5、はじめまして、久しぶり、よろしくね!
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この小説の夢小説設定 過去に呪術廻戦の世界へトリップしたことのある主人公が、もう一度トリップしてみたら自分のポジションに成り代わる人間がいた。
べつにそれに対しては笑い話で済む話だけどちょっと待って??過去の友人とイチャイチャ??気持ち悪いんでやめてもらえません???
これは、主人公が自分の立ち位置を正しい場所に戻すために奮闘する物語である(?)
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※※※
・主人公が偽名でややこしいよ!
こんにちは! 糸田紬です!
わたしは今、東京都立呪術高等専門学校で用務員として働いています!
範囲の広いこの高専内のアレコレを一人で担うのはなかなか大変ですが、なかなかに充実した日々を送っています!
何より! あのクズ達と偽者にはあれから会っていません! それだけでストレスフリーってもんですね!!! ふっふー!!
◇
『虎杖の関係者、それに別世界から来たということはこっちで住むところもないだろ? だから高専に身を置いていいとのことだ。』
『それ、本当にあの白髪と福耳が言ったんですか?』
『ブッ……何だその呼び方。』
『だって、名乗られてませんので。わたしはまだあの人たちの名前を知らないのです。』
ああ、教えてくれなくて結構です知りたくもありませんので。と硝子相手に笑みを湛えてそう言うと、何やらツボに入ったのか硝子はしばらくぷるぷるしていた。その姿さえ美しいのだから硝子ったらホントいい女になったようん。
本当はフルネームを知っているどころかあいつらの恥ずかしい思ひ出の一つや二つを把握しているが、生憎と今のわたしは紐束縁ではなく糸田紬だ。さっきが初対面なことを思えば、名前を知らなくて当然だろう。ちょいちょい悠仁くんや潔高くんが言っているけど、わたしは何も知らない聞いていない。あーあー。
『意外と根に持つタイプだな、紬。』
『えっ、今名前で……?』
『ああ、急にすまない。だが、これから高専に居るとなると何かと関わりも多くなりそうだからな。仲良くしておこうと思って。』
『えっ、やだ惚れちゃう。』
どうやら硝子は、糸田紬となったわたしとも仲良くしてくれるらしい。差し出された手を思わず両手で掴んで『末長くよろしくお願いします!』と頭を下げるわたしはこの時嬉しすぎて興奮しすぎてヒャッハー状態となっていた。
だって! また硝子と友達になれるなんて!
だから、硝子が懐かしむように目を細めて微笑んでいたことに気付けなかった。
閑話休題。
『どうやら虎杖からの嘆願が効いたみたいでな。悲しませるわけにはいかないと、珍しく教師らしいことを言っていたぞ。』
『悠仁くんほんっとにありがとう。君のおかげで公園で野宿せずに済んだ。』
『ねーちゃん野宿するつもりだったの!?』
ホントそういうことやめて? と呆れながら窘められるとあれ……? わたし義姉だよな……? と自分の役どころが曖昧になったけど、これでも本気で悠仁くんに感謝していた。
悠仁くんとの関わりがなかったら、わたしは悟と傑に完全敵視されていたに違いない。いや今も似たようなもんだけど、現状は様子見という段階で落ち着いたってところなんだろう。
ムダに呪力が備わっているから、下手に扱って呪詛師になられても面倒だとか、そんなことも考えているかもしれない。であれば自分たちの目の届く範囲に置いておいた方が些かマシだとか……きっとそんなところかな。どうでもいいけど。
『とてもありがたいお話です。硝子ちゃん。』
『呼び捨て。敬語もナシ。』
『あっはい。正直とても助かるよ。悠仁くんと離れるの寂しいなって思ってたし、この世界で生きるための基盤がこんなにも早く作れたのは大きい。』
『流石、二回目ともなると考え方が手馴れてるな。』
でも、と一度言葉を切ったわたしは、ピッと人差し指を立てる。
『何もしないのは嫌だから。ここに置いてもらう代わり、わたしに仕事をくれない?』
◇
という経緯を経て、無事に用務員という職にありつけた。
いやだってさ、お世話になるのに何もしないってのもねえ……? 働かざる者食うべからずと言うし、じっとしてられない性分なんだよ。
呪力があるから、呪術界に関係のある仕事も最初は候補に挙がったけど、呪術師として育てるには時間が足りない、補助監督のような機密に触れるような職には就かせられない、高専に居るのに窓にする意味がない……そんな紆余曲折があって、結局は無害そうなポジションに落ち着いたというわけだ。
仕事範囲も今は校舎や学生寮といった限られた場所のみで、敷地内の奥にはまだ踏み入ることを許されてはいない。
でもその無害なポジションに就けたことによって、特級呪術師と呼ばれる悟や傑と会うことはこの半月で一度もなかった。二人が教師として校舎に顔を出す時は、会わないようにひたすら気配を察して避けたし。たまに偽者が校舎に悟や傑や一部の学生に絡みに行く時もあったけど、全力で逃げた。ってか学生にまで手を出すなよあのビッチ。逆ハーレムでも狙ってんのか。学生達の貞操はわたしが守る!!
と、決意を固めたのが10日くらい前。
「糸田さん、」
「おはよ〜。伏黒くん」
わたしは自分の仕事をこなしつつ、学生達との親睦も深めていた。とはいえ、きっかけこそ偶然でしかなかったのだけど。
◇
わたしの仕事範囲は、校舎か学生寮だ。だから仕事を始めた初日から、学生達の姿は見ていたのだ。しかもここは、限られた人間しか入れない呪術高専。故に学生の人数も少ないため、すぐに顔と名前と学年は覚えられた。
学生達の方にも、わたしという用務員が入ったことは教師達から伝えられていたのだろう。特に怪しまれることなく、行き合えば挨拶を交わす程度の関係は作れていた。あと電球が切れたとか、窓が割れたとか、そういった仕事を挟んでの関係のみではあったけど。
その間に学生数人が偽者にべったりされている姿を目撃し、決意を固めたわけである。
そんな折だった。仕事外で、学生と接触する機会ができたのは。
「ねこちゃんの具合はどんな感じ?」
「今日は調子良さそうです。エサを食べる量も増えて。」
「ほんと? よかったー。」
一週間前、男子寮の外で蹲る男の子がいた。こんな茂みで一体何を? と思い声をかけると、その男の子は大袈裟なくらい肩を上げて慌ててわたしを振り返った。
なんだなんだ? ナニか疚しいことでもしてたんか? と思いニヤついたのも一瞬、彼の手の中のものが見えた瞬間、わたしは自分の表情が抜け落ちるのがわかって。離れていた距離を数歩で詰め、力を加減するのも忘れて男の子の肩を掴んだ。
彼の手の中には、血濡れでぐったりしているねこがいた。
『それ、君がやったの?』
『ちがっ、俺が来た時にはもう……!』
『ん、わかった。』
男の子の慌てように、嘘を吐いている様子は感じられなかった。場合によっては子供相手だろうが一発ぶん殴ろうかと思ったが、そうでないのなら今は一刻でも時間が惜しかった。掴んだ肩をそのまま促すように二度ほど叩き、『立って』と男の子に告げる。
『そのねこちゃん、そのまま保健室に連れていくよ。』
『え、でも家入さんは今……』
『家入先生はいない、それは知ってる。でも大丈夫。』
さっきまで凄んでいたわたしの変わりように、男の子はさっきまでとは別の意味で慌てているように感じられた。だから、安心させる意味も込めて笑ってやる。
『わたしは、獣医だから。』
「糸田さん、本当に獣医だったんすね。」
「なんのなんの。今はしがない用務員さ。」
あの後は、この伏黒恵くんに手伝ってもらいながらねこちゃんの治療をした。家入先生様様、保健室にはわたしの狙い通り色んな種類の薬や簡単な医療セットが置いてあったため、それを拝借してぱっくり開いた傷を局所麻酔で縫合した。これはねこちゃんがぐったりしていたから出来た荒業であり、本当はきちんと麻酔をかけてあげるべきなんだけどね。
その治療の合間に、伏黒くんとねこちゃんの関係性を聞いた。なんでも高専に迷い込んできたこのねこちゃんにエサをあげてみたら、決まった時間になると顔を出すようになったのだとか。それが、さっきまでいた場所らしい。
そして今日、いつものようにあの場所へ向かうと、そこには血濡れのねこちゃんが倒れていたというのだ。驚き焦ってとりあえず抱えたところで、わたしが現れたのだと。
あの時のことを思い出したのか、伏黒くんは自分の肩に手を置いた。
「あの時掴まれた肩、夜に見たら痣になってましたよ。」
「うっそ、ごめん傷モノにしちゃって……! 責任はとるから。」
「キリッとしないでください、要らないんで。」
「返しがスーパードライ。」
二人で隠れるように茂みの中に座り込み、ごはんをガツガツと食べるねこちゃんの様子を見ながらの会話はテンポが良くて心地好い。いくらクールな少年気取っていても、わたしはもう彼が動物好きの優しい少年だということをようく理解している。だから要らないとか言われてもへっちゃらだもんね! ぐすん。
そんな時だった。
「恵くーん?」
「!」
「うげ、」
わたしと伏黒くんのほのぼのタイムに割って入る声があった。こんな猫撫で声で伏黒くんの名前を呼ぶ女は、わたしは一人しか知らない。
「おかしいなぁ〜。この辺にいると思ったのにぃ」
なんっでお前がここにいるんだ!
その女、言わずもがな偽の紐束縁は、大きな独り言を言いながらガサガサと茂みを掻き分けていく。自分が呼ばれているわけでもないのにわたしは最早本能的に逃げたくて、咄嗟にねこちゃんを抱き抱え更に身を縮こませた。ついでに伏黒くんの制服の袖を引っ張って、彼を行かせないようにする。
だって、わたしは見てきたのだ。紐束縁に絡まれ迷惑そうな顔を浮かべる伏黒くんを。悟が惚れ込んでいる相手だからと、無下に出来ずにいることも知っていた。
困り果てている子供がいたら、助けるのは大人の務めである。いやもちろん、伏黒くんが喜んで行くなら邪魔はしないけども。数日前の決意を実行しつつ、でも決して強制はしないよう振り払えるくらいの力加減で制服を掴んでいると、伏黒くんはわたしと自分を呼ぶ声のする方向へ視線を彷徨わせたあと、細く息を吐いたかと思えば制服を掴むわたしの手を掴んでもっと身を寄せてきた。おおう? これは一体?
「今「うげ、」って言いましたよね。糸田さん、あの人のこと苦手ですか。」
「正直言って、出来れば関わりたくない人だね。」
「聞いといてなんですけど正直過ぎやしませんか。」
「くだらない嘘は吐かない主義だから……」
そう言ってまたキリッとしているわたしを、伏黒くんは2秒くらいじっと見てからふいっと顔を逸らす。ああ、今度はノーリアクションか……と思っていると、どうやら違かったらしい。
「俺も、あの人は苦手です。だから一緒に隠れさせてください。」
「伏黒くん……!」
「大きな声出さんでください。」
「うい。」
悠仁くんのおかげで姉性がぐんぐん芽生えているわたしにとって、今のように伏黒くんに頼られるとべらぼうに弱い。それがたった今発覚したのだった。
「ところで、あの女は伏黒くんがここによく来ること知ってるの?」
「はあ……まあ、ここで何度か行き会ったことはありますよ。」
「ふうん?」
◆
それは、衝撃に近い感動だった。
「あれ? 本物の紐束縁だ。」
わたしに会うなり、こちらを指差しながらそう言ってのけた人物……人……? がいたのだから。
◇
わたしが一度目のトリップをして、悟達と共に高専でいろいろ学んでいた時。わたしだけが夜蛾先生に呼ばれた時があった。
それはきっと、夜蛾先生なりに異世界へ飛ばされてきたわたしを憐れに思い励まそうとしてくれていたのかもしれない。あと、常に動物大好きと連呼していたからかもしれない。
一人で呼び出された時はオマエ何したんだよと悟と傑に馬鹿にされたし、わたしも首を傾げながら夜蛾先生の後に着いていった。
そして、天使に出会ったのだ。
その天使……あの時から成長し厳つくなったパンダは、ツナギ姿でハシゴを持ったわたしを見て、わたしの本名を口にした。その名前を聞いて、眼鏡をかけた美少女ちゃんと口元を隠した美少年くんは訝しげに眉を寄せたのをわたしは見逃さなかった。慌ててパンダを呼び寄せてひとまず今のところは誤魔化してもらって、あとで詳しい話をするからと説得した。
「えっ……? パンダが喋ってる??」
「あいつらが今更そのリアクションで誤魔化されるかなあ。」
「いいから! 誤魔化されてくれ頼むから!」
「いやもうダダ漏れじゃね?」
わたしの努力の演技もあってか、美少女ちゃんと美少年くんからその場で追及されることはなかった。わたし女優の才能あるんじゃ? と少しそわついた気分をパンダに即座にたたっ斬られたが、へこまないもんね!
「で? 何がどうなってるんだ? オマエ、紐束縁だよな?」
「ハイ……紐束縁(本物)です……」
それからわたしは、パンダのおなかをもふもふしながら今までの経緯を説明した。数日前にこの世界へ再びやって来たこと、何故かわたしの成り代わりがいること、その成り代わりが悟達にべったりなこと、高専で用務員として働くことになったこと、などなど。その一つ一つを処理して、現状と組み合わせて、納得したのだろう。パンダは「なるほど、道理で」と顎に手を当てた。
「まるで赤の他人なのに、悟達が信じて疑わないのはそういうことか。」
「パンダは、最初から気付いてたの?」
「ああ。一回だけ悟達に違う人間だって言ったけど、まるで無視されてな。それからは放っといてた。縁の言う『催眠』ってやつも、オレにはかかってなかったんじゃないか?」
「パンダだから?」
「パンダだから。」
ムッフーと鼻息を荒くしドヤ顔で言うパンダのことを、かわいいと思いつつまあ呪骸だしなパンダは……とわたしも納得することにした。
もしわたしが偽者の立場なら、真っ先にパンダとマブダチ設定にするけどなあ。
「それに、昔はよくべったりベタベタしてきたのにそれが全く無かったからな。あの動物狂いの変態はそうはいないだろ。」
「わあ! 事実故によく刺さるう〜!」
昔のわたしは、人間よりも動物大好き! がデフォだったからね。パンダに触れる機会なんて動物の飼育員にならない限り無かったから、暇を作ってでもパンダに会いに行っていたのだ。中学生の頃の夢は、赤ちゃんパンダを並べてコロコロしてるのをひたすら眺める仕事に就くことだったからね! みんな、『パンダ、あかちゃん、動画』で検索だ!
「今の紐束縁は、オレより棘にご執心だからな。」
「うっっっわぁ……心に刺さるう〜〜。」
「じゃあアレか? 今後縁のことは〝呪いも視えるもう一人のトリップ人間・糸田紬〟として接すればいいか?」
「あ、うん。理解が早くて助かるよ。でも無理に関わろうと思わなくてもいいからね。」
「……デカくなったオレのことは、もう可愛がってくれないのか?」
パンダのことを思って言ったつもりだったのだけど、逆にしょぼんとされてしまってわたしの心臓は3秒くらい鼓動を止めた。ついでに我慢していた何かが振り切れた。
「そんっっっっなわけないでしょおおおおお!! 一生可愛がるううう!!」
わたしはそう叫びながら、ガッバ! とその大きな白黒の身体に抱き着いて全身でもふもふを堪能する。頭をぐりぐりして猫吸いならぬパンダ吸いをすると、おひさまの匂いが鼻腔を通りなんとも言えない多幸感に包まれた。
「まったく、変わんねえなあ〝紬〟は。」
昔はわたしの腕にすっぽり納まっていた身体は、今では反対にわたしの身体をすっぽりと覆ってしまえるくらい大きい。その安心感に、少しだけ泣いてしまったのは内緒の話である。
◆
パンダとそんな感動の再会をした数日後に伏黒くんとねこちゃん騒動があり、そこから二学年の三人とも一学年の二人とも、仕事外の接触が増えた。五人は今、近々行われる〝京都姉妹校交流会〟に向けて猛特訓中なのだとか。
五人で集まり励む姿に青春を感じ、飲み物の差し入れをしたのも一度や二度ではない。
「そっか! 伏黒達、元気でやってるんだな。」
それを悠仁くんに話すと、彼は心底良かった! といった笑顔を浮かべた。
用務員としての仕事を終えたあと、わたしが帰るのは悠仁くんの居る部屋である。義弟相手なら一緒に住んでも問題はないだろうとは硝子の言で、悟達も渋々納得した。潔高くんは早くわたしの部屋を用意してくれると言ってくれたが、丁重にお断りしておいた。
なんとなく、悠仁くんを一人にするのは嫌だったのだ。
二人でキッチンに立ち、今日の夕飯を作っていく。その合間に、今日は何があったかを報告しあうのが日課となっていて、わたしは用務員としての仕事や学生達の様子を、悠仁くんは任務のことなどを話してくれる。
その中で、わたしは悠仁くんに二年生達のことは話していなかった。まだ会ったことがないということだったので、あとのお楽しみにしておいた方がいいかなと思ってのことである。ただパンダと再会してからパンダの動画を観る頻度が増えたのだけは許してほしい。
出来上がったごはんを挟んで、二人で揃って手を合わせる。いちばんはじめ、特に合わせたわけでもなかったのに「いただきます」の声が重なった時は、びっくりして二人で笑った。
そして平らげたあとは、悠仁くんの呪力コントロールの特訓も兼ねての映画鑑賞が始まる。わたしもすることが無いので悠仁くんの隣に座って一緒に映画を観るのだが、たまに呪骸に殴られる様を見ては懐かしいなあとしみじみ。何を隠そう、わたしも昔持たされていたのである。
「あ、そうだ。」
「ん、どしたの?」
「これ、ねーちゃんに渡してくれって伊地知さんが。」
鑑賞中、何かを思い出した悠仁くんが反対隣に置いてあった袋を渡してくる。綺麗にラッピングされたそれに首を傾げながら紐を解いてみて、見えた中身にひくりと口の端が震えた。
「あ、オレと色違いのやつ。」
中には、悠仁くんの言うように彼の持つそれとは色違いの呪骸。
『この呪骸を常時持ち歩き、呪力のコントロールを身につけてください。』
一緒に入っていたカードには、そう書かれていた。
まだ殴られていないのに、頬がズキズキと痛む気がした。
「ねーちゃんも特訓? 一緒に頑張ろーね!」
しかもご丁寧に、わたしが断れないように「悠仁くんの手から、悠仁くんと色違いの、悠仁くんと同じ特訓」という手の込んだ渡し方だ。わたしの姉性にぐさぐさ刺さる方法を選びやがって——あの白髪野郎。
伊地知くんを通して悠仁くんに渡すのもタチ悪いったらない。
「はは……ガンバローネ。」
顔はやめて、殴るのはボディーだけにしてほしいな……と、キラキラした目で見てくる悠仁くんに笑いかけつつも胸中ではそう思うのだった。