ホウエン地方
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「ヌオー!」
「キャップ!頼んだ!」
ヌオーはボールの中から、キャップはフリードの肩から飛び降りた。
プテラはいわ・ひこうタイプ。こちら側が有利だ。
プテラはまたおおきな鳴き声をあげてこちらに飛びかかってくる。
「エレキボール!」
先に動いたのはキャップだ。尻尾の先に電気の球を作り出し、一気にプテラへ放出する。
プテラはキャップの攻撃をかわしてそのまま上空へ飛び上がる。
そして急降下してきて、キャップに向かって大きな爪を振り下ろす。
「ヌオー!まもる!」
ヌオーはプテラとキャップの間に割って入ると、プテラの攻撃を防いだ。
「そのままれいとうパンチ!」
隙が出来たプテラにヌオーの技が命中する。
「よし!」
「いつの間にこんな戦い方が出来るようになったんだ?」
この間のポケモンハンターの戦法が上手くはまったようだ。
思わずフリードに褒められるが、今はそんな場合ではない。
「ヌオー、また来るよ!」
プテラが叫ぶと、その周りに岩の塊が発生し、プテラは一気にそれを放った。げんしのちからだ。
「アイアンテールで弾くんだ!」
今度はキャップが鋼をまとった尻尾で岩を弾き飛ばす。
「ヌオーはアクアテール!」
渾身のアクアテールはまた飛び上がることで躱されてしまった。
この天井の高い研究室の中、物理技を命中させるのは至難の業だ。
「ヌオー!ねっとう!」
上を飛び回るプテラに物理技は無駄だと判断したのか、ユイは攻撃を遠距離技にシフトした。
先程のまもるを使った戦術もそうだが、見ない間にかなりバトルが上達している。
手強いポケモンハンターに勝ったのだ。
だからといってこの間のように無理をして良いいいわけにはならない。
今だって、時間がなかったから連れて行く形にはなってしまったが、ユイをこの場に連れてきたくはなかった。
しかし、ユイはもう、強い。それを認めざるを得ない。
「キャップ、かみなりだ!」
素早く飛び回るプテラには一向に攻撃が当たらない。
周りの機械から出ている電磁波がキャップのでんきタイプの攻撃に影響しているせいか。
このままでは奴はいずれ外に出てしまう。そうなれば被害は大きいだろう。
ヌオーも技が当たらず苦しい状況、どうしたものか・・・と、ふとユイの方を見る。
見間違いかと思った。こんなにも苦しい状況にもかかわらず、彼女は笑っていた。
まるで何が楽しい事を見つけたかのように。
その笑顔を見た時、オレは彼女のことを何も知らなかったのだと気付いた。
何故いつも危険な状況に自ら突っ込んでいくのか。何故ポケモンを幸せにしたいのか。
なぜ、今までの自分のことを話さないのか。
彼女についてもっと知りたいと思うと同時に、彼女には危うさを感じる。
プテラに攻撃を命中させる良い方法を思いついた。
こんな状況だけど、ダメなんだけど、今はただ、目の前のバトルが楽しくて仕方がない。
「フリード!プテラの動きを惹き付けて置いて欲しい!」
「…!何か良い策でもあるのか?」
任せて!と自信満々に申し出ると、フリードから、分かった、と返事が戻ってくる。
「キャップ!影分身でプテラの注意を惹くんだ!」
キャップはそれに大きく鳴いて返事をする。
「ヌオー!着いてきて!」
私は作戦を実行する為に、ヌオーを
連れて走り出した。
あいつ、一体何をするつもりだ?
ユイの動きも気になるが、当然惹き付けているプテラからの攻撃も来るので、まずはこちらに集中する事にした。
「キャップ!もう一度かみなり!」
やはり、機械の影響で狙いは逸れてしまう。
プテラは再度攻撃を仕掛けてきた。
「…!とっしんか!キャップ、交わしてアイアンテールだ!」
キャップは軽やかにプテラの突進を交わすとプテラに一撃を叩き込んだ。
流石にキャップと言えど、あの一撃を受けたらまずい。
だが、先程のれいとうパンチ同様、あまり効いていない様だ。
やはり、ダメージを与えるには物理技では弱いか…
プテラは復元装置の天辺に降り立つと翼を大きく広げてこちらを威嚇してくる。
何か手はないか…そう考えていると、突然、上から声が降ってくる。
「ヌオー!プテラの背中に乗って!」
そんなユイの指示の声と共にヌオーが装置の真上、天井の鉄骨部分にいるユイの横を飛び降りる。
ヌオーは綺麗にプテラの背中に着地すると、プテラにしがみついた。
プテラは突然ヌオーが飛び付いてきた事により、パニックになっている。
「フリード!!」
一瞬、理解が追いつかなかったが、名前を呼ばれ、オレが今何をすべきか気付いた。
そういう事か…!
「キャップ!最大出力のかみなりだ!」
かみなりのパワーを上げれば周りの機械の影響は関係ない。
とてつもなく大きなかみなりがプテラとヌオーへと降り注いだ。
プテラはヌオーを乗せたまま力尽き地面へと落ちていく。
ヌオーはプテラの墜落に巻き込まれない様に背中から飛び出すと、着地時に受け身を取りそのままゴロゴロと丸まり地面を転がっていく。
なんともシュールな光景だ。
バトルの時とはまるで違う姿に飼い主を想像してしまい、思わず笑いを堪える。
ユイの作戦は少々無茶だが見事だった。
ヌオーはみずタイプだが、じめんタイプも持っている。
当然、じめんタイプはでんきタイプの攻撃を無効にできるので、キャップのかみなりはヌオーには当たらずプテラのみが技を受けることになる。
咄嗟のこの状況でそんな作戦が思いつくとは。流石としか言いようがない。
「まったく、やってくれるぜ。」
安全の為、プテラは気絶しているうちに研究所のモンスターボールに収めておきたい。
そう思った瞬間、プテラは勢いよく立ち上がると、横一線にはかいこうせんを放った。
まずい、その方向には…!
プテラから放たれる光線は間一髪、ユイの真横を通過し、そのまま天窓を破壊した。
しかし、突然の攻撃に驚いてバランスを崩したユイはそのまま足を踏み外し、落下していく。
驚いた拍子に後ずさった足は空を切る。
しまった…!そう思った時には既に遅く、私は地面に向かって落下して行く。
「……!!!」
「ユイ!!!」
咄嗟に目をつぶって衝撃に備えたが、それが来ることはなかった。
ゆっくりと目を開けて状況を把握する。
地面に衝突する寸前で、フリードが受け止めてくれたらしい。
「大丈夫か!?」
「あ、ありがとう……」
「全く……お前はいつも危ないことばっかりしやがって」
「ご、ごめんなさい。でも、ほら、プテラを倒せたし…!」
「はぁ、本当にお前ってやつは・・・」呆れ顔のフリードに苦笑いを返す。
そんな話をしていると、ヌオーとキャップが駆け寄ってくる。
2人ともありがとう、と声を掛けようとすると、2匹がこちらをじーっと見つめている事に気付く。
何?何か変だろうか?あまりに凝視されているので、自分の、周りを確認するとその原因に気付く。
「あの、フリード。」
「なんだ?」
「降ろして欲しい…。」
私はフリードに抱き止められたまま…つまり、所謂、お姫様抱っこされている状況だ。
「あ、あぁ…悪い。」
そう言って、私を降ろすと、彼はそっぽを向いてしまった。
私、そんなに重たかっただろうか…。いや、そんな事より今は目の前の問題を片付けなければ。
「お2人とも!大丈夫ですか!?」
クロダさんがこちらに駆け寄ってくるが、フリードが手を広げてそれを制す。
プテラが目を覚ましたのだ。
ゆっくりと目を開き、起き上がった。
だが、バトルのダメージもあってか、立てるのがやっと、と言うところだろうか。
先程の様に怒ったりはしておらず、落ち着いているが、まだ私たちを警戒している様子だった。
プテラに近付こうと一歩踏み出すと、またさっきの頭痛に襲われる。今度は先程よりも強い痛みだ。
「…っ!」
「ユイ!」
痛みに耐えられずにその場にしゃがみ込むと、プテラも苦しそうにしているのが見えた。
そうか、これはプテラの痛みなんだ。そう思うと、自然と身体が動いた。
「なっ!」
ゆっくりとプテラに歩み寄る私をフリードは驚きはしていたが、引き止めることは無かった。
プテラの前まで歩くと、コツンと額をプテラのそれと合わせる。そして目を閉じると頭の中に映像が流れ込んでくる。
前よりもその映像はずっと鮮明に見えた。
それはまるで映画の様に、プテラの記憶を見ている様だ。
見えたのは、そう。空から降ってくる巨大な隕石。
燃えるように赤いそれはプテラの見上げる空を朱色に染め上げる。
隕石が落下した森は炎を上げ、その火は瞬く間に広がってゆく。
住処を燃やされたポケモン達が次々と森から海へと逃げてゆく。
しかし、水が苦手なポケモンはただただ割れる地面の上に取り残されてしまう。
やがてプテラの真上に無数の隕石が降り注ぐ。
そこで私は額をプテラから離す。
振り返るとフリードが心配そうにこちらを見ていたので、微笑んで返す。
ゆっくりプテラに向き直る。
「あの時、海に逃げ込んだポケモンは生き延びる事ができたけど、あなたのように水が苦手なポケモンは…」
そこまで言うと、プテラの瞳が悲しそうに揺れる。
「目が覚めると、知らない場所で不安だったよね。だから怒っていたんだね。」
ゆっくりプテラを撫で、敵意が無いことを示す。
「突然住む場所奪われて、人間に勝手に生み出されて…辛かったよね。」
「ユイ……?」
「これからは、あなたは自由だよ。遠い場所に行ってもいいし、ここに残ってもいい。…ですよね。クロダさん。」
「ええ、責任は私が取ります。」
「ありがとうございます。」
プテラはじっとこちらを見つめていたが、しばらくすると翼を広げる。
「またね。プテラ。」
もう目が合っても頭痛は起きなかった。
プテラは大きな鳴き声を上げると、空高く飛び立っていった。
それがプテラの選択だった。
一体どこへ行ったのだろう。
それはプテラにしか分からない。
ただ言えることは、もうこの研究所には戻ってこないという事と、プテラはもう過去の苦しみを受けなくても良いと言う事だ。
「よかったのか?」
「うん。またきっと、どこかで会える気がするから。」
プテラが飛び立っていった空を見つめる。
するとフリードが小さく笑うので首を傾げると彼は言う。
「お前らしいよ。」そう言って私の頭をポンっと撫でる。
「本当になんとお礼を申し上げれば良いか…」
プテラはどこかへ行ってしまったが、他に復元された化石ポケモン達はデボンコーポレーションで責任を持って面倒を見るらしい。
今回のことでクロダさんはお礼をしたいと申し出てくれたが、私は断った。
「お礼なんてそんな……」
「…では、こちらはどうでしょう。」
クロダさんはそう言うと、封筒を私に差し出した。
「何ですか?」
「ユイさんの見事なポケモンバトルを拝見しました。是非、その腕をバトル大会で奮っていただきたいと思いまして。」
「バトル大会…ですか?」
「ええ、少し先にはなるのですが、ミナモシティでデボンコーポレーション主催のバトル大会があるのですが、もし宜しければ参加してみませんか?賞金も出ますよ。」
「えっ!本当ですか!?」
「はい、本当です。それに、優勝すれば、特別な賞品も貰うことが出来ますよ。」
バトル大会、参加してみたいな。
ここ数日、色々な相手とポケモンバトルを重ねて思ったのは、バトルが楽しいという事だ。
折角の申し出だけど、私達は色々な地方を旅をしている身なので私一人の都合で留まることは出来ない。みんなに迷惑をかけてしまう。
「あの、折角なんですが…」
「参加するだろ?」
「えっ?」
断りの言葉を制したのはフリードだった。驚く私をよそにフリードは続ける。
「ユイの強さを試す絶好の機会じゃないか?」
「でも、私だけの都合で、いいのかな…」
「皆がダメと言うとでも思ってるのか?」
確かにみんななら反対はしないだろうけど、迷惑を掛けてしまうかもしれないと思うと躊躇ってしまう。
そんな私を見てフリードは言う。
「たまにはチームの一員として、皆に甘えてもいいんじゃないか?それに、ミナモシティには用事があるしな。」
確かに、ワシボンをトレーナーの元へに返す為にミナモシティには行く予定だった。
「わかった……じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかな。」
「よし、決まりだな。」
こうして、私たちはクロダさんから大会の招待状を受け取ると、お礼を言って、カナズミシティを後にした。
船の自室に戻り、1人になると、プテラに触れた時に見えた映像を思い出す。
何故、私はあれを見ることが出来たのだろう。
考えても答えは出ない。
ベッドに横になり目を閉じると、いつの間にか眠ってしまった。
「キャップ!頼んだ!」
ヌオーはボールの中から、キャップはフリードの肩から飛び降りた。
プテラはいわ・ひこうタイプ。こちら側が有利だ。
プテラはまたおおきな鳴き声をあげてこちらに飛びかかってくる。
「エレキボール!」
先に動いたのはキャップだ。尻尾の先に電気の球を作り出し、一気にプテラへ放出する。
プテラはキャップの攻撃をかわしてそのまま上空へ飛び上がる。
そして急降下してきて、キャップに向かって大きな爪を振り下ろす。
「ヌオー!まもる!」
ヌオーはプテラとキャップの間に割って入ると、プテラの攻撃を防いだ。
「そのままれいとうパンチ!」
隙が出来たプテラにヌオーの技が命中する。
「よし!」
「いつの間にこんな戦い方が出来るようになったんだ?」
この間のポケモンハンターの戦法が上手くはまったようだ。
思わずフリードに褒められるが、今はそんな場合ではない。
「ヌオー、また来るよ!」
プテラが叫ぶと、その周りに岩の塊が発生し、プテラは一気にそれを放った。げんしのちからだ。
「アイアンテールで弾くんだ!」
今度はキャップが鋼をまとった尻尾で岩を弾き飛ばす。
「ヌオーはアクアテール!」
渾身のアクアテールはまた飛び上がることで躱されてしまった。
この天井の高い研究室の中、物理技を命中させるのは至難の業だ。
「ヌオー!ねっとう!」
上を飛び回るプテラに物理技は無駄だと判断したのか、ユイは攻撃を遠距離技にシフトした。
先程のまもるを使った戦術もそうだが、見ない間にかなりバトルが上達している。
手強いポケモンハンターに勝ったのだ。
だからといってこの間のように無理をして良いいいわけにはならない。
今だって、時間がなかったから連れて行く形にはなってしまったが、ユイをこの場に連れてきたくはなかった。
しかし、ユイはもう、強い。それを認めざるを得ない。
「キャップ、かみなりだ!」
素早く飛び回るプテラには一向に攻撃が当たらない。
周りの機械から出ている電磁波がキャップのでんきタイプの攻撃に影響しているせいか。
このままでは奴はいずれ外に出てしまう。そうなれば被害は大きいだろう。
ヌオーも技が当たらず苦しい状況、どうしたものか・・・と、ふとユイの方を見る。
見間違いかと思った。こんなにも苦しい状況にもかかわらず、彼女は笑っていた。
まるで何が楽しい事を見つけたかのように。
その笑顔を見た時、オレは彼女のことを何も知らなかったのだと気付いた。
何故いつも危険な状況に自ら突っ込んでいくのか。何故ポケモンを幸せにしたいのか。
なぜ、今までの自分のことを話さないのか。
彼女についてもっと知りたいと思うと同時に、彼女には危うさを感じる。
プテラに攻撃を命中させる良い方法を思いついた。
こんな状況だけど、ダメなんだけど、今はただ、目の前のバトルが楽しくて仕方がない。
「フリード!プテラの動きを惹き付けて置いて欲しい!」
「…!何か良い策でもあるのか?」
任せて!と自信満々に申し出ると、フリードから、分かった、と返事が戻ってくる。
「キャップ!影分身でプテラの注意を惹くんだ!」
キャップはそれに大きく鳴いて返事をする。
「ヌオー!着いてきて!」
私は作戦を実行する為に、ヌオーを
連れて走り出した。
あいつ、一体何をするつもりだ?
ユイの動きも気になるが、当然惹き付けているプテラからの攻撃も来るので、まずはこちらに集中する事にした。
「キャップ!もう一度かみなり!」
やはり、機械の影響で狙いは逸れてしまう。
プテラは再度攻撃を仕掛けてきた。
「…!とっしんか!キャップ、交わしてアイアンテールだ!」
キャップは軽やかにプテラの突進を交わすとプテラに一撃を叩き込んだ。
流石にキャップと言えど、あの一撃を受けたらまずい。
だが、先程のれいとうパンチ同様、あまり効いていない様だ。
やはり、ダメージを与えるには物理技では弱いか…
プテラは復元装置の天辺に降り立つと翼を大きく広げてこちらを威嚇してくる。
何か手はないか…そう考えていると、突然、上から声が降ってくる。
「ヌオー!プテラの背中に乗って!」
そんなユイの指示の声と共にヌオーが装置の真上、天井の鉄骨部分にいるユイの横を飛び降りる。
ヌオーは綺麗にプテラの背中に着地すると、プテラにしがみついた。
プテラは突然ヌオーが飛び付いてきた事により、パニックになっている。
「フリード!!」
一瞬、理解が追いつかなかったが、名前を呼ばれ、オレが今何をすべきか気付いた。
そういう事か…!
「キャップ!最大出力のかみなりだ!」
かみなりのパワーを上げれば周りの機械の影響は関係ない。
とてつもなく大きなかみなりがプテラとヌオーへと降り注いだ。
プテラはヌオーを乗せたまま力尽き地面へと落ちていく。
ヌオーはプテラの墜落に巻き込まれない様に背中から飛び出すと、着地時に受け身を取りそのままゴロゴロと丸まり地面を転がっていく。
なんともシュールな光景だ。
バトルの時とはまるで違う姿に飼い主を想像してしまい、思わず笑いを堪える。
ユイの作戦は少々無茶だが見事だった。
ヌオーはみずタイプだが、じめんタイプも持っている。
当然、じめんタイプはでんきタイプの攻撃を無効にできるので、キャップのかみなりはヌオーには当たらずプテラのみが技を受けることになる。
咄嗟のこの状況でそんな作戦が思いつくとは。流石としか言いようがない。
「まったく、やってくれるぜ。」
安全の為、プテラは気絶しているうちに研究所のモンスターボールに収めておきたい。
そう思った瞬間、プテラは勢いよく立ち上がると、横一線にはかいこうせんを放った。
まずい、その方向には…!
プテラから放たれる光線は間一髪、ユイの真横を通過し、そのまま天窓を破壊した。
しかし、突然の攻撃に驚いてバランスを崩したユイはそのまま足を踏み外し、落下していく。
驚いた拍子に後ずさった足は空を切る。
しまった…!そう思った時には既に遅く、私は地面に向かって落下して行く。
「……!!!」
「ユイ!!!」
咄嗟に目をつぶって衝撃に備えたが、それが来ることはなかった。
ゆっくりと目を開けて状況を把握する。
地面に衝突する寸前で、フリードが受け止めてくれたらしい。
「大丈夫か!?」
「あ、ありがとう……」
「全く……お前はいつも危ないことばっかりしやがって」
「ご、ごめんなさい。でも、ほら、プテラを倒せたし…!」
「はぁ、本当にお前ってやつは・・・」呆れ顔のフリードに苦笑いを返す。
そんな話をしていると、ヌオーとキャップが駆け寄ってくる。
2人ともありがとう、と声を掛けようとすると、2匹がこちらをじーっと見つめている事に気付く。
何?何か変だろうか?あまりに凝視されているので、自分の、周りを確認するとその原因に気付く。
「あの、フリード。」
「なんだ?」
「降ろして欲しい…。」
私はフリードに抱き止められたまま…つまり、所謂、お姫様抱っこされている状況だ。
「あ、あぁ…悪い。」
そう言って、私を降ろすと、彼はそっぽを向いてしまった。
私、そんなに重たかっただろうか…。いや、そんな事より今は目の前の問題を片付けなければ。
「お2人とも!大丈夫ですか!?」
クロダさんがこちらに駆け寄ってくるが、フリードが手を広げてそれを制す。
プテラが目を覚ましたのだ。
ゆっくりと目を開き、起き上がった。
だが、バトルのダメージもあってか、立てるのがやっと、と言うところだろうか。
先程の様に怒ったりはしておらず、落ち着いているが、まだ私たちを警戒している様子だった。
プテラに近付こうと一歩踏み出すと、またさっきの頭痛に襲われる。今度は先程よりも強い痛みだ。
「…っ!」
「ユイ!」
痛みに耐えられずにその場にしゃがみ込むと、プテラも苦しそうにしているのが見えた。
そうか、これはプテラの痛みなんだ。そう思うと、自然と身体が動いた。
「なっ!」
ゆっくりとプテラに歩み寄る私をフリードは驚きはしていたが、引き止めることは無かった。
プテラの前まで歩くと、コツンと額をプテラのそれと合わせる。そして目を閉じると頭の中に映像が流れ込んでくる。
前よりもその映像はずっと鮮明に見えた。
それはまるで映画の様に、プテラの記憶を見ている様だ。
見えたのは、そう。空から降ってくる巨大な隕石。
燃えるように赤いそれはプテラの見上げる空を朱色に染め上げる。
隕石が落下した森は炎を上げ、その火は瞬く間に広がってゆく。
住処を燃やされたポケモン達が次々と森から海へと逃げてゆく。
しかし、水が苦手なポケモンはただただ割れる地面の上に取り残されてしまう。
やがてプテラの真上に無数の隕石が降り注ぐ。
そこで私は額をプテラから離す。
振り返るとフリードが心配そうにこちらを見ていたので、微笑んで返す。
ゆっくりプテラに向き直る。
「あの時、海に逃げ込んだポケモンは生き延びる事ができたけど、あなたのように水が苦手なポケモンは…」
そこまで言うと、プテラの瞳が悲しそうに揺れる。
「目が覚めると、知らない場所で不安だったよね。だから怒っていたんだね。」
ゆっくりプテラを撫で、敵意が無いことを示す。
「突然住む場所奪われて、人間に勝手に生み出されて…辛かったよね。」
「ユイ……?」
「これからは、あなたは自由だよ。遠い場所に行ってもいいし、ここに残ってもいい。…ですよね。クロダさん。」
「ええ、責任は私が取ります。」
「ありがとうございます。」
プテラはじっとこちらを見つめていたが、しばらくすると翼を広げる。
「またね。プテラ。」
もう目が合っても頭痛は起きなかった。
プテラは大きな鳴き声を上げると、空高く飛び立っていった。
それがプテラの選択だった。
一体どこへ行ったのだろう。
それはプテラにしか分からない。
ただ言えることは、もうこの研究所には戻ってこないという事と、プテラはもう過去の苦しみを受けなくても良いと言う事だ。
「よかったのか?」
「うん。またきっと、どこかで会える気がするから。」
プテラが飛び立っていった空を見つめる。
するとフリードが小さく笑うので首を傾げると彼は言う。
「お前らしいよ。」そう言って私の頭をポンっと撫でる。
「本当になんとお礼を申し上げれば良いか…」
プテラはどこかへ行ってしまったが、他に復元された化石ポケモン達はデボンコーポレーションで責任を持って面倒を見るらしい。
今回のことでクロダさんはお礼をしたいと申し出てくれたが、私は断った。
「お礼なんてそんな……」
「…では、こちらはどうでしょう。」
クロダさんはそう言うと、封筒を私に差し出した。
「何ですか?」
「ユイさんの見事なポケモンバトルを拝見しました。是非、その腕をバトル大会で奮っていただきたいと思いまして。」
「バトル大会…ですか?」
「ええ、少し先にはなるのですが、ミナモシティでデボンコーポレーション主催のバトル大会があるのですが、もし宜しければ参加してみませんか?賞金も出ますよ。」
「えっ!本当ですか!?」
「はい、本当です。それに、優勝すれば、特別な賞品も貰うことが出来ますよ。」
バトル大会、参加してみたいな。
ここ数日、色々な相手とポケモンバトルを重ねて思ったのは、バトルが楽しいという事だ。
折角の申し出だけど、私達は色々な地方を旅をしている身なので私一人の都合で留まることは出来ない。みんなに迷惑をかけてしまう。
「あの、折角なんですが…」
「参加するだろ?」
「えっ?」
断りの言葉を制したのはフリードだった。驚く私をよそにフリードは続ける。
「ユイの強さを試す絶好の機会じゃないか?」
「でも、私だけの都合で、いいのかな…」
「皆がダメと言うとでも思ってるのか?」
確かにみんななら反対はしないだろうけど、迷惑を掛けてしまうかもしれないと思うと躊躇ってしまう。
そんな私を見てフリードは言う。
「たまにはチームの一員として、皆に甘えてもいいんじゃないか?それに、ミナモシティには用事があるしな。」
確かに、ワシボンをトレーナーの元へに返す為にミナモシティには行く予定だった。
「わかった……じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おうかな。」
「よし、決まりだな。」
こうして、私たちはクロダさんから大会の招待状を受け取ると、お礼を言って、カナズミシティを後にした。
船の自室に戻り、1人になると、プテラに触れた時に見えた映像を思い出す。
何故、私はあれを見ることが出来たのだろう。
考えても答えは出ない。
ベッドに横になり目を閉じると、いつの間にか眠ってしまった。
