ホウエン地方
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「なんと、ここでワシボンがジャローダを撃破!残りはついに一対一だ!」
決勝戦で残りの手持ちはお互い一対一、この状況に今会場は大いに沸いている。
「さすがだね、スバルくん。」
「そっちこそ。」
スバルくんはそう言うと、ジャローダをボールへと戻した。
「いけ、ゼブライカ!」
スバルくんが次に繰り出したのは、なんとワシボンが苦手とする電気タイプのゼブライカだ。
「相性は最悪か・・・」
でも、こう言う展開の方が倒し甲斐がある。
「ワシボン!かげぶんしん!」
ワシボンは素早い動きで分身をつくりだす。
「ゼブライカ、ほうでん分身ごと攻撃しろ!」
スバルくんの指示にゼブライカは戸惑うことなく従うと、電気を周りの全てへ電撃を放った。
本物のワシボンへも命中してしまい、ワシボンは空中から打ち落とされる形となってしまう。
「ワシボン!」
キャップとの練習の時に懸念していた電気タイプの対策・・・実はまだ対抗出来るような技がない。
ただ、一つを除いては・・・。
ワシボンは立ち上がる。体力はまだまだ残っているようだ。
しかし、ゼブライカが技を使ったわけではないのにワシボンの身体へビリリと電流が走り、その場から動けなくなってしまった。
「どうやら麻痺してしまったようだね。」
ほうでんと言う技は受けた相手を麻痺状態にする事がある。
ワシボンは技の追加効果を受けてしまったようだ。
「・・・・・・。」
「あれ?以外と冷静だね?」
「そう見える?」
ここが正念場だ。
一つでも選択を間違えたら負けるし、ワシボンがこれ以上麻痺で行動が出来なくなると恐らく負けてしまうだろう。
そんなギリギリの勝負にこそ、冷静である反面、胸の奥には熱いものがこみ上げてくる。
私はその熱を吐き出すかのように叫ぶ。
「いくよ、ワシボン!エアスラッシュ!」
私の指示と同時にワシボンは空高く舞い上がり、鋭い羽音を響かせながら空気を切り裂いた。
そして、空気の刃はそのまま一直線にゼブライカへ向かって飛んでいく。
「ゼブライカ、避けろ!!」
「今だ!からげんき!」
「何っ!」
状態異常になっていることで威力があがる対電気タイプ用の切り札。
エアスラッシュに対して回避行動をとろうとするゼブライカだったが、時すでに遅し。
上空からの急降下による勢いをつけた渾身のからげんきが炸裂した。
そのまま地面に叩きつけられたゼブライカは目を回し戦闘不能となる。
「勝者、ユイ選手!!!」
審判の声が響き渡ると共に観客席からは割れんばかりの歓声が上がった。
「・・・・・。」
勝ったんだ。あのスバルくん相手に。
喜びよりも驚きの方が勝ってしまい、しばらく呆然としてしまう。
ぼーっと立っている私へワシボンがものすごいスピードで飛んでくる。
「わっ!?」
あまりの速さに対応出来ず、そのまま押し倒される形でワシボンは私の上に乗ってしまった。
「ちょ、ちょっとワシボン落ち着いて・・・」
慌ててワシボンを引き剥がそうとするも、ワシボンの嬉しそうな表情を見てその気が変わった。
「ありがとう、よく頑張ったね。」
ワシボンを抱きしめると、ワシボンは嬉しそうに鳴き声を上げた。
「おめでとう、悔しいけど、いい試合だった。」
そこへスバルくんがやって来て倒れている私に手を差し出してくれた。
「あ、ありがとう・・・」
その手をとり立ち上がると、周囲から大きな拍手が巻き起こった。
「凄いぞー!二人とも良くやった!!」
「どっちも凄かったぜ!!ナイスファイト!!!」
観客達は私達の戦いを称えてくれているようだ。
私とスバルくんはお互いに顔を見合わせると笑った。
その後すぐに表彰式が行われ、一位の私のはなんと、多額の賞金が手渡された。
余りの金額にわなわなと震えていると観客席からライジングボルテッカーズの皆の大きな歓声が聞こえた。
このお金は自分に使うのではなく、私を拾ってここまで連れてきてくれた皆の為に使おうと、そう決めていた。
「優勝者のユイさんにはなんと副賞もありますよ!」
「副賞?」
そう言ってジョーイさんから手渡されたのはなんとビックリ、ポケモンのタマゴだった。
「えっ?タマゴ!?」
「何のタマゴなんですか?」
戸惑う私を余所にスバルくんがジョーイさんに訪ねると、彼女は綺麗に笑って「内緒です」と答えた。
大会は無事終了し、私は観戦していてくれたライジングボルテッカーズの皆と合流する。
タマゴを抱えながら皆に走り寄った途端、全員の手が私の頭に降りかかってくる。
「わっ!!ちょっ!」
「おめでとさん、さすがだな!」
「本当に優勝しちゃうなんて、やるじゃん!」
「かっこよかったよ!」
皆が口々にお祝いの言葉を言いながら、頭をなで回してもみくちゃにされる。
「あっ、ありがとう!皆の応援のおかげだから!」
私も負けじと言い返す。
すると、今度は全員が顔を見合わせて笑い出した。
「いや、それは違うだろ。」
「えっ?」
フリードはそう言うと戸惑う私の頭を今度は優しく撫でる。
「勝てたのは、ユイとポケモンが頑張ったからだよ。」
「・・・!」
フリードにそう言われた瞬間、胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
嬉しい・・・素直にそう思った。
自分の頑張りを認めてもらえる事がこんなに幸せな事だなんて知らなかった・・・。
「よし!そうと決まれば打ち上げだー!」
「「おーーっ!!」」
オリオがそう言えば他のみんなも楽しそうに騒ぎ出す。
そんな様子を見ているとなんだか私まで楽しくなってきた。
「ほら、主役が行かなくてどうするんだ?」
フリードにそう言われ、みんなの元へ踏み出そうとすると、後ろから呼び止められる。
「ユイさん。」
「スバルくん。」
振り返ると、そこには優しい笑みを浮かべたスバルくんがいた。
「今日は楽しかったよ、またバトルしてよね。」
「うん、こちらこそ。」
「まさか、お前も出場していたとはな。」
フリードがそう声をかけると、スバルくんは少しぶっきらぼうに「あの時はどーも。」と応える。
「バスラオ、ちゃんと強くなってたね。」
「まあ、約束したからね。」
そう言ってスバルくんは恥ずかしそうに頬をかく。
その様子を見て私は思わず笑みをこぼしてしまう。
「ねぇ、ユイさん。」
スバルくんは私に向き直ると真剣な
眼差しでこちらを見つめてきた。
「ユイさん。この人より俺と一緒に旅しようよ。」
「え?」
「はぁ?」
突然の思いがけない提案に驚いて思わず声を上げると、スバルくんはニヤリと笑う。
私の隣でフリードもぽかんと口を開けたままにしている。
「だって、俺となら絶対楽しいし、強い相手とも戦えるし、それに・・・」
「こら、あまりユイを困らせるな。」
私が戸惑っている間にもどんどん言葉を並べ立てる彼を見かねたフリードが止めに入る。
「なんて、冗談だよ。」
そう言ってスバルくんは笑うと、そのまま背中を向けて歩いていってしまった。
「じゃ、またね。次あったら俺が勝つからね。」
「望むところだよ。」
去っていく彼の背中に手を振ると、彼は手を振り返してくれてそのまま人混みの中へ消えていった。
その後ろ姿を眺めながらフリードはぽつりと呟く。
「しかし、変な奴に気に入られたな。」
「変な奴って…確かにひねくれてるかも知れないけど、あの時に比べたら良い子になったよ。」
「そうか?」
首を傾げる彼に苦笑しつつ頷く。
最初の出会いは最悪だったけど、今日戦ってみて彼がポケモン達を信頼していて、またポケモン達も彼を信頼していることが分かった。
「またバトルしたいな…。」
思わずそう呟くと、隣を歩いていたフリードが小さく笑った気がした。
「あ、あと、私はライジングボルテッカーズの一員だから、もし本気だったらちゃんと断るつもりだったからね。」
即答しなかったことに何か弁明をしておかねばと思い、フリードにそう伝えると、何故か笑われてしまった。
「そんなこと分かってるって。」
そう言って頭を撫でられる。
「もう、本気だからね!」
頬を膨らませながら言うと、フリードは笑いながら分かったと言った。
「そういえば、お前カントー出身だったのか。」
「え?あ、ああ…」
そう言えば選手登録の時に咄嗟にクチバシティ出身と言ってしまったのだった。
「何で黙ってたんだよ。」
「そ、それは…」
あの時はああ言ったが、以前フリードに出身地を聞かれたとき、私は答えられなかった。
問いかけに思わず言い淀んでしまう。
フリード達を騙しているみたいで後ろめたい気持ちがあったからだ。
本当は異世界から来たのだといますぐにでも伝えたい。
でも、言えない。
もし信じてもらえなかったらと思うと怖くて言えないのだ。
「まあ、別にいいけど。」
「えっ?」
てっきり問い詰められると思っていたのに拍子抜けしてしまう。
「お前がどこから来たとしても、お前はお前だろ。」
「!」
顔を上げると、そこには優しい笑みを浮かべるフリードがいた。
「フリード・・・」
彼の言葉に思わず泣きそうになったが、それを隠す様に下を向く。
フリードはそんな私を見ると困ったように頭をかいた。
「ま、まあ、その、あれだ。オレはお前の味方だから。何かあったら頼れよ。」
「・・・うん!」
彼の優しさに胸が熱くなる。
ああ、やっぱり好きだなぁと実感してしまう。
いつか必ず本当のことを話そう。
例えどんな結果になろうとも、このまま騙し続けるのは嫌だから。
翌日、私達はミナモシティを離れようとしていた。
ワシボンは私達を見送るためにアキラさんとブレイブアサギ号の側まで来てくれていた。
「ワシボンを大会に出して下さって本当にありがとうございました。」
「いえ、ワシボンのお陰で優勝出来たんです。お礼を言うのはこちらですよ。」
アキラさんは丁寧に頭を下げたので、こちらも真似るかのように頭を下げる。
「次はどちらに行かれるのですか?」
「次はトクサネシティへ向かいます。」
そう言うとアキラさんは驚いたような顔をする。
「今、ケイタが仕事でトクサネシティにいるそうなんです。」
「え?ケイタさんがですか?」
ケイタさんと言えば、カイナシティにある海の博物館の職員さんでアキラさんの友人。
ワシボンと一緒に旅をするきっかけになった人だ。
「ここ最近、野生のホエルオーが周辺の海に良く迷い込んでしまうみたいで、調査しているみたいです。」
「ホエルオーですか・・・」
「トクサネシティの周辺は岩や洞窟に囲まれているから水路が狭いんだ。ホエルオーほどのポケモンが来るような場所じゃないな。」
フリードが考え込むように顎に手を乗せながらそう答える。
「よし、オレ達も調査に参加させてもらおう。」
「ケイタには僕から言っておきます。」
「ありがとうございます。」
目的が明確に決まったことろで、ブレイブアサギ号は出航の準備を進める。
私もいよいよワシボンとお別れをする事となった。
「ワシボン、バトルすごくかっこよかったよ。頑張ってくれてありがとう。」
そう言ってアキラさんの肩に停まるワシボンを撫でると嬉しそうに返事が返ってくる。
「またあった時は一緒にバトルしようね。」
ここでお別れだと言うことがよく分かっていないのか、ワシボンは首をかしげてこちらを見ている。
汽笛が上がったので、もうまもなく船は陸地を離れる。
最後にフリードと私でアキラさんに別れの挨拶をするとブレイブアサギ号は動き始めた。
「ワシボン!元気でねー!」
私は大きく手を振って叫ぶ。
すると、ワシボンは大きく翼を広げて空高く舞い上がった。
そのまま船を追いかけるようにして飛び続ける。
「えっ?」
予想外の行動に驚いてしまう。ワシボンはそのまま船に追いつくと私の肩に停まった。
「どうしたの?」
不思議に思って声をかけると、ワシボンは私の頬に顔をすり寄せてきた。
そんなワシボンの様子にどうして良いか分からずにいると、スマホロトムが着信を告げる。
『ユイさん、すみません!』
「アキラさん!」
電話の相手はアキラさんだった。
『ワシボンはユイさんと旅がしたそうです。一緒に連れて行ってくれませんか?』
そう言うアキラさんの言葉にワシボンは元気良く鳴いて返事をする。
「いいんですか?」
『ええ、僕はあなたの様にワシボンをバトルで活躍させてあげられませんから。』
「でも、ワシボンもアキラさんと離れて大丈夫なんですか?」
『それは・・・大丈夫です!僕とワシボンは離れていても友達ですから!』
アキラさんは自信満々に答える。
ワシボンも心配ないと言わんばかりに大きな声で鳴いてくれた。
「分かりました。ワシボンの事は大切に育てます。」
『よろしくお願いしますね。』
そうして通話を終えると、港に佇むアキラさんの姿がだんだんと小さくなって行くのが分かった。
私達は見えなくなるまでずっとアキラさんへ手を振り続けたのだった。
決勝戦で残りの手持ちはお互い一対一、この状況に今会場は大いに沸いている。
「さすがだね、スバルくん。」
「そっちこそ。」
スバルくんはそう言うと、ジャローダをボールへと戻した。
「いけ、ゼブライカ!」
スバルくんが次に繰り出したのは、なんとワシボンが苦手とする電気タイプのゼブライカだ。
「相性は最悪か・・・」
でも、こう言う展開の方が倒し甲斐がある。
「ワシボン!かげぶんしん!」
ワシボンは素早い動きで分身をつくりだす。
「ゼブライカ、ほうでん分身ごと攻撃しろ!」
スバルくんの指示にゼブライカは戸惑うことなく従うと、電気を周りの全てへ電撃を放った。
本物のワシボンへも命中してしまい、ワシボンは空中から打ち落とされる形となってしまう。
「ワシボン!」
キャップとの練習の時に懸念していた電気タイプの対策・・・実はまだ対抗出来るような技がない。
ただ、一つを除いては・・・。
ワシボンは立ち上がる。体力はまだまだ残っているようだ。
しかし、ゼブライカが技を使ったわけではないのにワシボンの身体へビリリと電流が走り、その場から動けなくなってしまった。
「どうやら麻痺してしまったようだね。」
ほうでんと言う技は受けた相手を麻痺状態にする事がある。
ワシボンは技の追加効果を受けてしまったようだ。
「・・・・・・。」
「あれ?以外と冷静だね?」
「そう見える?」
ここが正念場だ。
一つでも選択を間違えたら負けるし、ワシボンがこれ以上麻痺で行動が出来なくなると恐らく負けてしまうだろう。
そんなギリギリの勝負にこそ、冷静である反面、胸の奥には熱いものがこみ上げてくる。
私はその熱を吐き出すかのように叫ぶ。
「いくよ、ワシボン!エアスラッシュ!」
私の指示と同時にワシボンは空高く舞い上がり、鋭い羽音を響かせながら空気を切り裂いた。
そして、空気の刃はそのまま一直線にゼブライカへ向かって飛んでいく。
「ゼブライカ、避けろ!!」
「今だ!からげんき!」
「何っ!」
状態異常になっていることで威力があがる対電気タイプ用の切り札。
エアスラッシュに対して回避行動をとろうとするゼブライカだったが、時すでに遅し。
上空からの急降下による勢いをつけた渾身のからげんきが炸裂した。
そのまま地面に叩きつけられたゼブライカは目を回し戦闘不能となる。
「勝者、ユイ選手!!!」
審判の声が響き渡ると共に観客席からは割れんばかりの歓声が上がった。
「・・・・・。」
勝ったんだ。あのスバルくん相手に。
喜びよりも驚きの方が勝ってしまい、しばらく呆然としてしまう。
ぼーっと立っている私へワシボンがものすごいスピードで飛んでくる。
「わっ!?」
あまりの速さに対応出来ず、そのまま押し倒される形でワシボンは私の上に乗ってしまった。
「ちょ、ちょっとワシボン落ち着いて・・・」
慌ててワシボンを引き剥がそうとするも、ワシボンの嬉しそうな表情を見てその気が変わった。
「ありがとう、よく頑張ったね。」
ワシボンを抱きしめると、ワシボンは嬉しそうに鳴き声を上げた。
「おめでとう、悔しいけど、いい試合だった。」
そこへスバルくんがやって来て倒れている私に手を差し出してくれた。
「あ、ありがとう・・・」
その手をとり立ち上がると、周囲から大きな拍手が巻き起こった。
「凄いぞー!二人とも良くやった!!」
「どっちも凄かったぜ!!ナイスファイト!!!」
観客達は私達の戦いを称えてくれているようだ。
私とスバルくんはお互いに顔を見合わせると笑った。
その後すぐに表彰式が行われ、一位の私のはなんと、多額の賞金が手渡された。
余りの金額にわなわなと震えていると観客席からライジングボルテッカーズの皆の大きな歓声が聞こえた。
このお金は自分に使うのではなく、私を拾ってここまで連れてきてくれた皆の為に使おうと、そう決めていた。
「優勝者のユイさんにはなんと副賞もありますよ!」
「副賞?」
そう言ってジョーイさんから手渡されたのはなんとビックリ、ポケモンのタマゴだった。
「えっ?タマゴ!?」
「何のタマゴなんですか?」
戸惑う私を余所にスバルくんがジョーイさんに訪ねると、彼女は綺麗に笑って「内緒です」と答えた。
大会は無事終了し、私は観戦していてくれたライジングボルテッカーズの皆と合流する。
タマゴを抱えながら皆に走り寄った途端、全員の手が私の頭に降りかかってくる。
「わっ!!ちょっ!」
「おめでとさん、さすがだな!」
「本当に優勝しちゃうなんて、やるじゃん!」
「かっこよかったよ!」
皆が口々にお祝いの言葉を言いながら、頭をなで回してもみくちゃにされる。
「あっ、ありがとう!皆の応援のおかげだから!」
私も負けじと言い返す。
すると、今度は全員が顔を見合わせて笑い出した。
「いや、それは違うだろ。」
「えっ?」
フリードはそう言うと戸惑う私の頭を今度は優しく撫でる。
「勝てたのは、ユイとポケモンが頑張ったからだよ。」
「・・・!」
フリードにそう言われた瞬間、胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
嬉しい・・・素直にそう思った。
自分の頑張りを認めてもらえる事がこんなに幸せな事だなんて知らなかった・・・。
「よし!そうと決まれば打ち上げだー!」
「「おーーっ!!」」
オリオがそう言えば他のみんなも楽しそうに騒ぎ出す。
そんな様子を見ているとなんだか私まで楽しくなってきた。
「ほら、主役が行かなくてどうするんだ?」
フリードにそう言われ、みんなの元へ踏み出そうとすると、後ろから呼び止められる。
「ユイさん。」
「スバルくん。」
振り返ると、そこには優しい笑みを浮かべたスバルくんがいた。
「今日は楽しかったよ、またバトルしてよね。」
「うん、こちらこそ。」
「まさか、お前も出場していたとはな。」
フリードがそう声をかけると、スバルくんは少しぶっきらぼうに「あの時はどーも。」と応える。
「バスラオ、ちゃんと強くなってたね。」
「まあ、約束したからね。」
そう言ってスバルくんは恥ずかしそうに頬をかく。
その様子を見て私は思わず笑みをこぼしてしまう。
「ねぇ、ユイさん。」
スバルくんは私に向き直ると真剣な
眼差しでこちらを見つめてきた。
「ユイさん。この人より俺と一緒に旅しようよ。」
「え?」
「はぁ?」
突然の思いがけない提案に驚いて思わず声を上げると、スバルくんはニヤリと笑う。
私の隣でフリードもぽかんと口を開けたままにしている。
「だって、俺となら絶対楽しいし、強い相手とも戦えるし、それに・・・」
「こら、あまりユイを困らせるな。」
私が戸惑っている間にもどんどん言葉を並べ立てる彼を見かねたフリードが止めに入る。
「なんて、冗談だよ。」
そう言ってスバルくんは笑うと、そのまま背中を向けて歩いていってしまった。
「じゃ、またね。次あったら俺が勝つからね。」
「望むところだよ。」
去っていく彼の背中に手を振ると、彼は手を振り返してくれてそのまま人混みの中へ消えていった。
その後ろ姿を眺めながらフリードはぽつりと呟く。
「しかし、変な奴に気に入られたな。」
「変な奴って…確かにひねくれてるかも知れないけど、あの時に比べたら良い子になったよ。」
「そうか?」
首を傾げる彼に苦笑しつつ頷く。
最初の出会いは最悪だったけど、今日戦ってみて彼がポケモン達を信頼していて、またポケモン達も彼を信頼していることが分かった。
「またバトルしたいな…。」
思わずそう呟くと、隣を歩いていたフリードが小さく笑った気がした。
「あ、あと、私はライジングボルテッカーズの一員だから、もし本気だったらちゃんと断るつもりだったからね。」
即答しなかったことに何か弁明をしておかねばと思い、フリードにそう伝えると、何故か笑われてしまった。
「そんなこと分かってるって。」
そう言って頭を撫でられる。
「もう、本気だからね!」
頬を膨らませながら言うと、フリードは笑いながら分かったと言った。
「そういえば、お前カントー出身だったのか。」
「え?あ、ああ…」
そう言えば選手登録の時に咄嗟にクチバシティ出身と言ってしまったのだった。
「何で黙ってたんだよ。」
「そ、それは…」
あの時はああ言ったが、以前フリードに出身地を聞かれたとき、私は答えられなかった。
問いかけに思わず言い淀んでしまう。
フリード達を騙しているみたいで後ろめたい気持ちがあったからだ。
本当は異世界から来たのだといますぐにでも伝えたい。
でも、言えない。
もし信じてもらえなかったらと思うと怖くて言えないのだ。
「まあ、別にいいけど。」
「えっ?」
てっきり問い詰められると思っていたのに拍子抜けしてしまう。
「お前がどこから来たとしても、お前はお前だろ。」
「!」
顔を上げると、そこには優しい笑みを浮かべるフリードがいた。
「フリード・・・」
彼の言葉に思わず泣きそうになったが、それを隠す様に下を向く。
フリードはそんな私を見ると困ったように頭をかいた。
「ま、まあ、その、あれだ。オレはお前の味方だから。何かあったら頼れよ。」
「・・・うん!」
彼の優しさに胸が熱くなる。
ああ、やっぱり好きだなぁと実感してしまう。
いつか必ず本当のことを話そう。
例えどんな結果になろうとも、このまま騙し続けるのは嫌だから。
翌日、私達はミナモシティを離れようとしていた。
ワシボンは私達を見送るためにアキラさんとブレイブアサギ号の側まで来てくれていた。
「ワシボンを大会に出して下さって本当にありがとうございました。」
「いえ、ワシボンのお陰で優勝出来たんです。お礼を言うのはこちらですよ。」
アキラさんは丁寧に頭を下げたので、こちらも真似るかのように頭を下げる。
「次はどちらに行かれるのですか?」
「次はトクサネシティへ向かいます。」
そう言うとアキラさんは驚いたような顔をする。
「今、ケイタが仕事でトクサネシティにいるそうなんです。」
「え?ケイタさんがですか?」
ケイタさんと言えば、カイナシティにある海の博物館の職員さんでアキラさんの友人。
ワシボンと一緒に旅をするきっかけになった人だ。
「ここ最近、野生のホエルオーが周辺の海に良く迷い込んでしまうみたいで、調査しているみたいです。」
「ホエルオーですか・・・」
「トクサネシティの周辺は岩や洞窟に囲まれているから水路が狭いんだ。ホエルオーほどのポケモンが来るような場所じゃないな。」
フリードが考え込むように顎に手を乗せながらそう答える。
「よし、オレ達も調査に参加させてもらおう。」
「ケイタには僕から言っておきます。」
「ありがとうございます。」
目的が明確に決まったことろで、ブレイブアサギ号は出航の準備を進める。
私もいよいよワシボンとお別れをする事となった。
「ワシボン、バトルすごくかっこよかったよ。頑張ってくれてありがとう。」
そう言ってアキラさんの肩に停まるワシボンを撫でると嬉しそうに返事が返ってくる。
「またあった時は一緒にバトルしようね。」
ここでお別れだと言うことがよく分かっていないのか、ワシボンは首をかしげてこちらを見ている。
汽笛が上がったので、もうまもなく船は陸地を離れる。
最後にフリードと私でアキラさんに別れの挨拶をするとブレイブアサギ号は動き始めた。
「ワシボン!元気でねー!」
私は大きく手を振って叫ぶ。
すると、ワシボンは大きく翼を広げて空高く舞い上がった。
そのまま船を追いかけるようにして飛び続ける。
「えっ?」
予想外の行動に驚いてしまう。ワシボンはそのまま船に追いつくと私の肩に停まった。
「どうしたの?」
不思議に思って声をかけると、ワシボンは私の頬に顔をすり寄せてきた。
そんなワシボンの様子にどうして良いか分からずにいると、スマホロトムが着信を告げる。
『ユイさん、すみません!』
「アキラさん!」
電話の相手はアキラさんだった。
『ワシボンはユイさんと旅がしたそうです。一緒に連れて行ってくれませんか?』
そう言うアキラさんの言葉にワシボンは元気良く鳴いて返事をする。
「いいんですか?」
『ええ、僕はあなたの様にワシボンをバトルで活躍させてあげられませんから。』
「でも、ワシボンもアキラさんと離れて大丈夫なんですか?」
『それは・・・大丈夫です!僕とワシボンは離れていても友達ですから!』
アキラさんは自信満々に答える。
ワシボンも心配ないと言わんばかりに大きな声で鳴いてくれた。
「分かりました。ワシボンの事は大切に育てます。」
『よろしくお願いしますね。』
そうして通話を終えると、港に佇むアキラさんの姿がだんだんと小さくなって行くのが分かった。
私達は見えなくなるまでずっとアキラさんへ手を振り続けたのだった。
