23、ライドン!
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この小説の夢小説設定 過去に呪術廻戦の世界へトリップしたことのある主人公が、もう一度トリップしてみたら自分のポジションに成り代わる人間がいた。
べつにそれに対しては笑い話で済む話だけどちょっと待って??過去の友人とイチャイチャ??気持ち悪いんでやめてもらえません???
これは、主人公が自分の立ち位置を正しい場所に戻すために奮闘する物語である(?)
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※※※
・呪力の仕組みについて超捏造。
・かっこいい五条も七海もいません。
「——ほれ。終わったぞ、七海。」
「ありがとうございます。家入さん。」
その日、七海建人は報告を済ませた後、任務の際に負傷した怪我を家入に治してもらっていた。傷の無くなった肩を隠すようにシャツを着込む彼の傍で、ひと仕事を終えた家入は煙草を一本取り出し、ジェスチャーで吸っていいか尋ねてくるので、「どうぞ」と簡単に返した。
「それにしても珍しいな。オマエが油断して怪我なんてな。」
「お手数お掛けしました。予定外の呪霊に少々手こずりました。」
「オマエもか? 最近特に多いな……」
「まあ、数の違いも等級の違いも昔から適当なとこありますからねこの世界。今更対して驚きませんよ。」
特に緊急性のないものに関しては、窓からの報せを受けてから討伐に向かうまで数日の時差があることもしばしばだ。その間に呪いが成長し等級が上がることもあれば数が増えることもあるが故に、七海はそこまで気にしてはいなかった。
しかし家入の表情は何か考え込むように眉根が寄せられている。禁煙していた筈の煙草を再開しているのもそれが要因かもしれない。尋ねようとも思ったが、家入であれば考えがまとまった時にきちんと教えてくれるだろうと、今聞くことは止めておいた。
——今はそれよりも、七海が気になることは他にもあって。
「……それにしても。随分賑やかになりましたね。高専は。」
「ん? ああ、そりゃそうだろ。アイツが戻ってきたんだからな。」
そう会話をする二人の耳には、この保健室にまで届く程の騒がしい声とドタドタと走り回る音が届いていた。その音の原因を考えれば、七海は溜め息を吐き家入は可笑しそうに笑う。
「悠仁くん次右ィ!!」
「あいよ!」
「次左ィ!!」
「あいあい!」
「次そのまま教室突っ切って窓から出れる!?」
「任せろ!!」
聞こえてくる声のいくつかを挙げれば、こんな感じである。
「この騒ぎの原因が、いい歳した大人二人ってのも笑えるよな。」
「同じ大人として恥ずかしい限りです。」
「まあそう言ってやるな。アイツらは学生時代、出来なかったことをやってるだけだ。」
頭を抱える七海に対し、家入はどこまでも楽しそうだった。その様子を指の隙間から覗き見、思うところがあったのか、七海も顔を持ち上げる。
「家入さん。あの二人は昔にも似たようなことしてましたよ。」
忘れもしない。男から逃げる女の先輩を担いで、鬼ごっこに巻き込まれたことを。当時を思い出し遠い目をしたかつての後輩を、家入は笑い飛ばした。
「そもそもあの人、まだ思い出してはいないんでしょう? 何故まだ知り合って日の浅い彼女に対してああも似た行動が起こせるんですか。」
「それはまあ、紬も変わってないからだろうな。」
思い返せば、学生だった当時もこんな風に賑やかな毎日だった。
先輩や後輩、果ては教員までを巻き込み騒いでいたあの頃は、まさしく青い春だった。
吐き出した白煙の中に思い出を見つけ、懐かしむようにほほ笑む家入につられるように。七海もほんの僅かだけ頬を緩ませた。
「それは、確かに。」
そんな二人の元へ足音が近付いてきたかと思えば、ガラッと勢いよく扉が開かれる。
「あ! ホントにナナミンいたー!」
「頼む七海くん! 悠仁くんの後を継いでくれ!!」
人ひとりをおぶって全力疾走していただろうにケロッとしている虎杖悠仁と、その上で走っていないのにぐったりしている糸田紬がそこにはいた。
「今五条先生から逃げてるんだけどさ、オレ今から任務なんだよ〜。だからナナミン、先生からねーちゃんのこと守ってやって!」
「はあ……一体何したんですか貴女。」
「なにも! してない! だから怖いんだよおお!!」
わたし一人じゃまだ逃げられないし! と嘆く彼女の足には未だ包帯が巻かれていて、右腕だって吊るされたままだ。アバラを守るためのコルセットだって服の下に巻き付けているはずで、そりゃあその状態じゃあの最強からは逃げられないよなと誰もが思った。
いや、万全の体制でもきっと逃げ切ることは出来ないのだが。
ちなみに今日は、糸田紬が退院してから二日ほど経っている。
彼女が戻ってくるまでのあの静けさが嘘のように、この二日間は高専内は活気に溢れていた。単に騒がしいだけとも言えるが。
彼女が事件を起こし、拘留されていた数日間。あの時の重苦しい静寂を知っているが故に、今の明るい声が響くこの空気は心地が好い——七海は密かにそう思っていた。
だからか。素直に虎杖から受け取った彼女の身体を、七海はいっとう優しく扱いその広い背に担いだ。
「恐らくさっきの大声の道案内で、五条さんがここへ来るのも時間の問題でしょう。早く離れましょう。」
「きゃーさすが! 頼りになるわ1級様!!」
「この数日で2級にまで等級を上げた貴女には敵いませんよ。」
そんな事を言いあっては、七海糸田コンビは保健室の扉へ向かう。直前でくるりと家入と虎杖へ向き直ったかと思えば、二人は交互に「では家入さん、ありがとうございました。」「硝子! また来んね!」「虎杖君、任務気をつけて。」「帰ってきたら一緒にご飯食べようね!」とそれぞれ声を掛けて保健室を出ていった。
何の文句もなく素直に義姉を連れていった七海に内心で驚いていた虎杖は、説明を求めるために家入を見遣る。その視線を受けた家入は、ニヤニヤしながら「昔もよく、七海と灰原が振り回されてたんだよ」と簡潔に述べた。
「はは、どうりで。」
「また暫くは紬の足に使われるな。七海も虎杖も。」
「オレは大歓迎だからいいけど。」
「ならいいが。……そうだ虎杖、オマエ今から任務って言ってたな? それなら…——」
◇
「それで? 本当は何をしたんですか貴女。」
「わあお、率直〜。」
悠仁くんにライドンしてあいつ……悟から逃げていたわたしは、任務がある義弟から建人に乗り換え再び逃げ回っていた。
悠仁くんが動なら、建人は静。わたしを抱えて逃げるという条件は同じなのに、こうも動き方が違う二人の騎馬に内心で笑ってしまった。
バタバタ走り回っていた悠仁くんとは違い、建人は隠れながら周囲を気にしつつ悟から距離を取るために確実な動きをしてくれる。流石は建人、過去にもこうしてライドンしてたせいか貫禄が違うわ……。
というか高専時代よりゴリラになったからか、安定感ハンパねえ。思わず真顔になっちゃう。
その合間に聞かれた、率直な質問。それに茶化すような返事をしちゃってあわや下ろされそうになったけど、「ちゃんと答えます! 後生ですから!」とその大きな背中にしがみつけばしっかりと抱え直してくれた。
あっ、ぶねえ〜〜!! こんなところに放置されたら一瞬で捕まるわ! 建人脅し方が上手くなったね!!
「うーん、何ていうか……悟には何もしてないのは本当だよ。ただ宿儺にからかわれたのを知られてから、ちょっかいかけられるようになったの。」
「……は? 両面宿儺に?」
おう……建人のお顔が険しくなってしまった。やっぱり宿儺ってみんなにとって鬼門なのかなあ。
「いつですか。」
「えっと、拘留されてすぐ?」
「どうやって会ったんですか。」
「方法はわかんないけど、気が付いたら宿儺の生得領域にいて……」
「で、何されたんですか。」
「延々と呪力奪われてました……」
なんでだ、なんで正直に話す度に建人からお怒りモードが伝わってくるんだ。わたしが悪いみたいじゃん!
え、わたし悪くないよね?? 被害者だよわたし!!
「……五条さんが固執するのも分かる気がします。」
長い沈黙と溜め息の後、建人がまさかの裏切り発言を投下するもんだから、わたしの頭の中はどっかーんと見事にその爆撃を受ける。
「えっ、建人わたしの味方だよね??」
「両面宿儺の件に関しては、そうとも言えません。」
「大丈夫だよ! あれから宿儺に会うことないしこの通りわたし生きてるし!」
「では敢えて聞きますが、あの呪いにどうやって呪力を奪われていたんですか?」
「ダイジョウブだよ! あんなん犬に噛みつかれるようなもんだったし!」
「それが比喩だと有り難いんですけどね。」
ごめん例えじゃねーんだわ! がっつりがぶられたんだわー!
……なんて笑い飛ばして言える雰囲気じゃなくて、曖昧に笑って誤魔化せば建人からはまた大きな溜め息が。さすがにしゅんとなって、建人の背中に張り付く。
「ごめんね、心配かけて。」
「……貴女はもっと、自身への危機管理を養ってください。」
「養ったからこそ、今悟から逃げてるんだけど。」
「まだまだです。もっと気張りなさい。」
「うう……はあい。」
素直に返事をすると、建人のお怒りモードもしゅるしゅると落ち着いていくような気がした。
「まったく、何時になっても手のかかる先輩ですね。」
そう、呆れ笑いのような声で言われて安心してしまうのは、わたしが建人のことを超絶信頼してるからだ。思わずへらっと笑ってしまうのは仕方のないことだろう。
「この事、他に知っている人は?」
「建人と悟だけだよ。」
「賢明な判断ですね。変な誤解を招きかねませんから。」
「悠仁くんには話そうとしたんだけど、あの子宿儺のこと大っ嫌いだからさあ。」
もっと仲良く出来ればいいのにねえ、とボヤくと、建人は心底呆れたような声で「呪いと仲良くしようと思うのは貴女くらいでしょうね」と言うもんだから、そうかなあと首を傾げる。
「意思疎通が出来た呪いは今まで会った中で宿儺だけだから比較のしようがないけど、考え方は動物みたいに超シンプルなイメージだったよ。自分にとって良いものなら心は穏やかだし、悪いものに対しては全力で怒るし攻撃的になるし。」
動物はそのほとんどが、己にとっての快・不快で物事を決める。それは本能的に生き延びるための直感的な選択で、そんなところが似てるなあって思ったのだ。
「そう思えばイける気がして!」
「さすが獣医師。言葉の通じない動物を相手にしているだけのことはありますね。」
「んっふふー。褒め言葉として貰っとくよ。」
それに言葉が通じなくても、心は通じることが出来るのだ。全く種の違う人間とそれ以外の動物が出来るのだから、人間から産み出された呪いとだってなんとかなる気がしてもおかしくはないよね?
まあ、だからと言って容赦はしないけどさ。
「まあでも、家入さんには伝えておいてもいいかもしれませんね。仮にも貴女が再び宿儺に呼ばれるようなことがある場合、貴女の肉体を守るのは彼女でしょうから。」
「そうだねえ。怒られるかバカ笑いされるかどっちかな?」
「……後者ですかね。」
「あはは、わたしもそう思う〜。」
宿儺のことを伝えた時の硝子の反応を楽しみにしておこう。そうくふくふ笑っていたわたしだったけど……そういえば建人が、堂々と廊下を歩いていることに今更ながら気付く。
あれ? 待っていつからだ??
「……って、建人? 隠れなきゃ見つかっちゃうんだけど??」
「そうですね。むしろ早く見つけて欲しいくらいですが。」
「ちょっと??」
何を言ってるのこの子? と本気でわからずに頭上にたくさんのはてなを浮かべているわたしを、建人は少しだけ振り返って流し目で見上げてくる。
「いや何、もし仮に貴女が今後両面宿儺に呼ばれるようなことがあった場合、抵抗する力があった方がいいと思いまして。」
「……思いまして?」
「両面宿儺は、特級の中の特級呪霊。それに抗うには、特級の中の特級術師に学ぶことも多いかと思いまして。」
建人の声に混じって、背後でこの古い廊下が軋む音が聞こえてくる。たかが音なのになんだかねっとりとまとわりついて来るような感じまでして、ぞわりと背中が粟立ち鳥肌が立っていく。
——これは、もしかしなくても…………いる。
「な、七海くん、たすけ、」
「紬さん。私は先程伝えましたね。『両面宿儺に関しては貴女の味方にはなれない』と。」
「そんなハッキリとは言ってなかった!」
っていうか早く動いてっ、走って逃げてほしいのに! 建人はテコでも動こうとはしなかった。後ろから来てるって気付いてるはずなのに!!
「貴女が五条さんから逃げる理由に、かの呪いが関わっているならば。私は五条さん寄りの考えだということをお忘れなく。」
「つーかまーえたっ」
「ヒィッッ」
建人がそう言い終わるや否やぽんっと肩に手を置かれ、情けない悲鳴を上げてしまった。
後ろを見なくてもわかる、というか見たくなくてぎゅっと目を瞑ってしまったわたしの身体は、抵抗する間もなく建人の背中から別の何かに抱き上げられる。
「七海ィ、なんか昔もこんな事なかった?」
「……どうでしたかね。でもまあ、学生時代は随分と騒がしかったですよ。主に五条さんの学年が。」
「オマエらだって一緒になって騒いでたでしょーが。」
「さて。灰原はそうだったかもしれませんね。」
建人ではない、もう一人の男の声の近さにぞわぞわと恐怖していると、話は終わったのだろう。建人の「では私はこれで。」と別れを告げる声が聞こえて。
そろ、っと薄く目を開けてみれば、言葉の通り建人はわたしを鬼に——悟に明け渡し、身軽になった身体でこの場を去ろうとしていた。
うえええ!! マジで置いてくの建人のバカああああ!!!
「さーて。退院したことだし特訓の時間だよ紬チャン。」
腹の中で全力で叫んでいるわたしのうっすい視界にひょっこり入り込んできた悟の顔は、それはもういやに楽しそうで。
「逃げ回ってた分、離すつもりねーから覚悟しとけよ?」
それなのに声は笑ってないのだから、自力で逃げられないわたしはもうさめざめと泣くしか……いや待てまだ活路はある!!
「なっ、七海くんも一緒ならいいですよ!!!」
「「は?」」
◆
「……大丈夫ですか? 紬さん。無理はしない方が、」
「んん、だ、だいじょうぶ……!」
「二人一緒に相手するって言ったのはオマエだからね。ホラ頑張って。」
「七海にはわかる?」
「言われてみれば、という感じですね。五条さんにはみえてるんですか?」
「今でこそバッチリだけど、僕も初めは気付かなかったよ——っと、今手ェ抜いたでしょ紬。ちゃんとやんないと罰ゲームだよ。」
「今が、罰ゲームっ、みたいなもんでしょ……!!」
「あ、今少し緩くなったのはわかりました。」
「七海にも気付かれてるよ〜はい頑張れ頑張れ。」
「くっっっそ……!!」
「ちょ、ちょっとやすませて……!」
「は? まさかもうへばったの? ショボすぎでしょ。」
「五条さん、紬さんはまだ怪我人なんですよ。」
「じゃあ七海は離れれば〜? その間二人で楽しんでるから♡」
「……紬さん、まだ頑張れますね?」
「うそだろ……」
はいはいなんか妙な想像した人! ここは全年齢対象だから安心して続き読んでね!!
建人に裏切られ悟に捕まった時、どうしても二人きりになるのを避けるために建人を呼び止めたわたくし、糸田紬はそりゃもう必死でした。
「悠仁くんに託されたのにこんなあっさり渡していいの!?」と悠仁くんをネタに建人の良心を揺さぶり、腹の中では「悟と二人でなんてあの女に知られたらめんどい事になる絶対!!」と訴えまくった。どっちが通じたかはわからなかったけど建人がこれみよがしに溜め息を吐きながら戻ってきてくれた時はマジで泣きそうになった。感動的な意味で。
やっぱりわたしの後輩は優しい子やで……!!
『五条さん、好きな人がいるのに他の女性の尻を追い回すのはどうかと思いますよ。浮気ですか?』
『あ? それを言うならオマエはどうなんだよ。縁のこと好きな割に絶対触れようとしなかったのに、紬には随分気軽に触れるんだね?』
催眠が解けた今だからこそ、建人が今までの自分の言動を激しく後悔している節は多々見えていた。本当は好きでもなんでもない先輩を好きだと思い込まされてたんだもんなあ……そりゃドン引くよなあ……なんてしみじみ思っていると、ばちっと建人と目が合う。
卑怯な手で呼び止めてスマンな! という意味を込めて片目を閉じると、ちょっとイラッとされた。いやホントすみません面倒かけて!!
『……そうですね。折角の機会なので伝えておきましょうか。』
『何を?』
『私はもう、あの人のことを何とも想っていませんよ。ですので、あの人の争奪戦は私抜きでどうぞ。』
けっ、建人かっけえええ!!!!
わざわざサングラス外して真摯な目を見せながらの一抜け宣言に、よもや惚れかけた。いやこれで落ちる女続出するでしょ絶対!!
なんて思っていたわたしと悟の傍まで寄ってきた建人が、不意にわたしの手を取る。
『だから私がこの人にどう触れようとも、浮気ではありませんので非難される謂れはありませんよ。貴方とは違って。』
ね、紬さん。覗き込んできた建人のお顔は、何か吹っ切れたように明るい表情をしていた。
その顔を見て、あーもしかしてずっと言いたかったけど言えずにいたのかなあと思った。雄みたいに、催眠が解けてもあの女と関係を持ったままのパターンもあるけど、建人は初めからそうじゃなかった。催眠にかかっていても尚、あの女とイチャコラしなかった紳士なのだ。
だから催眠が解けた今、完全に吹っ切れた……というより、元から好きなんかじゃないってやっと公言出来たことに内心喜んでいるに違いない。『ね、紬さん。』はその同意を求めてるんじゃろ? わかってるわかってる! とりあえず全力で頷いておいた。
『だから紬さんのためにも、私も一緒にいることにします。五条さんと二人でいる所をあの人に目撃されたら、今度は何されるかわかったもんじゃない。』
と、いう過程を経て悟と二人きりになることを免れたわけだけど、この時こそなんかバチバチだった悟と建人は特訓が始まったと同時に意気投合し始めるからとんでもねえなって思った。
特訓内容は至って簡単、二人と身体の一部を触れ合わせたまま、呪力排出と生成のコントロールを磨くというものだ。意識して自分の呪力を外に出す……ここで言えば悟や建人に流し込む量の調節と、同時に同量の呪力を生成するんだけど……。
二人の人間に同時に触れてる機会なんてそうそうないじゃろ? ハイタッチみたいなほんの僅かな時間はいいとして、こうも長い時間触れてるとそりゃあもう呪力が出ていくわ出ていくわ。作るそばからわたしの身体を伝って二人の方へ流れていっちゃうから、結構、いやだいぶしんどいのなんの。
しかも集中しようと思えばちょっかいかけてくるから鬼かと思った。それならせめてと量を減らそうと意識すれば、六眼で呪力の流れを察知され怒られるし。今だけその目くり抜いて置いといてもらえません?? いや冗談だけど。
建人がいるお陰で、病院でやられたような変なちょっかいがないだけまだマシだった。むしろそれをされないために建人のこと呼び止めたんだけど。
でも集中を削ぐためにきわどい触り方すんのやめてほしい。悟の手から逃げようとすれば建人の手に捕まるし、逆も然り。
触れてる面積によって呪力の量が変わるのかって試されるし。ゴリラとゴリラに挟まれて圧死するかと思った。
とにかく、ようやく終わる頃にはへろへろになっている紬ちゃんがいたのでした。
終わってくれ!!