女性棋士さんの
しまだ
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「よいせっと……あ〜〜〜腰痛い、腕痺れた……」
もう何度目になるかわからない、自身の家へのお持ち帰り。そう言うと大分いかがわしさが出るが、生憎とそれは語弊である。
相手は、あの名前だ。理由はその一言に尽きる。
「すかー……」
「……ったく、悠長に寝ちゃってまあ」
ジジ臭い掛け声とともに敷いたままだった布団の上に落とした今も、此処に来るまでの移動時間も、一瞬たりとも目を覚ますどころか起きる素振りさえ見せなかった。
余程の爆睡、そしてそれに至ったのは、今日の対局とそれ以前の数日に及ぶ寝不足の所為。
いつもこうだ。呆れる程に、この女は全力をもって用意に挑み、全力をもって対局に臨む。他の奴らだって……勿論俺だってそうであり、彼女だけでは無いのであるが、何分──この女は加減というものを知らないのだ。
その結果がこのザマ……って訳なんだが。
「いつも思うんだが、化粧落とさなくて良いのか……?もういい歳だろうに……」
こっちの苦労なんて知りもしない当の本人は、ぐーすか寝息を立てている。
その、安心しきった寝顔に未だ張り付いている真っ赤な口紅。普段は化粧っ気なんてないこの女は、決まって対局の時のみばっちりと顔を作りこんでくる。着物に関しては〝ここ一番〟の時だけではあるが、それはまるで、本心を見られないようにする為の仮面のようで。
「……要らねぇよなあ。こんな仮面」
今、こんなものは。この場で、そんなものは。不要でしかない。
カーテンの引かれていない窓から、月明かりが注ぎ部屋の中を照らす。明かりに照らされたその寝顔は──嗚呼、その閉じられた下瞼に浮き上がる隈でさえ、いつ見ても美しい。
彼女の唇に引かれた紅を親指で雑に拭い、そのまま自身の唇をなぞる。
下着姿で、自身の布団に寝こける女。疚しい気持ちが無いなんて嘘だ。でも俺がこんな、子供地味た間接キスしか出来ないでいるのは。
「まだお前を、死なせる訳にはいかないんだ」
名字名前、二十八歳、A級八段棋士。
この女は──盤上に死に場所を求めている。
それを阻止する為に、俺らA級棋士は全力をもって彼女を叩き負かさなくてはならないのだ。
「……ん、開さんおはよう」
翌日、目を覚ました俺の目に映ったのは、見晴らしが良い事が自慢の窓枠に寄りかかり、開け放った窓から吹く風にその短い髪を遊ばせながら晴れた青空をバックに、こちらに微笑む女だった。
……まーた勝手にヒトのワイシャツ着やがって。
視覚的に、此処は素直にご馳走様と言うべきか呆れた溜め息とともに諭すべきか、寝起き早々俺の頭はフル回転を強いられるのだった。
もう何度目になるかわからない、自身の家へのお持ち帰り。そう言うと大分いかがわしさが出るが、生憎とそれは語弊である。
相手は、あの名前だ。理由はその一言に尽きる。
「すかー……」
「……ったく、悠長に寝ちゃってまあ」
ジジ臭い掛け声とともに敷いたままだった布団の上に落とした今も、此処に来るまでの移動時間も、一瞬たりとも目を覚ますどころか起きる素振りさえ見せなかった。
余程の爆睡、そしてそれに至ったのは、今日の対局とそれ以前の数日に及ぶ寝不足の所為。
いつもこうだ。呆れる程に、この女は全力をもって用意に挑み、全力をもって対局に臨む。他の奴らだって……勿論俺だってそうであり、彼女だけでは無いのであるが、何分──この女は加減というものを知らないのだ。
その結果がこのザマ……って訳なんだが。
「いつも思うんだが、化粧落とさなくて良いのか……?もういい歳だろうに……」
こっちの苦労なんて知りもしない当の本人は、ぐーすか寝息を立てている。
その、安心しきった寝顔に未だ張り付いている真っ赤な口紅。普段は化粧っ気なんてないこの女は、決まって対局の時のみばっちりと顔を作りこんでくる。着物に関しては〝ここ一番〟の時だけではあるが、それはまるで、本心を見られないようにする為の仮面のようで。
「……要らねぇよなあ。こんな仮面」
今、こんなものは。この場で、そんなものは。不要でしかない。
カーテンの引かれていない窓から、月明かりが注ぎ部屋の中を照らす。明かりに照らされたその寝顔は──嗚呼、その閉じられた下瞼に浮き上がる隈でさえ、いつ見ても美しい。
彼女の唇に引かれた紅を親指で雑に拭い、そのまま自身の唇をなぞる。
下着姿で、自身の布団に寝こける女。疚しい気持ちが無いなんて嘘だ。でも俺がこんな、子供地味た間接キスしか出来ないでいるのは。
「まだお前を、死なせる訳にはいかないんだ」
名字名前、二十八歳、A級八段棋士。
この女は──盤上に死に場所を求めている。
それを阻止する為に、俺らA級棋士は全力をもって彼女を叩き負かさなくてはならないのだ。
「……ん、開さんおはよう」
翌日、目を覚ました俺の目に映ったのは、見晴らしが良い事が自慢の窓枠に寄りかかり、開け放った窓から吹く風にその短い髪を遊ばせながら晴れた青空をバックに、こちらに微笑む女だった。
……まーた勝手にヒトのワイシャツ着やがって。
視覚的に、此処は素直にご馳走様と言うべきか呆れた溜め息とともに諭すべきか、寝起き早々俺の頭はフル回転を強いられるのだった。
1/2ページ