんて持ってないっスよ!全弾撃っちまって空薬莢も補助教官に渡したし・・・」
確かに、彼は5発分の空薬莢を返却していた。
私は彼の隣にいたし、彼がさらに悪事を働かないか見張っていたのでそれを知っている。
「ウソをつくな!!きさま以外に誰がいる!?」
「あ゛・・・」「待って下さい教官!」
今にも殴りかかりそうな松田と教官の間に割って入ると、鬼塚教官は一歩後ろにさがる。
「どうした千代田・・・」
「松田ではありません・・・彼が5発分の空薬莢を返却しているのを私は確認しています・・・」
「・・・なんだと?」
教官は私が喰ってかかるのが意外だったのか、じっと教官の顔をみると、彼はたじろぎながらも反論した。
「しかしだな・・・他に誰が弾を盗んだと言うんだ・・・」
「それは、私が探します。」
「まあまあ!ここは班長の自分に免じて鉾を納めて下さい!弾は必ず返却しますから!」
私と伊達班長の言葉と屋根裏の保守工事に来た作業員のタイミングが良かったお陰でなんとかこの場を凌ぐことが出来た。
教官はまだ松田を疑っているようで、班長に弾を自主的に差し出させるように言うと作業員と共に上へと上っていった。
教官がいなくなったのを確認すると萩原君は口笛を鳴らして私の肩に手を掛けた。
「かっこよかったぜ、千代田ちゃん・・・」
「・・・なんで庇ってんだよ」
松田は私に助けられたためか少々不服そうだった。
「だってホントに松田のこと見てたから・・・」
「なっ・・・!」
私の言葉に彼は頬を赤らめた。
(・・・しまった、言い方を間違えたかもしれない。)
「えーと・・・松田がこれ以上悪さしないように見張ってたから・・・。」
そう言うと今度は彼の表情はみるみる不機嫌なものになっていった。
視界の端で萩原君がツボに入ったのか笑っているのが見える。
「はぁ!?俺は別に何もしねぇよ!!」
「さっき教官の前で堂々と分解してたくせに!」
「うっせぇ!俺が何しようが俺の勝手だろうが!」
「まあまあ落ち着けって・・・」
言い合いを始める2人に班長が間に入って仲裁していると、バキッと大きな音をたてて突然天井に穴が開いた。
全員が天井に視線をやると、上から叫び声と共に人が降ってきたのだ。
全員が咄嗟に動けない中、作業員と共に天井裏へ向かっていた鬼塚教官は二階のフェンスを跳び越えた。
落ちてきた作業員を空中で受け止めることに成功するが、その作業員の着けていた命綱に教官の首が絡まり、作業員共々宙づりになってしまったのである。
その状況にこの場は一気にパニックになったが私の周りにいた5人が不思議と冷静だったため、私も平静を保つことが出来た。
6人以外が取り乱す中、班長は一番に口を開く。
「おい・・・お前等・・・やることはわかってるよな?」
「拳銃・・・」
「弾・・・」
「射撃・・・」
「俺は土台・・・」
「じゃあ俺は土台の上のつっかえ棒かな?」
「私はパニックコントロール・・・」
「オウよ!んじゃ野郎共・・・行くぞ!!」
班長の合図で一斉に動き出すと、私は訓練所の出入り口へと走り、扉の前へと立ち塞がった。
(私の役割は萩原君が銃弾を盗んだ犯人を見つけるまで誰も外に出さないこと!)
「千代田さんどいて!他の教官呼びに行かないと・・・!」
「誰も出ないで!まだ銃弾が見つかってない!」
「でも!教官が・・・!」
「落ち着いて・・・大丈夫だから。」
(そしてもう一つ・・・この場のパニック状態を沈める事・・・)
すぐに他の教官を呼びに行く方が正しい判断かもしれないが、この訓練場は銃を扱う場所なだけあって他の棟とは距離がある。
教官が窒息するまでに間に合うかと言われると・・・難しい。
それに私は、降谷君達ならなんとかしてくれるって信じてる・・・
「みんな、一旦落ち着こう。」
まずはその場にいた全員を宥めることから始めると、次第に落ち着きを取り戻し始めた。
そうこうしているしているうちに萩原君は銃弾を持っていた人物を突き止め、その弾は松田が直した拳銃を握る降谷君の手へと渡った。
「外したらぶっ殺すぞ・・・ゼロ!!」
松田の声に大きく頷くと降谷君は狙いを定め、教官の首を締め上げていたロープを見事に打ち抜いたのだった。
ロープは切れると同時に地面に落ち、支えを失った鬼塚教官は重力に従って落ちると、作業員は諸伏君に、教官は班長の手によって抱き留められた。
班長が必死に教官に声を掛けると、彼は息を吹き返した。
途端に周囲から歓声が上がる。
その光景を眺めながら私は安堵のため息をついていると、ぐいっと手を引かれる。
「わっ・・・萩原君!」
「皆の所行こうぜ!」
そう言って彼は私を半ば強引に引っ張りながら他のメンバーの元へ近づくと、既に鬼塚教官の介抱を終えた皆が待っていた。
「やったなゼロ・・・」
諸伏君が嬉しそうに言うと、彼は「ああ」と返事を返してホッと胸をなで下ろした。
この作戦は降谷君にかかっていたので、プレッシャーもあったのだろう。
班長は降谷君の肩を叩いて賞賛を送る。
「流石降谷だな。よくあのプレッシャーの中ロープを精確に撃ち抜いた!」
「いや、僕が精確な射撃が出来たのも松田が素早く壊れた拳銃を修理したお陰だ。」
「まあ、その拳銃も萩が弾を見つけなかったら意味なかったけどな!」
「千代田ちゃんが全員を落ち着かせて誰も外に出さなかったお陰で思ったより早く弾が見つかったんだよな。」
「それこそ班長と諸伏君が教官の負担を少なくしてくれたから全部が間に合ったって感じだったね。」
「全員の連携が上手くいった結果だな。」
諸伏君の言葉に私達は顔を見合わせて笑い合う。
今回の件に関して、訓練以外での拳銃使用に関して重大な違反が認められたが、鬼塚教官が他の教官に口添えしてくれた事により不問に付すという結果となった。
消灯前、松田を探す降谷君に着いて行くと、屋上で壁に寄りかかる彼を見つける。
「当たり前だぜ・・・あの世からこっちに連れ戻してやったんだからな・・・」
「・・・誤認逮捕だったらしいね、君のお父さん・・・」
降谷君が言い出すと松田は「萩の奴だな・・・」と呟くと体を起こし立ち上がった。
彼は父親があの場でケンカを止めていたら殺人自体を防ぐ事が出来たのでは無いかと、事実を受け止めたうえで誤認逮捕によって父親の夢を潰し、家庭をめちゃくちゃにしたにもかかわらずしれっとしている警察を許せないのだ。
そんな彼に、降谷君が言う。
「それで?そんな君がなぜ警察官に?」
「んなの決まってらーな!ブン殴ってこのもやもやを晴らしてぇからだよ・・・」
「・・・ぶん殴る・・・誰を?」
思わず聞き返すと、松田はニヤリと笑って私を見た。
「警視庁のトップ・・・警視総監をな!!」
思いもよらない回答に私が言葉をなくしていると、降谷君は「ぷっ」と吹き出したので、私もつられて
笑ってしまう。
「あはははは!」
「何がおかしいんだよ?」
「いや・・・大変だと思って!かなり出世しないと総監とお近づきになれないから!」
「確かに、今の松田の勤務態度じゃちょっと難しいかもね・・・」
「おい!!・・・そういうテメェ等は、なんでポリ公目指してんだよ?」
松田が私達を指さして問うと、降谷君が真剣味を帯びた表情で答えた。
「ある人を見つける為さ・・・急に姿を消してしまった、とても大切な女性をね・・・」
その表情から、探しているのはとても大切な人だと言うことが分かった。
その人物は家族か・・・もしかすると恋人かもしれない。
「なんだ、女かよ?意外にチャレーなお前・・・」
「だろ?」
降谷君の大事な人が見つかるといいな・・・と心の底から思った。
「んで、お前はなんで警察目指してンだよ・・・」
「たしか、千代田さんは刑事を目指してるって言ってたよな?」
「え、私?」
突然話題を振られ、少し驚いたがすぐに返事をする。
「私、小学生の頃に事件に巻き込まれた事があって・・・その時助けてくれた捜査一課の刑事さんにずっと憧れてるんだ・・・」
「じゃあ、千代田さんが捜査一課に配属されたら、その人と上司と部下の関係になるって事か。」
降谷君がそう言われ、首を横に振る私に2人は頭の上に疑問符を浮かべる。
「その人はもう刑事を引退してるから、警察官として一緒に働くことはないかも。」
「警察官として?」
「ええと・・・その人は今警察を辞めて探偵として活動しているから、一緒に働くチャンスはあると思う!」
私の答えに納得がいったのか、彼らは頷いた。
消灯の時間も近づき、屋上から降りる前に私は松田に引き留められる。
「千代田。」
降谷君はもうすでに屋内へと戻っていってしまった。
「その・・・悪かったな。」
「何が?」
唐突に謝罪の言葉を口にした松田に、私は首を傾げた。
「気色悪いとか言って、悪かった。」
「なんだ、そんなの全然気にしてないよ・・・」
どうやらあの時の事を気にしていたみたいだが、私は全く気にしていないのでそう答える。
しかし松田は何か言いたげにこちらを見ていたので、まだ何かあるのかと再び首を傾げた。
「あ、あとな・・・銃弾のくだりの時、庇ってくれてその、ありがとな・・・」
そう言うと、彼は照れたように頬を掻く。
真面目で不器用な自分が嫌いだった。本当は誰とでも仲良くしたいのに、そのせいで嫌われたり恨まれる事もあった。
だから今、松田のありがとうという言葉がなによりも嬉しかった。
「どういたしまして!」
笑顔でお礼を返すと、彼は照れ臭そうに顔を背ける。
本当はこちらがありがとうと言いたいくらいだけど、きっと彼は調子に乗ってしまうから、その言葉はいつかに取っておくことにした。
