27、作戦会議・2
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この小説の夢小説設定 過去に呪術廻戦の世界へトリップしたことのある主人公が、もう一度トリップしてみたら自分のポジションに成り代わる人間がいた。
べつにそれに対しては笑い話で済む話だけどちょっと待って??過去の友人とイチャイチャ??気持ち悪いんでやめてもらえません???
これは、主人公が自分の立ち位置を正しい場所に戻すために奮闘する物語である(?)
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※※※
・精鋭たちによる作戦会議のため、話は進んでないよ!
・呪霊とか呪力とか設定捏造だよ!
「はい! じゃあみんなちゅうもーく! 今後の作戦詰めていくよ!」
教壇でぱんぱん! と手を叩いて、席に座るみんなの注目をこっちに集める。
この教室に集まったのは、わたしの事情を知っている建人、雄、潔高くん、悠仁くん、夜蛾さん、それにパンダ。
そしてこの作戦の発案者である悟、硝子とわたくし、糸田紬でお送りします!
「じゃ、詳細をお願いします。家入センセイ。」
「貴女が話すんじゃないんですか。」
「わたし号令係。この後紬ちゃんはアニマルセラピーで気力回復に努めるのです。」
そそくさと教壇を降りたわたしはパンダのいるところまで小走りで向かい、抱っこされるカタチで収まる。わあいわたしの特等席最高かよ……もふもふ……お日様のかおり……寝ないようにせねば。
「あれっ? もしかしてオレが呼ばれた理由ってこの為か?」
「八割方そうかも〜。」
この時、数人か全員かは不明だが「あっ、だからパンダがここに居るのね」と思ったとかどうとか。
「ハイそこー。くっちゃべってないでサクッといくぞー。」
わたしと入れ代わり教壇に立った硝子が、教師みたいなことを言ってから説明を始める。
「とは言え、###NAME4#のバカが引きこもってる間に状況の説明は粗方済んでいる。今日は新たに分かった情報の共有と、いよいよどうしていくかの最終確認ってところだが。」
「え、そうだったの?」
「ああ。オマエのことだから二、三日で勝手に復活してくるだろうと思ったからな。」
「硝子……! そこまでわたしのこと理解してくれて!」
「感極まるのはあとでな。話が逸れる。」
「うい。」
わたしが野次を飛ばすと本当に話が進まなそうな気配がしたから、お口ミッフィーちゃんでいきます。
「紐束縁の呪力譲渡の力は、人間だけでなく呪霊相手にも効果があるということが分かった。本来であれば、この時点で〝上〟に報告しなきゃいけないレベルの話だ。だが今は夜蛾学長で止めてもらっている。」
「保守派の人間達は、必ず彼女の力を危険視するだろう。呪詛師に堕ちる可能性も考慮するなら、最悪処刑もあるかもしれない……そう判断し、報告するのは一度保留にしている状態だ。」
「現状、紐束は夏油を人質にしていると言っても過言じゃないからな。下手に刺激してそれこそ呪詛師側に行かれても困るし、私達が夏油を助けるには高専にいてもらった方が何かと都合も良いからな。」
そこまでおおごとになってたのか……まあ確かに、呪霊を使役する傑と呪霊を操るあの女がタッグを組んで呪詛師にでもなったらだいぶエライことになるもんな。
それであればまだ、〝わたし〟を狙ってくれているうちが制御しやすいというものだ……それに傑には、きっと二度はないだろうから。
「そこでだ。夏油は今、紐束の操る呪霊に呪われ声を奪われている。」
「!」
「恐らく、紬が対峙した呪霊だろう。祓ったって話だが、実際どうなんだ? 覚えてるか?」
「……覚えてない。」
本殿で対峙した、傑の声で喋っていた呪霊。気が付いたらいなくなってたから無意識に祓っていたのだとばかり思ってたけど……余りのショックに逃がしてたのか。呪術師としてダメダメじゃんわたし……。
「ごめんなさい。祓い逃してたなんて。」
「それはいい。オマエを絶望させる為に、向こうが立てた策だったと思っている。ここでまたオマエが凹んだらますますあの女の思う壺だぞ。」
硝子に宥められ、パンダに頭を撫でられ。落ち込みそうになった心を何とか持ち直して俯かせた顔を上げれば、こっちを見ていたみんな、誰も責めるような顔をしていなかった。
「ごめん。次は必ず祓うから。」
まったく、みんな優しいにも程がある。
「ああ。その呪霊を祓えば、夏油に声が戻るはずだ。……だが、」
硝子は一度そこで言葉を切り、何かを思い出したのかゆるく首を振る。
「今の夏油は、完全に操られている状態にある。それを正気に戻す方が厄介そうだった。」
声が奪われたことを知った時、硝子が問い詰めたのだそうだ。『そんなになってまで、何故紐束縁の傍にいるのか』。
それに対する傑の答えは、『縁がそれを望んだから』。声にならない声で、そう言い切ったのだそうだ。いっそ清々しいほどの、何も疑っていない純粋そのものの顔で。
「昔から、夏油は紐束の言葉には素直だったからな。それがここに来て悪い方向に出てるってわけだ。」
ん? 硝子の言う〝昔〟っていつのことだ? 少なくとも高専時代は全然だったぞ??
なんて場違いなことを思っていると、建人が律儀にも挙手してから発言をした。偉い、真面目。さすが優等生である。
「そもそも、どうやって正気に戻すんですか?」
「これは私や五条、紬の見解だが、夏油の中では〝呪力のパワーバランス〟が逆転してると見ている。——まあつまり、アイツの体内では今、夏油本人の呪力より紐束の呪力量が多くなってるんじゃないかってな。そのせいで操られている可能性が高い。」
身体の主導権というよりは、思考や意思の主導権を握られている風だな。と硝子は建人の問いに答えていく。
「だから、紐束の呪力で満ちた呪霊を吐き出させると同時、夏油自身の呪力の底上げをしてパワーバランスを正常に戻してやれば、操られることは無くなる。と見ている。」
「それってつまり——」
「ああ。オマエ達には、夏油が出した呪霊の相手を。そして紬には、夏油の呪力の底上げをしてもらう。」
硝子の言葉に、みんなの視線——正確に言えば硝子と悟以外の——が一斉にこっちを向く。それに思わずびっくりしちゃったけど、とりあえずお口ミッフィーちゃんを解禁してへらーっと笑って見せた。
「そういうこと! だからみんな、頑張ろうね!」
「「「いや……いやいやいやいや」」」
おうい! なんでみんな拒否るの!!
「紬さんに負担がかかりすぎです。」
「いや、そんなでもないと思われ、」
「そんなことあるよ! せめて夏油さんの声を奪った呪霊は俺達に任せてください!」
「ええええ。でもわたしが取り逃したやつ……」
「あの場にはオレもいたし、ねーちゃんだけの責任じゃないよ。ねーちゃんは夏油先生を戻すのに集中して。」
「あ、はい。」
建人と雄、それに悠仁くんに諭され。
「問題はどうやって夏油を誘い出して、かつ呪霊を出させるかってところだが。」
「ぶっちゃけ夏油さんは、気絶させて寝てる間に抱きついてればいけそうな気がしてる。」
「時間は?」
「最低でも丸一日は欲しいかなあ。」
「麻酔でも使うか。」
「きゃあ! 硝子センセイ大胆過激〜!」
硝子の医師としての職権乱用も辞さない本気を知って。
「でもそうすると、傑の奴が呪霊出せなくないか?」
「気絶させる前に出させる必要があるな。」
「わたしがまた夏油さんのこと怒らせる?」
「なんでそう物騒な方にしか思い浮かばないんだオマエ……」
「だってわたしを殺そうとすれば、紐束印の呪霊使ってくれそうじゃない?」
「刑執行の時のような方法はもう勘弁してくれ。」
「……はい。すみません。」
パンダと夜蛾さんにはお説教され。
「順番は前後してしまいますが、先に夏油さんを正気に戻すというのは? 体内のパワーバランスが正常になれば、夏油さんの意思でその〝不純物〟を取り除けるのでは……」
「おお! なるほどね!」
潔高くんが活路を見出してくれた。
ここにいる全員が、傑だけでなくわたしのこともちゃんと考えてくれた上で話を募らせていく姿がなんだかこそばゆい。改めて良い人達と巡り会えてよかったと一人でによによしてしまうのも仕方ないだろう……頑張って隠したけど。
「しかし問題はまだありますね。あの人から夏油さんをどう引き離すか、そしてあの人に邪魔されないか……そこが最大の難所かもしれません。」
「それなー。引き離すことは出来ても、丸一日も夏油さんがあの人に会いにいかないのはさすがに怪しまれるよね。」
「拘束するか?」
「いんや、理由もないのに拘束は出来ないでしょ。……それに長時間一人にして、また神様とやらから戦力増やされても困るしね。」
つまり今回の作戦の肝は、いかにあの女の意識を逸らしながら傑と引き離していられるかによるのだ。そしてこの肝となるのが……みなさん、もうおわかりだろう?
「夏油さんの引き留めは、わたしに考えがある。そこで、あの人の引き留め役を五条さんにお願いしたいんですけど……」
未だ催眠にかかったままの、悟にしか頼めないことだった。
相手が誰にしろ、美人の誘いを断らない雄も候補に挙がったけど、催眠が解け距離を置きがちな今、長時間の引き留めは難しいと思われる。あと万が一にも雄が操られてしまうかもしれない、それを思えば気軽に頼めやしなかった。
そこで、悟だ。あの女の呪力に対し大分拒否反応が出てるけど、だからこそ操られることはないんじゃないかと踏んでいる。悟はそもそもの呪力量も常人より多いし、最悪無下限の発動も視野に入れれば上手く立ち回れるんじゃないかと思うのだ。
何より、呪術師として警戒しながらも悟はまだあの女のことを好いているのだ。それだけで十分、引き留め役には事足りると思ってるんだけど……。
「いいよ。」
ごちゃごちゃ言い訳を並べ立てていた頭の中が、その一言でぱっとクリアになる。
「……なに、そのアホ面。」
「いや、もっとごねられるかと思って。」
「傑を助けるために縁とイチャつける、せっかくみんなの公認なんだからむしろ喜ばしいね。」
そう言って席を立った悟は、机の間を縫って真っ直ぐにわたしとパンダの元へやって来る。そして上体だけを屈ませ、目隠し越しにじいっと見られる感覚。
喜ばしい、と言う割にそんな風には見えなくて、でも怒ってるわけでもない。感情の読めない顔つきに、反応に困ってしまった。
「それは、僕を信用してくれてるってことでいい?」
「? 当たり前じゃないですか。だって貴方は〝五条悟〟ですもん。」
不可能すら可能にしてしまうんじゃないかと、そう思わせてくれるほどの圧倒的力。加えて何事にも囚われないような、圧倒的自由を持ち合わせた男。
「信じてますよ。貴方ならちゃんと無事でいてくれるって。」
「……そ。ならとりあえずいいや。」
さあ、これで手筈は整った。
「みなさん張り切って、傑姫の救出に向かいましょう!」
「いや姫って。」