影が薄い子の
「動物って正直者だよね」
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「リュウってば、もう名前ちゃんに懐いてんのな〜」
リュウと遊んでいる名前ちゃんを見かけ、声をかけるべく近付く。
「名前ちゃんは動物に好かれやすいんだネッ」
思い浮かぶのは、最近よく見かける光景。片手にリュウを繋いだ紐を、もう片手を尾形ちゃんの外套を掴む、両手に動物(笑)を侍らせているものだ。
尾形ちゃんに関しては何故そんな事態になっているのか甚だ理解できないが、本人も許容しているところを見ると、恐らく尾形自身が仕向けたことなんだろう。あの山猫をよく堕としたもんだと、名前ちゃんに尊敬の目を向けざるを得ない。
(動物に懐かれるというよりは、猛獣使い的な意味だけどねー…)
このまま杉元も陥落させられんのかなあ、と思うも、あの野郎はアシリパちゃんにだけだろうなあ。
「はあ…」
急に話しかけたこともあってか、名前ちゃんはきょとんと呆けた顔をしたが一瞬で怪訝なものに代わり、戸惑ってますといった様子でいる。
しかしその手はリュウを撫でるのをやめないあたり、さほど動揺はしていないのだろう。
(まあ、こうやって二人で話すの初めてだしね)
「前に谷垣にも、どうしたら犬が服従するか聞いたことあるんだけどさ〜。一瞬で裏切られたことがあって」
「一瞬でも従ってくれたのなら御の字でしょう。本来は長い時をかけて信頼関係を築くものですから」
「えー…今のキミたち見てるとそれは違うと思うけど」
まだ出会って日が浅い一人と一匹の仲睦まじい様子を見ていると、彼女の言葉に納得するのは難しかった。言外にそう思ったことが伝わったのか、名前ちゃんは嘲笑してみせる。
「…よほど、前の飼い主がいい人だったんでしょう」
「飼い主人殺しだったけど」
「そんなの、この仔からしてみれば些末なこと。大事なのは、自分に嘘を吐くかどうか」
真っ直ぐな気持ちで向き合えば、彼らもそれに応えてくれますから。
その言葉を最後に、名前ちゃんは立ち上がりこの場を去っていく。見れば彼女の向かう先には山猫がおり、じっとりと睨まれたが名前ちゃんがそいつの外套に触れれば、それはふっと外された。
「…真っ直ぐな気持ち、ねえ」
離れていくその背中を、リュウの頭を撫でくり回しながらただ見送る。
「あの子に気持ちを向けられるお前が羨ましいぜ、犬っころ」
あの子が俺たち人間に感情を向けたことなど、一度たりともありはしないのだから。
脱獄王は遠くから見守る
リュウと遊んでいる名前ちゃんを見かけ、声をかけるべく近付く。
「名前ちゃんは動物に好かれやすいんだネッ」
思い浮かぶのは、最近よく見かける光景。片手にリュウを繋いだ紐を、もう片手を尾形ちゃんの外套を掴む、両手に動物(笑)を侍らせているものだ。
尾形ちゃんに関しては何故そんな事態になっているのか甚だ理解できないが、本人も許容しているところを見ると、恐らく尾形自身が仕向けたことなんだろう。あの山猫をよく堕としたもんだと、名前ちゃんに尊敬の目を向けざるを得ない。
(動物に懐かれるというよりは、猛獣使い的な意味だけどねー…)
このまま杉元も陥落させられんのかなあ、と思うも、あの野郎はアシリパちゃんにだけだろうなあ。
「はあ…」
急に話しかけたこともあってか、名前ちゃんはきょとんと呆けた顔をしたが一瞬で怪訝なものに代わり、戸惑ってますといった様子でいる。
しかしその手はリュウを撫でるのをやめないあたり、さほど動揺はしていないのだろう。
(まあ、こうやって二人で話すの初めてだしね)
「前に谷垣にも、どうしたら犬が服従するか聞いたことあるんだけどさ〜。一瞬で裏切られたことがあって」
「一瞬でも従ってくれたのなら御の字でしょう。本来は長い時をかけて信頼関係を築くものですから」
「えー…今のキミたち見てるとそれは違うと思うけど」
まだ出会って日が浅い一人と一匹の仲睦まじい様子を見ていると、彼女の言葉に納得するのは難しかった。言外にそう思ったことが伝わったのか、名前ちゃんは嘲笑してみせる。
「…よほど、前の飼い主がいい人だったんでしょう」
「飼い主人殺しだったけど」
「そんなの、この仔からしてみれば些末なこと。大事なのは、自分に嘘を吐くかどうか」
真っ直ぐな気持ちで向き合えば、彼らもそれに応えてくれますから。
その言葉を最後に、名前ちゃんは立ち上がりこの場を去っていく。見れば彼女の向かう先には山猫がおり、じっとりと睨まれたが名前ちゃんがそいつの外套に触れれば、それはふっと外された。
「…真っ直ぐな気持ち、ねえ」
離れていくその背中を、リュウの頭を撫でくり回しながらただ見送る。
「あの子に気持ちを向けられるお前が羨ましいぜ、犬っころ」
あの子が俺たち人間に感情を向けたことなど、一度たりともありはしないのだから。
脱獄王は遠くから見守る