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さくのすけにもらわれてからね、わたしにはたくさんのきょうだいができたんだよ。
みんなわたしのことをかわいがってくれたし、たくさんたくさんあいしてくれてたのがわかった。
だから、まもらないとって、おもったの。
とつぜんしらないおとこたちがへやに入ってきて、あのこたちをなぐってつれていこうとしたの。
だからわたし、おとこのてを引っかいてかみついてやった。そしたらわたしもなぐられたりけられたりしたんだ。
あのこたちは、わたしににげろって言った。
でもわたしはどれだけなぐられても、けられても、はなれたくないっておもったんだ。
だって、かぞくはいつもいっしょでしょう?
さくのすけがもっているようなてっぽうでうたれそうになったわたしを、みんながまもってくれた。
そうしたらいっしょにぬのをかぶせられて、どこかにはこばれて。つぎにまわりが見えたとき、みんないたけれど、みんなとってもおびえてたの。
そこには、かちかちとなるよくないものがあった。
わたしには、それがなんなのかわからなかったけれど。でもそれが、みんなをこわがらせていることはわかったの。
だからね、わたしみんなにわらってほしくて。ひとりひとりすり寄って、ほっぺたをなめてあげて、だいじょうぶ、だいじょうぶだよって、たくさんないたの。
そうしたら、みんな、ちょっとだけわらってくれたんだ。
はっきりおぼえてるのは、そこまで。
あとはすごくうるさくて、くるしくて、あつくて、いたくて。気がついたら──ここにいたの。
『ほんとうはね、わたしもとってもこわかったんだ』
でもあのこたちのこと、だいすきだったから。
それにね、わたしが今までであった人たちは、みんなやさしかったから。
さくのすけも、おやじさんも、あのこたちも、せんせいも、そしてなにより。
しにかけのわたしをひろってくれた名前ちゃんが、やさしかったから。生きているわたしたちも、しんでしまったわたしたちも、名前ちゃんはやさしくうけいれてくれたから。
『わたしのはじめてのかいぬしは、名前ちゃんだから。ほら、かいぬしによくにるって言うじゃない』
「……それじゃあ、恨んでないって言うの?君たちを殺した、男たちの事」
『……』
どうなんだろう?
うらんでないと言えばうそになるけれど、でもそれを言ってしまえば、やさしい名前ちゃんは行ってしまう。あんなつよい人間たちには、いくら名前ちゃんでもかてないとおもう。
それで名前ちゃんが〝こっち側〟に来てしまうのはいやだ。
それに、人間がみんな、ああいうんじゃないってことはよおくしってる。
だから、だからね。
『うらんでないよ。だから、かたきうちはしなくてだいじょうぶだよ』
「でも──」
『だいじょうぶ』
だいじょうぶなの、ほんとうに。名前ちゃんのかおにぐりぐりあたまを押しつける。
『あのこたちからはなれてここに来たのは、名前ちゃんに会うためだから。はじめておはなしして、まえみたいにぎゅってしてもらえて、それでじゅーぶん』
「……そうか。今までの仔たちはひとりだったけれど、君は違うんだもんね」
『そー。あのこたちをいつまでもまたせるのはよくないものね』
「……ひどいことを言う様だけれど。君が寂しくなくて、良かった」
そう言って、名前ちゃんはすこしわらった。
そう、わたしはひとりじゃないから、さまようことはない。あっちへの行き方もわかっているし、なによりあのこたちがいるから。
でも、でもね。ちょっとだけしんぱいなんだ。
名前ちゃん、あなたはだいじょうぶ?
「さ、もうお行き」
子どもたちが待っているのでしょう、そう言ってわたしを下ろした名前ちゃんを、じいっと見あげる。
『名前ちゃん』
「?」
いちばんたいせつなことを言っていないことをおもいだしたのだ。
『いっぱい、いっぱい、ありがとう。』
生きていたときも、しんでからも、わたしをみつけてくれてありがとう。
『名前ちゃんは、わたしのままだよ。いつまでもだいすきな、ままだから』
どうかわたしたちにやさしいこの人に、せかいがやさしくありますように。
『ままにも、たくさんのしあわせがおとずれますように』
ままがわたしをあいしてくれたように、だれかままを、あいしてくれる人がいますように。
そうおもいながら、わたしはままにもう一度だけすり寄って。
とおくでわたしをよぶきょうだいたちのもとへとかけたのだった。
(ふりむくことはしない)
(それは、名前ちゃんに〝こっち側〟へ来てほしくないから)