ホウエン地方
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ムロタウンから出発したブレイブアサギ号は街を越え、時には森や海も越え、休まず空を飛び続けた。
目的地はカイナシティ。随分と遅くなってしまったが、ケイタさんから託されたワシボンを友人のアキラさんの元へと連れて行くのだ。
遅くなってしまってきっとアキラさんは心配していることだろう。
当のワシボンはと言うと、甲板で海を眺めている私の肩で休憩中だ。
もうすっかり怪我も良くなって空も自由に飛ぶことが出来る。
この子は最初から何故か私に良く懐いていた。
一緒に調査にも行ったし、バトルもした。
そう思うと別れも寂しく感じる。
だけど、この子はアキラさんのポケモンだし・・・仕方ないよね。
優しく撫でるとワシボンは気持ちよさそうにしてくれた。
「もうすぐミナモシティだな。」
「フリード。」
振り返るとフリードとキャップが立っていた。
フリードは私の隣に並んで肩に乗っているワシボンを見た。
「こいつ、本当にお前になついてるよな。」
「うん、なんでだろうね?」
「・・・さあ?でもお前と一緒にいて楽しいんじゃないか?」
「そうかな・・・」
確かに私といる時かどうかは分からないが、ワシボンはいつも楽しそうだ。
しかし何故懐いているのが私なのかという疑問はまだ残っている。
「そうだといいな。」
ワシボンは飛び立つと、バタフリーと追いかけっこを始めた。
微笑ましい姿に思わず笑みが零れる。
「見えたぞ。」
陸地の最果て、海の始まり。その言葉の通り、真下に見えたミナモシティは陸続きを越えた先の大きな海の玄関口の様な街だった。
見下ろす街は活気に溢れ、ビル等の大きな建物が建ち並ぶ大都市でもありながら奥の岬からは大きな海が広がっている。
ブレイブアサギ号はゆっくりと高度を下げ、ミナモシティへと降り立った。
あらかじめケイタさんからアキラさんの住所を聞いていたので真っ直ぐその場所へ向かったが、どうやら留守のようだ。
一応チャイムを鳴らしてみるものの反応はない。
「いないな。」
「そうだね。どこかで時間でもつぶそうかな。」
「なら、ミナモデパートにでも行くか。」
「フリードは私に付き合わなくても、自由に街を回っていいんだよ?」
「いや、ワシボンの事は俺も任されたからな。最後まで付き合うよ。」
「そっか、ありがとう。」
フリードの言葉にお礼を返すと、私達はミナモデパートへと向かった。
ゲームでも見たとおり、ミナモデパートは都会にしかないような巨大なデパートだ。何か催し物があるみたいで、屋上には大きなポケモンバルーンが浮かんでいた。
それに見とれていると入るぞ、とフリードが促してきたので慌てて後を追った。
中に入ると様々な商品が並んでいる。
服や靴、鞄、アクセサリー等様々だ。
フリードは何やら興味深げに眺めている。
何を見ているのか目で追うと、
「あっ!バトルアイテム!」
そのお店には、こだわりアイテムやゴツゴツメットにきあいのタスキ…ポケモン対戦で良く使われるアイテムがずらりと並んでいた。
「ユイも興味があるのか?」
「バトルアイテムって色んな効果があって面白いよね!」
「お、流石ユイ!分かってるな!」
「でも、あんまりアイテム使ってるポケモン居ないよね?」
「ああ、本格的なバトル大会だと使ってる奴も多いが、普段は使わない人の方が多いんじゃないか?」
エンジョイとガチの違いだろうか。
それはゲームでもリアルでも同じなんだな…と思いながら、商品を眺める。
「そういえば、デボンコーポレーションのクロダさんに招待された、ミナモシティのバトル大会、何かアイテムは使わないのか?」
このタイミングでミナモシティに立ち寄ったのも、バトル大会の開催日が近いからだ。
確かに、大会でアイテムを使う選手が多いなら持たせておくのもありかもしれないな。
「まだしばらく時間があるし、じっくり考えるよ。」
「そうだな、ゆっくり決めるといいさ。」
私達は店内を一通り見て回った後に、別のフロアへ足を運んだ。
そこには広いフードコートがあり、沢山の人とポケモンが食事をしていた。
「ユイ、腹が減ったんじゃないのか?何か買うか。」
「だ、大丈夫です!」
フリードがまたからかう物だから、私は恥ずかしくなって俯いたまま答えた。
すると、きゅるるる…と、私のお腹が小さく鳴った。
「ううっ…。」
「ははは、だろうな。よし、じゃあ飯にしようぜ。」
丁度お昼時だったこともあり、私たちは食事を取ることにした。
料理を頼もうと列に並んでいると、どこかで見た事のある顔が通り過ぎた。
あれ……?
見覚えのある横顔だった。あれは確か……
じっと見過ぎていたせいか、向こうもこちらに気づいたようでバチッと視線がかち合った。
「誰かと思ったら、あの時のお姉さんじゃん。」
「ああっ!」
思い出した。ジョウト地方でバスラオをかけてヌオーとバトルした少年だ。彼はあの時と同じ様に、上着のフードを深く被っている。
「あの時はどうも。」
「あはは…どうも…」
私が会釈をすると、フードを外し、あの時と相も変わらず生意気そうに少年はニッと笑う。
「バスラオは元気?」
「ああ、強くなったよ。なんなら今からバトルする?」
「相変わらずだな・・・」
強気の姿勢に苦笑いがでる。
しかし、バスラオを今も大事にしている様子がうかがえる。彼の元へ返して良かったと今やっと思えた。
「それにしても、君もミナモシティに来てたなんてね。」
「お姉さんこそ。まさか、数日後のバトル大会に出るわけじゃないよね。」
「・・・えっ!?」
「えっ・・・出るの?」
少年が驚いた様子で私を見るので思わず頷いた。
そして同時に彼も出場するのかと驚く。
「ふぅん。この間は負けたけど、もう負けるような俺じゃないから。」
「私だって負けない。」
「そうこなくっちゃ。」
不敵な笑みを浮かべる彼に、私も笑みがこぼれる。
「じゃあ、期待してるから。」
「うん、お互い頑張ろう。」
そう言って、私達は別れた。
あ、そう言えば彼の名前、また聞きそびれてしまったな……と思いながら、フリードの元へ向かうのだった。
「ユイ、お前何も買わなかったのか?」
「・・・あ。」
昼食を取ると私達はまたアキラさんの家を訪れた。
チャイムを鳴らすもやはり反応はない。
もう夕方だし……仕方ないかな……と思っていると、後ろから声がかかった。
「どうされたんですか?・・・って、ワシボンじゃないか!」
振り返るとメガネをかけた優しそうな青年が立っていた。
ワシボンは今まで止まっていた私の肩から飛び降りると、今度は彼の肩に飛び移った。
「あなたがアキラさんですか?」
「はいそうです。ユイさんとフリードさんですね。話はケイタから聞いています。」
アキラさんは見た目通りの誠実そうな話し方をしていた。
「ワシボンを助けてくだっさって、しかもここまで連れてきて下さって本当にありがとうございました。」
「いえ、旅のついでですから。」
「それでも、助かりました、ワシボンが無事で本当に良かった…」
そういうアキラさんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。きっととても心配していたのだろう。
「何故ワシボンは土地勘のないホウエンで手紙を運んでいたのですか?」
「それは…っと、立ち話もなんですし、中へどうぞ。」
アキラさんは家のドアを開け、私達を招き入れた。
中に入ると1羽のスバメが奥から飛んできて、アキラさんの肩に飛び乗った。
「わぁ!スバメ!」
「今育てているんです。」
リビングに通されると、壁に貼られた沢山の写真が目に入った。どの写真にもアキラさんと鳥ポケモンが写っている。
「ピジョットにムクホークにタイカイデンに…どれも鳥ポケモンばかりですね。」
フリードがそう言うと、アキラさんは快く答えた。
「ええ、実は家が代々鳥使いをしているんです。」
「なるほど、それでこんなに沢山育てていらっしゃるんですね。」
鳥使いか…私がいた世界で言う鷹匠のようなものだろうか。
写真のアキラさんは腕にヨルノズクを載せている。
「かっこいいですね…」
「えっ?あ、ありがとうございます…」
私が褒めると何故かアキラは少し照れたように頭を掻いた。
「…とりあえず、本題に入りましょうか。」
フリードが咳払いをし、話題を変える。
「そうですね、まず、この子ですが……」
私達はソファに腰掛け、向かい側にアキラさんが座る。
「手紙を運ぶ仕事をいずれは任せようとは思っていたのですが、今は訓練はしていなかったんです。」
「つまり、ケイタさんへの手紙の運搬はワシボンにさせるつもりは無かったという事ですか?」
そうフリードが聞くと、アキラさんは困ったように頷いた。
「ええ、本当は他のポケモンが行く予定だったのですが、どうやらワシボンが勝手に持ち出してしまったみたいで…」
「そうだったんですね。」
「あの、ところで、どうしてワシボンは手紙を運ぶ訓練をしていなかったのですか?」
「ワシボンはどちらかと言うと、そういう仕事よりもバトルの方に興味があるみたいなんです。でも、僕はバトルが苦手なのでワシボンを活躍させてあげる事が出来なくて・・・」
何もせず家にいる事が詰まらなくて、手紙を持って飛び出したのだろう、とアキラさんは行った。
確かに、好きなことも出来ずただ時間が経っていくと言うのも、ワシボンにとってはもどかしかっただろう。
アキラさんがそう言うと、ワシボンは元気よく鳴いて今度は私の肩に飛び乗った。
「だから、あの時バトルに参加してきたんだね…」
私は肩に乗ったワシボンを撫でながら納得した。
「ワシボンがバトルしたのですか?」
アキラさんにそ問われ、私はポケモンハンターと戦った時の事を話す。
…少しだけ、隣のフリードからの視線が痛かったが…
「ユイさんはバトルが強いのですね!」
「い、いえ!ポケモン達の実力です!」
強いだなんてとんでもない。
バトルは楽しいという事に最近気付いたが、実力はまだまだ伴っていない。
「それに、ポケモンバトルが楽しくて…」
「なるほど、では数日後のバトル大会にも出られるんですか?」
「はい、出場する予定です。」
「大きな大会なんですか?」
フリードが尋ねるとアキラさんは頷く。
「はい、デボンコーポレーションが主催なだけあってかなりの数のトレーナーが出場するみたいです!」
「なら、大会は数日はかかるんですね。」
「いえ、3対3なので2日程で終わるはず…」
「3対3!?」
私が立ち上がって言うと、アキラさんは、そうですが…と疑問符を浮かべる。
「3対3というと、ポケモンが3体いないと出場出来ないってことですか…?」
「そのはずですが…」
まずい、私の手持ちはバタフリーとヌオーのみ。
このままでは出場できない。
「ユイは手持ちが2体しかいないんです。」
フリードが苦笑いしながらアキラさんに説明する。
すると、私の肩に止まっていたワシボンが、大きな鳴き声を上げる。
まるで自分も出る!と言っているかのようだった。
「ワシボンも出たいの…?」
私がそう問えばまた大きな返事が返ってくる。
「ユイさんさえ良ければ、ワシボンも出場させてやってください。」
「いいんですか?」
アキラさんは、はい、と頷いく。
「こんなに生き生きとしているワシボンを見るのは久しぶりなんです。寧ろ、僕の方からよろしくお願いします。」
丁寧に頭を下げる彼に、こちらこそよろしくお願いします、と私も頭を下げた。
これで、数日後のバトル大会に出場するのはバタフリー、ヌオー、ワシボンの三体に決まった。
アキラさんの家の庭に訓練用の広いスペースがあるらしく、大会まではそちらを貸してもらえる事になったので、今からでも作戦を考えて特訓に移りたい。
出場する以上誰にも負けたくない、もちろんあの男の子にも
目的地はカイナシティ。随分と遅くなってしまったが、ケイタさんから託されたワシボンを友人のアキラさんの元へと連れて行くのだ。
遅くなってしまってきっとアキラさんは心配していることだろう。
当のワシボンはと言うと、甲板で海を眺めている私の肩で休憩中だ。
もうすっかり怪我も良くなって空も自由に飛ぶことが出来る。
この子は最初から何故か私に良く懐いていた。
一緒に調査にも行ったし、バトルもした。
そう思うと別れも寂しく感じる。
だけど、この子はアキラさんのポケモンだし・・・仕方ないよね。
優しく撫でるとワシボンは気持ちよさそうにしてくれた。
「もうすぐミナモシティだな。」
「フリード。」
振り返るとフリードとキャップが立っていた。
フリードは私の隣に並んで肩に乗っているワシボンを見た。
「こいつ、本当にお前になついてるよな。」
「うん、なんでだろうね?」
「・・・さあ?でもお前と一緒にいて楽しいんじゃないか?」
「そうかな・・・」
確かに私といる時かどうかは分からないが、ワシボンはいつも楽しそうだ。
しかし何故懐いているのが私なのかという疑問はまだ残っている。
「そうだといいな。」
ワシボンは飛び立つと、バタフリーと追いかけっこを始めた。
微笑ましい姿に思わず笑みが零れる。
「見えたぞ。」
陸地の最果て、海の始まり。その言葉の通り、真下に見えたミナモシティは陸続きを越えた先の大きな海の玄関口の様な街だった。
見下ろす街は活気に溢れ、ビル等の大きな建物が建ち並ぶ大都市でもありながら奥の岬からは大きな海が広がっている。
ブレイブアサギ号はゆっくりと高度を下げ、ミナモシティへと降り立った。
あらかじめケイタさんからアキラさんの住所を聞いていたので真っ直ぐその場所へ向かったが、どうやら留守のようだ。
一応チャイムを鳴らしてみるものの反応はない。
「いないな。」
「そうだね。どこかで時間でもつぶそうかな。」
「なら、ミナモデパートにでも行くか。」
「フリードは私に付き合わなくても、自由に街を回っていいんだよ?」
「いや、ワシボンの事は俺も任されたからな。最後まで付き合うよ。」
「そっか、ありがとう。」
フリードの言葉にお礼を返すと、私達はミナモデパートへと向かった。
ゲームでも見たとおり、ミナモデパートは都会にしかないような巨大なデパートだ。何か催し物があるみたいで、屋上には大きなポケモンバルーンが浮かんでいた。
それに見とれていると入るぞ、とフリードが促してきたので慌てて後を追った。
中に入ると様々な商品が並んでいる。
服や靴、鞄、アクセサリー等様々だ。
フリードは何やら興味深げに眺めている。
何を見ているのか目で追うと、
「あっ!バトルアイテム!」
そのお店には、こだわりアイテムやゴツゴツメットにきあいのタスキ…ポケモン対戦で良く使われるアイテムがずらりと並んでいた。
「ユイも興味があるのか?」
「バトルアイテムって色んな効果があって面白いよね!」
「お、流石ユイ!分かってるな!」
「でも、あんまりアイテム使ってるポケモン居ないよね?」
「ああ、本格的なバトル大会だと使ってる奴も多いが、普段は使わない人の方が多いんじゃないか?」
エンジョイとガチの違いだろうか。
それはゲームでもリアルでも同じなんだな…と思いながら、商品を眺める。
「そういえば、デボンコーポレーションのクロダさんに招待された、ミナモシティのバトル大会、何かアイテムは使わないのか?」
このタイミングでミナモシティに立ち寄ったのも、バトル大会の開催日が近いからだ。
確かに、大会でアイテムを使う選手が多いなら持たせておくのもありかもしれないな。
「まだしばらく時間があるし、じっくり考えるよ。」
「そうだな、ゆっくり決めるといいさ。」
私達は店内を一通り見て回った後に、別のフロアへ足を運んだ。
そこには広いフードコートがあり、沢山の人とポケモンが食事をしていた。
「ユイ、腹が減ったんじゃないのか?何か買うか。」
「だ、大丈夫です!」
フリードがまたからかう物だから、私は恥ずかしくなって俯いたまま答えた。
すると、きゅるるる…と、私のお腹が小さく鳴った。
「ううっ…。」
「ははは、だろうな。よし、じゃあ飯にしようぜ。」
丁度お昼時だったこともあり、私たちは食事を取ることにした。
料理を頼もうと列に並んでいると、どこかで見た事のある顔が通り過ぎた。
あれ……?
見覚えのある横顔だった。あれは確か……
じっと見過ぎていたせいか、向こうもこちらに気づいたようでバチッと視線がかち合った。
「誰かと思ったら、あの時のお姉さんじゃん。」
「ああっ!」
思い出した。ジョウト地方でバスラオをかけてヌオーとバトルした少年だ。彼はあの時と同じ様に、上着のフードを深く被っている。
「あの時はどうも。」
「あはは…どうも…」
私が会釈をすると、フードを外し、あの時と相も変わらず生意気そうに少年はニッと笑う。
「バスラオは元気?」
「ああ、強くなったよ。なんなら今からバトルする?」
「相変わらずだな・・・」
強気の姿勢に苦笑いがでる。
しかし、バスラオを今も大事にしている様子がうかがえる。彼の元へ返して良かったと今やっと思えた。
「それにしても、君もミナモシティに来てたなんてね。」
「お姉さんこそ。まさか、数日後のバトル大会に出るわけじゃないよね。」
「・・・えっ!?」
「えっ・・・出るの?」
少年が驚いた様子で私を見るので思わず頷いた。
そして同時に彼も出場するのかと驚く。
「ふぅん。この間は負けたけど、もう負けるような俺じゃないから。」
「私だって負けない。」
「そうこなくっちゃ。」
不敵な笑みを浮かべる彼に、私も笑みがこぼれる。
「じゃあ、期待してるから。」
「うん、お互い頑張ろう。」
そう言って、私達は別れた。
あ、そう言えば彼の名前、また聞きそびれてしまったな……と思いながら、フリードの元へ向かうのだった。
「ユイ、お前何も買わなかったのか?」
「・・・あ。」
昼食を取ると私達はまたアキラさんの家を訪れた。
チャイムを鳴らすもやはり反応はない。
もう夕方だし……仕方ないかな……と思っていると、後ろから声がかかった。
「どうされたんですか?・・・って、ワシボンじゃないか!」
振り返るとメガネをかけた優しそうな青年が立っていた。
ワシボンは今まで止まっていた私の肩から飛び降りると、今度は彼の肩に飛び移った。
「あなたがアキラさんですか?」
「はいそうです。ユイさんとフリードさんですね。話はケイタから聞いています。」
アキラさんは見た目通りの誠実そうな話し方をしていた。
「ワシボンを助けてくだっさって、しかもここまで連れてきて下さって本当にありがとうございました。」
「いえ、旅のついでですから。」
「それでも、助かりました、ワシボンが無事で本当に良かった…」
そういうアキラさんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。きっととても心配していたのだろう。
「何故ワシボンは土地勘のないホウエンで手紙を運んでいたのですか?」
「それは…っと、立ち話もなんですし、中へどうぞ。」
アキラさんは家のドアを開け、私達を招き入れた。
中に入ると1羽のスバメが奥から飛んできて、アキラさんの肩に飛び乗った。
「わぁ!スバメ!」
「今育てているんです。」
リビングに通されると、壁に貼られた沢山の写真が目に入った。どの写真にもアキラさんと鳥ポケモンが写っている。
「ピジョットにムクホークにタイカイデンに…どれも鳥ポケモンばかりですね。」
フリードがそう言うと、アキラさんは快く答えた。
「ええ、実は家が代々鳥使いをしているんです。」
「なるほど、それでこんなに沢山育てていらっしゃるんですね。」
鳥使いか…私がいた世界で言う鷹匠のようなものだろうか。
写真のアキラさんは腕にヨルノズクを載せている。
「かっこいいですね…」
「えっ?あ、ありがとうございます…」
私が褒めると何故かアキラは少し照れたように頭を掻いた。
「…とりあえず、本題に入りましょうか。」
フリードが咳払いをし、話題を変える。
「そうですね、まず、この子ですが……」
私達はソファに腰掛け、向かい側にアキラさんが座る。
「手紙を運ぶ仕事をいずれは任せようとは思っていたのですが、今は訓練はしていなかったんです。」
「つまり、ケイタさんへの手紙の運搬はワシボンにさせるつもりは無かったという事ですか?」
そうフリードが聞くと、アキラさんは困ったように頷いた。
「ええ、本当は他のポケモンが行く予定だったのですが、どうやらワシボンが勝手に持ち出してしまったみたいで…」
「そうだったんですね。」
「あの、ところで、どうしてワシボンは手紙を運ぶ訓練をしていなかったのですか?」
「ワシボンはどちらかと言うと、そういう仕事よりもバトルの方に興味があるみたいなんです。でも、僕はバトルが苦手なのでワシボンを活躍させてあげる事が出来なくて・・・」
何もせず家にいる事が詰まらなくて、手紙を持って飛び出したのだろう、とアキラさんは行った。
確かに、好きなことも出来ずただ時間が経っていくと言うのも、ワシボンにとってはもどかしかっただろう。
アキラさんがそう言うと、ワシボンは元気よく鳴いて今度は私の肩に飛び乗った。
「だから、あの時バトルに参加してきたんだね…」
私は肩に乗ったワシボンを撫でながら納得した。
「ワシボンがバトルしたのですか?」
アキラさんにそ問われ、私はポケモンハンターと戦った時の事を話す。
…少しだけ、隣のフリードからの視線が痛かったが…
「ユイさんはバトルが強いのですね!」
「い、いえ!ポケモン達の実力です!」
強いだなんてとんでもない。
バトルは楽しいという事に最近気付いたが、実力はまだまだ伴っていない。
「それに、ポケモンバトルが楽しくて…」
「なるほど、では数日後のバトル大会にも出られるんですか?」
「はい、出場する予定です。」
「大きな大会なんですか?」
フリードが尋ねるとアキラさんは頷く。
「はい、デボンコーポレーションが主催なだけあってかなりの数のトレーナーが出場するみたいです!」
「なら、大会は数日はかかるんですね。」
「いえ、3対3なので2日程で終わるはず…」
「3対3!?」
私が立ち上がって言うと、アキラさんは、そうですが…と疑問符を浮かべる。
「3対3というと、ポケモンが3体いないと出場出来ないってことですか…?」
「そのはずですが…」
まずい、私の手持ちはバタフリーとヌオーのみ。
このままでは出場できない。
「ユイは手持ちが2体しかいないんです。」
フリードが苦笑いしながらアキラさんに説明する。
すると、私の肩に止まっていたワシボンが、大きな鳴き声を上げる。
まるで自分も出る!と言っているかのようだった。
「ワシボンも出たいの…?」
私がそう問えばまた大きな返事が返ってくる。
「ユイさんさえ良ければ、ワシボンも出場させてやってください。」
「いいんですか?」
アキラさんは、はい、と頷いく。
「こんなに生き生きとしているワシボンを見るのは久しぶりなんです。寧ろ、僕の方からよろしくお願いします。」
丁寧に頭を下げる彼に、こちらこそよろしくお願いします、と私も頭を下げた。
これで、数日後のバトル大会に出場するのはバタフリー、ヌオー、ワシボンの三体に決まった。
アキラさんの家の庭に訓練用の広いスペースがあるらしく、大会まではそちらを貸してもらえる事になったので、今からでも作戦を考えて特訓に移りたい。
出場する以上誰にも負けたくない、もちろんあの男の子にも
