ホウエン地方
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ブレイブアサギ号がトクサネシティを出立した夜。検査のためにずっと医務室のベッドで横になっていたからか、今日の出来事を思い出してか、思うように眠りに付けずにいた。
少し風に当たろうと思い立ち、甲板に出る。
座りこんで空をぼんやりと眺めていると、後ろから声をかけられた。
「眠れないのか?」
振り向くとそこにはフリードが立っていた。彼も寝付けなかったのだろうか。
その言葉に頷くと、彼は隣に座り一緒に空を眺め始めた。
暫く無言でいると、不意に彼が口を開く。
「アルセウスにカイオーガ…伝説のポケモンに合ったんだ。眠れないよな。」
「あの時はどうなる事かと思ったけど…。カイオーガが海に帰る事が出来たのもフリードやポケモン達のお陰だよ。」
私がそう言うと、フリードは首を横に振る。
「オレは何もしてない。ユイがカイオーガに必死に語り掛けたからだろ?」
「ううん、違うよ。あの時フリードが居てくれたから…皆がカイオーガを助けたいと思っていたから、カイオーガも心を落ち着かせる事ができたんだと思う。」
「……そうか、ならお互い様だな!」
フリードがそう言うと、私達は顔を見合わせて笑った。
そして再び夜空を見上げる。
「フリード、アルセウスが言ってた事、覚えてる?」
そう尋ねると、フリードは少し驚いたような顔をした後、優しい笑みを浮かべた。
「……あぁ。」
彼の返事を聞くと私はそっと目を閉じる。
この世界に来てから体験した、瞼の裏に焼き付いた光景を思い出しながら、私は口を開いた。
「前にアルフの遺跡で私とフリードが逸れた時があったよね?その時の事なんだけど……」
私はアルセウスに初めて出会った時の事をゆっくりと語り始める。
おそらく、力を分けて貰ったのはその時だろう。
私はアルセウスに託された「ポケモンを救う」という使命をフリードに打ち明ける。
彼は何も言わずただ黙って私の話を聞いてくれた。
「アルセウスに言われたからじゃなくて、これは私の意思でもあるんだ。」
「分かってる。」
静かに発せられた彼の言葉に思わず口を噤む。
「……え?」
私が聞き返すと、彼は真剣な表情でこちらを見つめてきた。
「今までずっと見てきたんだ。分かってるよ。」
その言葉を聞き、胸が熱くなるのを感じた。
嬉しくて涙が出そうになるのをぐっと堪えて私は笑顔を浮かべた。
「……ありがとう。」
「でも、一つ約束してくれ。絶対に無理はしないって。一人で抱え込まないって。」
真剣な眼差しを向ける彼に、私は頷く。
今なら打ち明けられるかもしれない。私のもう一つの秘密。
自分はこの世界の人間ではないのだと。
今しかないと思った。
勇気を出して言葉を紡いだ。
「実はもう一つ……。」
「ん?何だ?」
不思議そうに首を傾げる彼を見つめ返すと、深く深呼吸をする。
「アルセウスが何故私に使命を与えたのか。・・・いや、使命を与えるために呼ばれたんだよ。」
「呼ばれたって・・・どこから?」
その先を答えようとするが、出掛かった言葉は喉の奥に引っ掛かってなかなか出てこない。
いざ言葉にしようとすると、怖くてたまらなかったのだ。
受け入れてくれるだろうか?拒絶されるのではないだろうか?
そんな不安がまた頭を過ぎる。
しかし、ここで言わないと後悔する事になるかもしれない。
そう思った瞬間、自然と口が開いていた。
「私、別の世界から来たんだ。」
意を決して発した言葉。それは静かな夜の空気に溶けていった。
沈黙が流れる中、恐る恐る彼の顔を見ると、目を見開いて固まっていた。
やはり受け入れられなかったのだろうか。
そう思うと怖くなり、目を伏せる。
すると突然肩を掴まれ、顔を覗き込まれた。
驚いて顔を上げると至近距離に彼の顔があって心臓が跳ねる。
慌てて離れようとするが肩を掴む手に力が込められていて身動きが取れず、顔を逸らすことしかできなかった。
「きゅ、急にこんな事言ったって、信じてもらえないよね・・・」
俯きながらそう言うと、フリードは大きく溜息をついた。
呆れられてしまったのかもしれないと思うと悲しくなってくる。
やっぱり言わなければ良かったと思っていると、頭上から声が聞こえてきた。
「どこから来ようと、ユイはユイだろ!」
その声に驚き顔を上げれば、真剣な表情をした彼と目が合う。
その真っ直ぐな瞳に射抜かれて鼓動が激しくなった。
「そりゃ、急に違う世界から来た、何てこと言われて、今凄く混乱してる。・・・だけどな、前にも言っただろ?どこで産まれようと、どこから来ようと、ここにいるお前はお前なんだよ。」
その言葉に胸が熱くなった。涙が溢れそうになるのを必死に堪える。
そう言って微笑む彼につられて私も笑顔になる。
「フリード・・・ありがとう!」
「ユイは笑ってるのが一番似合うな!ほら、笑え笑え!!」
そう言いながら頬をむにっと引っ張られる。痛いけど嬉しい。
「もう!!やめてよー!!!」
笑いながら抵抗すると彼も楽しそうに笑っていた。
それを見て私も更に笑ってしまうのだった。
暫くして笑い終えると、フリードは空を見上げた。
釣られて見上げるとそこには吸い込まれそうな程真っ暗で、大きな夜空が広がっていた。煌めく星々が夜の黒をより一層引き立たせている。
その光景はとても美しく、幻想的だった。
まるで夢の中にいるかのような錯覚に陥る程だ。
「私のいた世界にはポケモンはいないんだ。」
ふと口を開くと、彼は興味深そうにこちらを見た。
「じゃあどんな生き物がいたんだ?まさか人間しかいないって事は無いよな。」
私は少し考えてから答える。
「うーん……そうだなぁ……」
それから私は様々な生き物について説明した。ペットとして飼える動物や動物園にいる動物、野生で見ることの出来る動物…あげるとキリがないが、色々と説明するうちに段々と楽しくなってきて夢中になって話し続けた。
博士の血が騒ぐのか、フリードも興味津々に私の話に聞き入っていた。
「じゃあ、何でユイはポケモンに詳しいんだ?」
「実は…」
私のいた世界でポケモンは架空の生き物だったと素直にフリードに告げる。
「ゲーム…そう来たか…」
「ゲームの中でもポケモン達をゲットしたり、バトルも出来るんだよ、それに世界一を決める大会もあるし…」
フリードはそんな私の話を驚いたり笑ったりと表情を変えながらも真剣に聞いてくれていた。
「ユイの世界でも形は違うがポケモンは大人気なんだな。」
「うん。ポケモンは多くの人から愛されてるんだよ。」
「そうか……羨ましいな。」
「え?」
私が聞き返すと、彼はふっと微笑んだ。そして星空を見上げると言った。
「俺はこの世界しか知らないからな。ユイみたいに別の世界があるなんて考えた事もなかったよ。」
確かに、この世界に生きる人達にとってはそれが当たり前なのだろう。
でも、この世界の当たり前をとても愛おしく思うのは私が異世界から来たからだろうか。それともこの美しいポケモンの世界に魅了されてしまったからだろうか?
「ユイはいつか、元の世界に戻るのか?」
フリードにそう問われて少し考え込む。
心ではこの世界で生きると決めている、しかし、家族や友達、同僚…誰にも何も言わずここに来てしまった。
帰らなければならない理由もある。
私は思わず黙り込んでしまった。
すると、夜空にきらりと光るものが視界に入る。
流れ星だ。
「おっ、流れ星か。」
フリードも同じように気づいたようで空を見ている。
「そうだ、願い事…」
その時ふと短冊に書いた自分の願い事を思い出した。
後輩に急かされて深く考えず書いたかもしれないが、それは私の本心だった。
今はただ、それがずっと続くようにと願うだけだ。
(ポケモンと冒険がしたい)と。
どうか、この世界を生きられますように
。そんな思いを込めて手を合わせると目を閉じた。
ずっとこうして大好きなポケモン達と過ごしたい。
フリード達と、フリードと、ずっと一緒に旅をしていたい。
そんな思いが頭の中を駆け巡った。
そんな私をフリードは黙って見つめているだけだった。
暫くして目を開けると、彼の視線に気づく。
どうやらずっと見ていたようだ。恥ずかしくなって上半身を起こす。
だが、フリードは気にする様子もなく微笑んでいた。
「フリードは何か願い事した?」
「いや、してないな。」
「そうなの?意外…」
気になって聞いてみると彼は少し考え込んだ後答えた。
「夢は自分で叶えるものだからな。誰かに叶えてもらうものじゃないだろ?」
なるほど、彼らしい答えだと思った。
「願ってるだけじゃ、だめだよね。」
私はゆっくりと立ち上がり空を見上げた。
「私はポケモンが好き。ずっと旅を続けて、沢山のポケモンと仲良くなる。その為に…もっと強くなりたい。」
私の思いを聞いて彼は微笑む。
「お前ならできるさ。」
その一言で自然と自信が湧いてくる。
「オレも負けてられないな。」
そう言うと、彼は立ち上がって伸びをする。
そんな様子を見ながら私は微笑んだ。
もっと強くならないと。
夢は自分で叶えるもの。
私は自分の力で夢を叶えたい。
流れ星が過ぎ去った後の夜空には無数の星が輝いていた。
少し風に当たろうと思い立ち、甲板に出る。
座りこんで空をぼんやりと眺めていると、後ろから声をかけられた。
「眠れないのか?」
振り向くとそこにはフリードが立っていた。彼も寝付けなかったのだろうか。
その言葉に頷くと、彼は隣に座り一緒に空を眺め始めた。
暫く無言でいると、不意に彼が口を開く。
「アルセウスにカイオーガ…伝説のポケモンに合ったんだ。眠れないよな。」
「あの時はどうなる事かと思ったけど…。カイオーガが海に帰る事が出来たのもフリードやポケモン達のお陰だよ。」
私がそう言うと、フリードは首を横に振る。
「オレは何もしてない。ユイがカイオーガに必死に語り掛けたからだろ?」
「ううん、違うよ。あの時フリードが居てくれたから…皆がカイオーガを助けたいと思っていたから、カイオーガも心を落ち着かせる事ができたんだと思う。」
「……そうか、ならお互い様だな!」
フリードがそう言うと、私達は顔を見合わせて笑った。
そして再び夜空を見上げる。
「フリード、アルセウスが言ってた事、覚えてる?」
そう尋ねると、フリードは少し驚いたような顔をした後、優しい笑みを浮かべた。
「……あぁ。」
彼の返事を聞くと私はそっと目を閉じる。
この世界に来てから体験した、瞼の裏に焼き付いた光景を思い出しながら、私は口を開いた。
「前にアルフの遺跡で私とフリードが逸れた時があったよね?その時の事なんだけど……」
私はアルセウスに初めて出会った時の事をゆっくりと語り始める。
おそらく、力を分けて貰ったのはその時だろう。
私はアルセウスに託された「ポケモンを救う」という使命をフリードに打ち明ける。
彼は何も言わずただ黙って私の話を聞いてくれた。
「アルセウスに言われたからじゃなくて、これは私の意思でもあるんだ。」
「分かってる。」
静かに発せられた彼の言葉に思わず口を噤む。
「……え?」
私が聞き返すと、彼は真剣な表情でこちらを見つめてきた。
「今までずっと見てきたんだ。分かってるよ。」
その言葉を聞き、胸が熱くなるのを感じた。
嬉しくて涙が出そうになるのをぐっと堪えて私は笑顔を浮かべた。
「……ありがとう。」
「でも、一つ約束してくれ。絶対に無理はしないって。一人で抱え込まないって。」
真剣な眼差しを向ける彼に、私は頷く。
今なら打ち明けられるかもしれない。私のもう一つの秘密。
自分はこの世界の人間ではないのだと。
今しかないと思った。
勇気を出して言葉を紡いだ。
「実はもう一つ……。」
「ん?何だ?」
不思議そうに首を傾げる彼を見つめ返すと、深く深呼吸をする。
「アルセウスが何故私に使命を与えたのか。・・・いや、使命を与えるために呼ばれたんだよ。」
「呼ばれたって・・・どこから?」
その先を答えようとするが、出掛かった言葉は喉の奥に引っ掛かってなかなか出てこない。
いざ言葉にしようとすると、怖くてたまらなかったのだ。
受け入れてくれるだろうか?拒絶されるのではないだろうか?
そんな不安がまた頭を過ぎる。
しかし、ここで言わないと後悔する事になるかもしれない。
そう思った瞬間、自然と口が開いていた。
「私、別の世界から来たんだ。」
意を決して発した言葉。それは静かな夜の空気に溶けていった。
沈黙が流れる中、恐る恐る彼の顔を見ると、目を見開いて固まっていた。
やはり受け入れられなかったのだろうか。
そう思うと怖くなり、目を伏せる。
すると突然肩を掴まれ、顔を覗き込まれた。
驚いて顔を上げると至近距離に彼の顔があって心臓が跳ねる。
慌てて離れようとするが肩を掴む手に力が込められていて身動きが取れず、顔を逸らすことしかできなかった。
「きゅ、急にこんな事言ったって、信じてもらえないよね・・・」
俯きながらそう言うと、フリードは大きく溜息をついた。
呆れられてしまったのかもしれないと思うと悲しくなってくる。
やっぱり言わなければ良かったと思っていると、頭上から声が聞こえてきた。
「どこから来ようと、ユイはユイだろ!」
その声に驚き顔を上げれば、真剣な表情をした彼と目が合う。
その真っ直ぐな瞳に射抜かれて鼓動が激しくなった。
「そりゃ、急に違う世界から来た、何てこと言われて、今凄く混乱してる。・・・だけどな、前にも言っただろ?どこで産まれようと、どこから来ようと、ここにいるお前はお前なんだよ。」
その言葉に胸が熱くなった。涙が溢れそうになるのを必死に堪える。
そう言って微笑む彼につられて私も笑顔になる。
「フリード・・・ありがとう!」
「ユイは笑ってるのが一番似合うな!ほら、笑え笑え!!」
そう言いながら頬をむにっと引っ張られる。痛いけど嬉しい。
「もう!!やめてよー!!!」
笑いながら抵抗すると彼も楽しそうに笑っていた。
それを見て私も更に笑ってしまうのだった。
暫くして笑い終えると、フリードは空を見上げた。
釣られて見上げるとそこには吸い込まれそうな程真っ暗で、大きな夜空が広がっていた。煌めく星々が夜の黒をより一層引き立たせている。
その光景はとても美しく、幻想的だった。
まるで夢の中にいるかのような錯覚に陥る程だ。
「私のいた世界にはポケモンはいないんだ。」
ふと口を開くと、彼は興味深そうにこちらを見た。
「じゃあどんな生き物がいたんだ?まさか人間しかいないって事は無いよな。」
私は少し考えてから答える。
「うーん……そうだなぁ……」
それから私は様々な生き物について説明した。ペットとして飼える動物や動物園にいる動物、野生で見ることの出来る動物…あげるとキリがないが、色々と説明するうちに段々と楽しくなってきて夢中になって話し続けた。
博士の血が騒ぐのか、フリードも興味津々に私の話に聞き入っていた。
「じゃあ、何でユイはポケモンに詳しいんだ?」
「実は…」
私のいた世界でポケモンは架空の生き物だったと素直にフリードに告げる。
「ゲーム…そう来たか…」
「ゲームの中でもポケモン達をゲットしたり、バトルも出来るんだよ、それに世界一を決める大会もあるし…」
フリードはそんな私の話を驚いたり笑ったりと表情を変えながらも真剣に聞いてくれていた。
「ユイの世界でも形は違うがポケモンは大人気なんだな。」
「うん。ポケモンは多くの人から愛されてるんだよ。」
「そうか……羨ましいな。」
「え?」
私が聞き返すと、彼はふっと微笑んだ。そして星空を見上げると言った。
「俺はこの世界しか知らないからな。ユイみたいに別の世界があるなんて考えた事もなかったよ。」
確かに、この世界に生きる人達にとってはそれが当たり前なのだろう。
でも、この世界の当たり前をとても愛おしく思うのは私が異世界から来たからだろうか。それともこの美しいポケモンの世界に魅了されてしまったからだろうか?
「ユイはいつか、元の世界に戻るのか?」
フリードにそう問われて少し考え込む。
心ではこの世界で生きると決めている、しかし、家族や友達、同僚…誰にも何も言わずここに来てしまった。
帰らなければならない理由もある。
私は思わず黙り込んでしまった。
すると、夜空にきらりと光るものが視界に入る。
流れ星だ。
「おっ、流れ星か。」
フリードも同じように気づいたようで空を見ている。
「そうだ、願い事…」
その時ふと短冊に書いた自分の願い事を思い出した。
後輩に急かされて深く考えず書いたかもしれないが、それは私の本心だった。
今はただ、それがずっと続くようにと願うだけだ。
(ポケモンと冒険がしたい)と。
どうか、この世界を生きられますように
。そんな思いを込めて手を合わせると目を閉じた。
ずっとこうして大好きなポケモン達と過ごしたい。
フリード達と、フリードと、ずっと一緒に旅をしていたい。
そんな思いが頭の中を駆け巡った。
そんな私をフリードは黙って見つめているだけだった。
暫くして目を開けると、彼の視線に気づく。
どうやらずっと見ていたようだ。恥ずかしくなって上半身を起こす。
だが、フリードは気にする様子もなく微笑んでいた。
「フリードは何か願い事した?」
「いや、してないな。」
「そうなの?意外…」
気になって聞いてみると彼は少し考え込んだ後答えた。
「夢は自分で叶えるものだからな。誰かに叶えてもらうものじゃないだろ?」
なるほど、彼らしい答えだと思った。
「願ってるだけじゃ、だめだよね。」
私はゆっくりと立ち上がり空を見上げた。
「私はポケモンが好き。ずっと旅を続けて、沢山のポケモンと仲良くなる。その為に…もっと強くなりたい。」
私の思いを聞いて彼は微笑む。
「お前ならできるさ。」
その一言で自然と自信が湧いてくる。
「オレも負けてられないな。」
そう言うと、彼は立ち上がって伸びをする。
そんな様子を見ながら私は微笑んだ。
もっと強くならないと。
夢は自分で叶えるもの。
私は自分の力で夢を叶えたい。
流れ星が過ぎ去った後の夜空には無数の星が輝いていた。
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