影が薄い子の
「動物って正直者だよね」
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わたしは、動物がすきだ。
かれらの行動はひとつひとつが正直で、そこに嘘はない。言葉が通じないのに意思は疎通できるところもいい。後者に関してはわたしがそう思うだけで実際は違うのかもしれないけれど、でもそれでも良かった。
もし殺されるなら、動物たちのために。そう思うくらいにはすきだ。
だから、アイヌの考えや教えは素敵だと思う。
「無駄な殺生をしない、肉はもちろん骨や皮も、全て無駄にしない。ただ食らうだけではない、わたしたちの一部となる……その考えには敬意を表する思いですし、見習っていかなくてはと思います」
「…意外だな。動物愛護で考えればどんな理由でも殺すのはタブーだと思っていたが」
「貴方から愛護って言葉が出るなんて」
「…馬鹿にしてんのか」
「それこそ意外だっただけです」
「…」
「それに、そう言っているのは現実を見ていない者の偽善です。声高らかにそう宣う傍ら、動物たちの肉を喰らっているんですから」
生きとし生けるもの、他者を喰らいまた喰われる存在なのだ。それはわたしたち人間だって変わらない。
「…わたしは、かれらの血と肉に生かされている。そう思うと、自ら死ぬなんて馬鹿げた真似は出来ません」
「だが、殺されそうになったら喜んで死ぬのだろう?」
外套を掴んでいた手を拾われ、前に引かれると相手との距離が一気に近づく。光のない暗く深い眼に映ったのは、同じ眼をしたわたし自身。
「俺が殺してやろうか」
「…それなら、わたしを喰らってくれますか?」
ただでは殺されない。それだとわたしが生きてきた意味が、本当に失くなってしまうから。
他人の為に生きてこなかったわたしだけれど、望むとすれば、最期くらいは誰が為に成りたい。
「俺にそんな趣味はねえ」
「それなら、殺されるわけにはいきませんね」
そう思うことは、いけないことだろうか。
「貴方が動物たちのように、嘘を吐かないで生きていくのなら考える余地をあげます」
「俺ほど正直な奴もいないだろう」
「これだから人間は…すぐ嘘を吐く」
山猫と幽霊の他愛ない話
かれらの行動はひとつひとつが正直で、そこに嘘はない。言葉が通じないのに意思は疎通できるところもいい。後者に関してはわたしがそう思うだけで実際は違うのかもしれないけれど、でもそれでも良かった。
もし殺されるなら、動物たちのために。そう思うくらいにはすきだ。
だから、アイヌの考えや教えは素敵だと思う。
「無駄な殺生をしない、肉はもちろん骨や皮も、全て無駄にしない。ただ食らうだけではない、わたしたちの一部となる……その考えには敬意を表する思いですし、見習っていかなくてはと思います」
「…意外だな。動物愛護で考えればどんな理由でも殺すのはタブーだと思っていたが」
「貴方から愛護って言葉が出るなんて」
「…馬鹿にしてんのか」
「それこそ意外だっただけです」
「…」
「それに、そう言っているのは現実を見ていない者の偽善です。声高らかにそう宣う傍ら、動物たちの肉を喰らっているんですから」
生きとし生けるもの、他者を喰らいまた喰われる存在なのだ。それはわたしたち人間だって変わらない。
「…わたしは、かれらの血と肉に生かされている。そう思うと、自ら死ぬなんて馬鹿げた真似は出来ません」
「だが、殺されそうになったら喜んで死ぬのだろう?」
外套を掴んでいた手を拾われ、前に引かれると相手との距離が一気に近づく。光のない暗く深い眼に映ったのは、同じ眼をしたわたし自身。
「俺が殺してやろうか」
「…それなら、わたしを喰らってくれますか?」
ただでは殺されない。それだとわたしが生きてきた意味が、本当に失くなってしまうから。
他人の為に生きてこなかったわたしだけれど、望むとすれば、最期くらいは誰が為に成りたい。
「俺にそんな趣味はねえ」
「それなら、殺されるわけにはいきませんね」
そう思うことは、いけないことだろうか。
「貴方が動物たちのように、嘘を吐かないで生きていくのなら考える余地をあげます」
「俺ほど正直な奴もいないだろう」
「これだから人間は…すぐ嘘を吐く」
山猫と幽霊の他愛ない話