wild police story
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どうなった・・・犯人を確保した・・・?何も見えていない分現在の状況が掴めず一気に緊張が走る。
「な、何で爆発しない・・・!!」
「解体・・・間に合ったようだな・・・」
その様な声が聞こえて安堵し力が抜ける。よかった、松田がきっと爆弾を解体したんだ・・・。
「有里ちゃんはその後言ってましたよ?"遠足から帰ったら、お父さんに謝んなきゃな"って・・・」
きっと有里ちゃんは遠足の途中で亡くなってしまい、外守さんに会うことが出来なかったのだろう。
そう思うと何とも言えない気持ちになる。だからといって諸伏君のご両親を彼から奪ったことは到底許されることではない。
しかし、遠足中だというのなら諸伏君は・・・彼は仲の良い友達が亡くなってしまうところを・・・
考えているうちに階段を降りる足音が聞こえ始める。
どうにかして私がここにいる事を伝えないと・・・
・・・・・
「お!上手くいったみてーだな?」
「バッチリ避難させたのに骨折り損かよ・・・」
無事長年俺を苦しめていた事件の犯人である外守一を捕らえ、店を後にしようと階段を降りていたときだった。
突然外守さんが「しまった・・・」と言葉を溢したのだ。
「どうかしましたか?」
「あの子がまだあの部屋に・・・」
「あの子?誘拐した女の子ならここにいるが・・・」
班長がそう言うと外守さんは首を横に振る。・・・様子がおかしい、何だか胸騒ぎがする。
「・・・おい萩、今日アイツがクリーニングの当番だったよな・・・!」
「アイツって、サクラちゃんのことか・・・?そう言えばそうだったな・・・」
「ってことはまさかーーー」
ドォォン!!
松田が言葉を言い切る前に大きな爆発音が辺りに響き渡る。それと同時に二階から火の手が上がり始めた。
「もしかして、サクラちゃんが上にいるってのか!?」
「何だって!?」
胸騒ぎの正体はこれだったのか、どういうわけか外守さんは千代田さんまでも爆破に巻き込もうと・・・
「サクラ!!!」
松田が彼女の名前を叫びながら階段を上がろうとするが、それより先に自分が階段を駆け上がる。
「俺が行く!!」
「ヒロォ!!」
「表!!桜!!!」
そう言えば皆なら伝わるだろうと思い、最低限の言葉を吐き捨て先程までいたあの部屋へと戻った。
ダメだ、彼女まで失ってしまうなんて・・・
『やっぱり諸伏君は優しいね』昨日彼女に言われた言葉を思い出す。
違う、違うんだ・・・誰にでもじゃない。
部屋に踏み入れ叫ぶと煙を吸ってしまうと肺がやられて動けなくなると思ったから、部屋の前で立ち止まり思い切り空気を吸うと力一杯叫ぶ。
俺にとって、とても大切な子の名前を。
「サクラちゃん!!!」
・・・・・
彼らが和室から出て行ってすぐの事だった。突然爆発音が聞こえたと思うと辺りが一気に暑くなるのがわかった。
松田が解体ミスをするはずがないから恐らく時限式爆弾が他にも仕掛けてあったのだろう。
きっと押し入れの外は火の海になっているはずだ。
程度は分からないがもう助けは期待できない。
(最後まで諦めたくない・・・)
そう思って身をよじると何とか口を覆っていた布だけ外すことに成功した。
後は足に巻かれた布を口でほどいて・・・
そう思い行動に移そうとした所で目の前が一気に赤く燃え始めた。片方の襖に火がついたのだ。
「…!!」
一瞬頭の中に"死"という言葉がよぎる。
そう思った瞬間、涙が頬を伝うのが分かった。
あの時・・・昔誘拐されたときに感じた恐怖と不安だ。
「たすけて・・・」
口から漏れた言葉は誰に届くわけでもなく、ただ静かに消えていく。
そして襖に燃え移った火が迫ったその時、襖の向こうから聞き慣れた大きな声がした。
「サクラちゃん!!!」
助けに来てくれたんだ。
私、ここにいるよ。
「ヒロくん!!!」
反射的に大きな声で彼の名前を呼べば、即座に目の前の襖が開き、名前を呼んだ彼が顔を覗かせた。
その後すぐに抱き上げられて体が中に宙に浮く感覚を覚える。
こんな状況なのに、彼の顔を見て酷く安心してしまった。
彼は私を抱え込むと迷わず部屋の窓から飛び出してそのまま下へ飛び降りたのだ。
その真下には横断幕を広げて待つ4人の姿があって、飛び降りた諸伏君と私は彼らに向かって落ちていく。
落ちながら彼の抱き締める力が強まったのを感じた。
バスン…と、横断幕を持った4人は私達をしっかりと受け止めるとゆっくり地面に下ろした。
助かった安心感からか、思わずその場から動けなくなる。
諸伏君も安堵からか「ふぅ・・・」と息を吐いた。
「君が無事でよかったよ。」
お互いがまだ横断幕の上に横たわった状態で彼がそう言うものだから、瞼が焼けるような熱い涙が溢れてきた。
そんな私の頭を優しく撫でながら困ったように笑う彼を見てさらに涙が込み上げてくる。
「2人とも怪我はねぇか?・・・って、千代田、泣いてるのか・・・!?」
心配して声を掛けてくれた班長も私が泣いているのを見てぎょっとした様子だった。
そう言えば大人になってから人前で泣いた事なんてなかったから当然の反応かもしれない。
むくりと上半身だけ起き上がらせて、この涙を何とか収めないとと思っていると、突然背後から衝撃を感じた。
右肩に重みを感じてすぐ右を向くと松田の顔があり彼はそのまま腕を私の前に回すとぎゅっと抱きしめたまま動かないでいる。
私の前方にいた班長と諸伏君は松田の行動に固まってしまっている。
「ちょ・・・ちょっと松田・・・!?」
松田は「はーー」と息を吐くと直ぐに離れていった。どうやら相当心配させてしまったらしい・・・。
(びっくりして涙、止まったんだけど…)
それから、警察に通報していたゼロと萩原君もこちらへ来てくれて私の無事を喜んでくれた。
「ありがとう。皆が来てくれなかったら女の子も私も死んでたよ・・・」
「サクラが上にいるって松田が急に言い始めたときは驚いたよ。」
「だよな、俺もびっくりしたぜ。」
そう話す萩原君と降谷君の会話を聞きながら手足の拘束を解こうともぞもぞ動くが中々上手くいかない。
そんな私に気が付いたのか、隣にいた諸伏君が私の手を縛っている紐を丁寧にほどいてくれた。
「ごめんね、諸伏君・・・。」
そう言って謝ると彼は首を横に振った。
「いや・・・謝るのは俺の方だよ・・・過去の事件に千代田さんを巻き込んでしまった・・・」
申し訳なさそうにする彼にそんなことないと言って笑ってみせる。
「そんな事言わないで・・・私だって、油断してたから・・・でも、助けてくれて本当にありがとう・・・」
そう言うと、彼も少しだけ安心したような表情を見せた。
その後直ぐに近くの駐在所の警察官が駆けつけたので、外守さんと誘拐された女の子の身柄を引き渡した。
「やべぇ!!4時まで後1時間じゃねぇか・・・!!」
ふと腕時計を見た班長が焦ったように声をあげる。
どうやら5人は鬼塚教官に風呂掃除を4時までに完璧に終わらせるよう言われていたみたいで、その4時まであと1時間しかないというのだ。
「お前ら!急いで戻るぞ!!」
班長の声に一同は頷くと、再び学校へと急いだのだった。
真っ直ぐ風呂場に向かうと脱衣所共に想像以上に汚れていた事に驚愕する。
(大勢の男子が使うとここまで見事に汚れるのか・・・)
「サクラは休んでていいんだぞ・・・」
「どこも怪我してないし、私も掃除手伝う!」
無理するな、というゼロに張り合うかのようにそう返答する。だって怪我していないのは事実だから。
「ほら、早く始めないと4時に間に合わないよ!」
「はぁ・・・しょうがねぇな・・・」
そう駄々を捏ねる様に言うと班長は渋々承諾してくれたので、デッキブラシを手に取ってタイルを磨き始める。
5人はよっぽど教官に怒られたくないのか無言でテキパキと手を動かしている。こんな伊達班は未だかつて見た事がない。
暫く掃除を続けていたが、現在3時50分・・・指定の4時までには間に合わなさそうだ。
「このままじゃ本当に間に合わねぇな・・・」
「ゼロ!時間稼ぎ頼んだ!」
「だな、ゼロが適任だ!」
「ゼロ、お願い・・・」
「え・・・」
苦肉の策として一番成績の良いゼロが教官を食い止めて時間を稼ぐという大役を任せられたのだった。
嫌がる彼を半ば強引に風呂場から押し出し、私達はまたすぐ清掃に取りかかる。
それから数分後、ようやく作業が終わった時にはもう既に4時は過ぎてしまっていた。
だが、教官がまだ来ていないという事はゼロの足止めが上手くいっているのだろう。
体を動かし疲れた私達はヘナヘナと風呂場のタイルの上に座り込んだ。
「つ、疲れた・・・」
「機動隊の教練よりキツかったぜ・・・」
「腕がパンパンだぜ、腰も痛ぇし・・・」
「ブラシかける体制、何気にキツいよね、って・・・」
みんな口々にそう言い、その場に寝転がる。
班長がやけに静かなのが気になったので彼の方を見てみると、彼の瞼は完全に閉じており寝息を立てていた。
「班長、寝てやがる・・・」
「何か俺も眠くなってきちゃったよ・・・」
「降谷ちゃんが来るまで寝るか!」
「ええ・・・?」
そんな会話をしていると班長の隣にいた松田が私の肩に頭を乗せる形で横に倒れたのだ。驚いて彼の顔を見るとスース―寝息をたてながら眠っているではないか・・・。
「秒殺だ・・・」
そう言い私も寝るか・・・と目を閉じると、急に松田が乗っていた方の肩が軽くなった。
まさかずり落ちた?と思って目を開けると目の前には松田の肩を掴んで支える諸伏君の姿が映った。
どうやら彼が松田を私から引き剥がしてくれたらしい。
諸伏君は松田を既に寝ている班長の太ももの上に預けると、私の隣にしゃがみ込んだ。
「班長の膝枕・・・」
そう呟く私に彼は思わず吹き出してしまう。お互いツボに入ったようで暫く笑い合っていたが、どうやら彼も睡魔に負けてしまったようだ。
船をこぎ始めた諸伏君は私にもたれ掛かるようにして眠りにつく。
その寝顔はなんだか憑きものが落ちたように晴れ晴れとした表情に見えた。
(悪い夢がやっと終わったんだね・・・)
そんな事を思いながら私もゆっくりと目を閉じた。
その後機嫌の悪いゼロに全員叩き起こされたのは、また別の話・・・
