影が薄い子の
「別行動なう」
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杉元たちと別行動を取るようになり数日。
合流地点こそ合わせてはいるが、あいつらがいつ来るかはわからない。まあ、何事もなく……ってのは恐らく無理だろうから、無事に辿り着いてくれれば良いと思う。
「そうは思わねえかい?名前嬢」
「はあ…」
吸い込んだ煙を吐き出しながら隣に座る彼女へ同意を求めれば、訝しげな返事が返ってくる。ちらと横目に見た顔も声色そのままの表情で、内心苦笑いを零した。
「名前嬢は心配じゃないのか?」
「アシリパさんはともかく、他の三人は化物並みの強さですし…問題はないかと」
心配するだけ無駄というか…と真顔で答える様子から、少なくとも戦闘力の強さに関しては信頼しているようだ。それに僅かながらに驚いた俺が思わず「へえ…」と声を洩らすと、またあの他人を信じていない目でじとりと見上げてきた。
「なんですか…」
「ああ、いや。アンタが素直にあいつらのこと認めるから驚いてな」
「…素直も何も、あれを強いと言わずなんと言えばいいんですか」
「ははは、確かにな。でも名前嬢も強いだろう」
「はは、ご冗談を」
『あいつも連れていく』
はっきりと嘲笑してみせる彼女の口元と脳裏に浮かぶ男の口元が重なる。
『彼女もか? だが…』
『あいつの強さは少なくとも足でまといにはなるまいよ。アンタも見てきただろう?』
『それはそうだが…説明もなしに連れていくつもりか?』
『話そうが話さまいが、あの女には関係ないさ。金塊目的で旅している訳じゃないからな』
『あいつは、俺が行くところに勝手に着いてくるだけだ』
少し前に交わした男との会話を思い出す。あの男と彼女が親しげにしている様子は度々見ていたが、俺自身は彼女との関わりはほとんど無いに等しかった。だからこそ、今こうして俺自身の目で見極めようと思ったんだが…。
「なるほどな…」
金塊目的ではない、共に旅している奴らにも大した情は無い、あるとするならば……誰かが自分を殺してくれるんじゃないかという、薄昏い期待だけだ。
恐らく、現時点でそれを叶えてくれそうなのがあの男なのだろう。だから彼女は心を砕き、他の誰でもないあの男の傍に居るのだ。
(随分とたらしこんだものだ、あの男も)
飢えている彼女に欲しいものをちらつかせ、手駒にしようとしているのだから末恐ろしい。
……そんなだからか。思わず要らぬ父性が働いたのは。
「そんな謙遜するな、名前嬢」
「!?」
「アンタは十分強いさ。自信を持っていいと思うぞ」
隣でしゃがみこんでいた彼女に倣うよう自身もしゃがみこみ、近くなった頭を無遠慮に撫で回す。短い髪がそれでもボサボサになっていく様が可笑しくて、煙管を咥えた口元が自然に持ち上がるのがわかった。
「ちょ、何ですかいきなり…っ」明らかに動揺しているその声には返さず、ひたすらにただ笑う。
あまりにも可愛く、可哀想で、滑稽とも思う目的を掲げる彼女を共に連れていくことに、最早なんの異論も無い。
どちらにせよ、もう後戻りは出来ないのだ。そして行き着く先は、決して明るいそれではない。
だからこそ、
「大人しく殺されてくれるなよ、名前嬢」
彼女の足掻く様を、そしてその先にある最期を見届けてやりたいと思ったのだ。
……まあ、そんなこと言ってる俺が先に死ぬかもしれないがな。
「…わたしはともかく、キロランケさんこそ、家族を置いて逝っては駄目ですよ」
ははっ、どこまでわかって言ってるのやら。
父は可愛がる(哀れで愚かな、子供のような彼女を)
合流地点こそ合わせてはいるが、あいつらがいつ来るかはわからない。まあ、何事もなく……ってのは恐らく無理だろうから、無事に辿り着いてくれれば良いと思う。
「そうは思わねえかい?名前嬢」
「はあ…」
吸い込んだ煙を吐き出しながら隣に座る彼女へ同意を求めれば、訝しげな返事が返ってくる。ちらと横目に見た顔も声色そのままの表情で、内心苦笑いを零した。
「名前嬢は心配じゃないのか?」
「アシリパさんはともかく、他の三人は化物並みの強さですし…問題はないかと」
心配するだけ無駄というか…と真顔で答える様子から、少なくとも戦闘力の強さに関しては信頼しているようだ。それに僅かながらに驚いた俺が思わず「へえ…」と声を洩らすと、またあの他人を信じていない目でじとりと見上げてきた。
「なんですか…」
「ああ、いや。アンタが素直にあいつらのこと認めるから驚いてな」
「…素直も何も、あれを強いと言わずなんと言えばいいんですか」
「ははは、確かにな。でも名前嬢も強いだろう」
「はは、ご冗談を」
『あいつも連れていく』
はっきりと嘲笑してみせる彼女の口元と脳裏に浮かぶ男の口元が重なる。
『彼女もか? だが…』
『あいつの強さは少なくとも足でまといにはなるまいよ。アンタも見てきただろう?』
『それはそうだが…説明もなしに連れていくつもりか?』
『話そうが話さまいが、あの女には関係ないさ。金塊目的で旅している訳じゃないからな』
『あいつは、俺が行くところに勝手に着いてくるだけだ』
少し前に交わした男との会話を思い出す。あの男と彼女が親しげにしている様子は度々見ていたが、俺自身は彼女との関わりはほとんど無いに等しかった。だからこそ、今こうして俺自身の目で見極めようと思ったんだが…。
「なるほどな…」
金塊目的ではない、共に旅している奴らにも大した情は無い、あるとするならば……誰かが自分を殺してくれるんじゃないかという、薄昏い期待だけだ。
恐らく、現時点でそれを叶えてくれそうなのがあの男なのだろう。だから彼女は心を砕き、他の誰でもないあの男の傍に居るのだ。
(随分とたらしこんだものだ、あの男も)
飢えている彼女に欲しいものをちらつかせ、手駒にしようとしているのだから末恐ろしい。
……そんなだからか。思わず要らぬ父性が働いたのは。
「そんな謙遜するな、名前嬢」
「!?」
「アンタは十分強いさ。自信を持っていいと思うぞ」
隣でしゃがみこんでいた彼女に倣うよう自身もしゃがみこみ、近くなった頭を無遠慮に撫で回す。短い髪がそれでもボサボサになっていく様が可笑しくて、煙管を咥えた口元が自然に持ち上がるのがわかった。
「ちょ、何ですかいきなり…っ」明らかに動揺しているその声には返さず、ひたすらにただ笑う。
あまりにも可愛く、可哀想で、滑稽とも思う目的を掲げる彼女を共に連れていくことに、最早なんの異論も無い。
どちらにせよ、もう後戻りは出来ないのだ。そして行き着く先は、決して明るいそれではない。
だからこそ、
「大人しく殺されてくれるなよ、名前嬢」
彼女の足掻く様を、そしてその先にある最期を見届けてやりたいと思ったのだ。
……まあ、そんなこと言ってる俺が先に死ぬかもしれないがな。
「…わたしはともかく、キロランケさんこそ、家族を置いて逝っては駄目ですよ」
ははっ、どこまでわかって言ってるのやら。
父は可愛がる(哀れで愚かな、子供のような彼女を)