21、刑執行
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この小説の夢小説設定 過去に呪術廻戦の世界へトリップしたことのある主人公が、もう一度トリップしてみたら自分のポジションに成り代わる人間がいた。
べつにそれに対しては笑い話で済む話だけどちょっと待って??過去の友人とイチャイチャ??気持ち悪いんでやめてもらえません???
これは、主人公が自分の立ち位置を正しい場所に戻すために奮闘する物語である(?)
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※※※
・夏油さんの術式の詳細は捏造です。ご容赦ください。
・かっこいい夏油さんはおりません。
刑執行までの猶予期間として与えられたこの五日間。わたしはいつものように作業着に着替え、頭にぬいぐるみを乗せて脚立を片手に敷地内を闊歩していた。ただいつもと違うのは、悠仁くんが常に隣にいてくれることだ。
思えば、再びトリップしてきてからあの事件の日まで、悠仁くんと会わない日はなかった。だからかなあ。拘留されていたあの部屋で、建人達とは顔を合わせていたけど少し物足りなさを感じていたのは。
再会した直後のあの悠仁くんの笑顔。可愛すぎてねーちゃんの心のメモリーにしっかり刻んであるよ。
そしてその物足りなさを、悠仁くんも感じてくれていたのかなあ。聞いてはいないけど、行動が物語っているような気がするので敢えて聞くのは止めておいた。
ピロリロリーン!
「悠仁くん、次の子ちょうだい。」
「うい。このぬいぐるみの名前はどうするん?」
「ピンクだからピピちゃん。」
「安直〜。」
というわけで、悠仁くんにはぬいぐるみ持ちを頼んでいる。
仕事中にもぬいぐるみに呪力をこめこめして、満タンになり次第次の子と交換する。その子たちのお守りを頼んでいるのだ。
うーん、キモかわいいぬいぐるみに囲まれる義弟……kawaii。
「ところで、何でねーちゃんの付ける名前ってピピとかキキとか、音が続くもんなの?」
「覚えやすいし、どの音でも可愛くない? ジャジャもジュジュもジョジョも。」
「最後のはなんか違う作品思い出すからやめときな?」
「うい。」
ちなみに、今までのわたしだと一つのぬいぐるみに呪力を満タンにするには二日〜三日ほど時間がかかっていた。しかし拘留後は数時間で満タンに出来るようになっていて、一人で目ん玉が飛び出すくらいびっくりしたっけ。
ようは、呪力操作と呪力生成がべらぼうに上達していた。でも意識して流そうとするとやっぱり上手くはいかなくて。今までみたいに無意識でやるのが一番効率が良さそうだったから、今までみたいに意識せず身体に触れさせるだけにしている。
心当たりは……無いことはない。が、アレはわたしの中で既に〝無かったこと〟として忘れたい記憶第一位なので、知らぬ存ぜぬで突き通すよ!
◇
「いつかやると思ってたわ。」
「何だよ、やるならやるで呼べよ紬。」
「ツ〜〜〜ナ〜〜〜。」
「今回は相手にしてやられたな。」
ちなみに、学生達の反応はこんなもんだった。うっす……と思ったのは内緒で……いやありがたい限りである。わたしvs傑のことも知っているようで、頑張れよと応援されればすぐ元気になったけどね!
「うちの呪具貸してやるよ。あとで見繕おうぜ。」
「ありがとう真希ちゃん〜! 頼もうと思ってたの。」
「で、一通り使いこなせるようになってもらうからな。」
「きゃあ〜! スパルタの予感〜!」
「お前の肩書き上、そこまで等級差のある呪霊を出してはこないと思うが……正直今の傑はどう動くかわかんねーからな。用意しすぎでいこうぜ。」
「しゃけー。」
「そっか、紬さん4級なんだっけ。なんか勝手に私より上だと思ってたわ。」
「え、貫禄があるって? 照れるなあ〜。」
そんな風にきゃいきゃいしてる中でも、伏黒くんだけはその輪に入ってくることはなくて。一騒ぎして落ち着いた頃に、わたしは伏黒くんに向き合ってその両手を取った。
「伏黒くん、ごめんなさい。」
「……紬さんは何も悪くないっすよ。悪いのは、」
「ううん。守ってあげられなかったのはわたしの所為。あの子を巻き込んでしまったのも……わたしの所為だ。」
忘れることなんて、出来るはずがない。脳裏に張り付いた、あのねこちゃんの最期は夢に見るくらいわたしの中に根付いている。——多分、一生。元の世界に戻ってからも決して忘れることなどないんだろうなと確信している。
「助けてあげられなくて、ごめん。」
「……でも、仇はとってくれたじゃないすか。」
伏黒くんの手を握っていたわたしの手を反対に握られ、自分よりも大きなその手にすっぽりと覆われる。
あったかくて、細いけどちゃんと大きい、男の子の手をしていた。
「それに、ちゃんと弔ってくれたって七海さんから聞いてます。それで十分です。」
「伏黒くん……」
「でも、夏油さんとの戦いで負けたら紬さんの行動が間違っていたと言われ兼ねません。ちゃんと勝ってきてください。」
「ぉうす!」
「何で噛むんすか台無しっすね。」
「伏黒くんが冷たい!!」
◇
とまあ、無事に伏黒くんともお話出来たからよかった。
その後会った潔高くんには泣き付かれ硝子には「死なない限りは治してやるよ」ととても心強いお言葉を貰ったので、紬ちゃん元気モリモリで頑張りたいと思います。
建人と雄は、とりあえず今まで通り催眠に掛かっている体でいることにしたらしい。水面下でいろいろと動いてくれるようだ。
と、いうことで。ちゃっかり頼み事をしたところ、超嫌な顔をしながら承諾してくれたのは記憶に新しい。
「んふふ。」
「? 何どったの?」
「いや、いつの間にか仲良くしてくれる人が増えたなあって思って。」
悠仁くんと出会い、潔高くんと再会をした日。あの時はまさかこんな風になるなんて思ってもみなかった。悟や傑と会った時の印象だってクソ最悪だったし、他の人達とも上手くやっいけるのかそれなりに心配していたんですよこれでも。
なんて思いしみじみしているわたしに、悠仁くんはあからさまな溜め息をひとつ。え、何その反応? と首を傾げるわたしに、「ねーちゃんってさあ」と悠仁くんがボヤいた。
「やっぱりにぶちんだよね。」
「にぶ?」
「だって本来だったら、こんなに苦労する必要なんてなくて、もれなく全員と仲良くいられたわけでしょ?」
なのにそんなこと言ってさあ、と肩を落とす悠仁くんに、わたしは雷が落ちたような衝撃が走る。
「……そっか! 嫌われがデフォかと思ってたけどそりゃそうだよね!」
「なんで嫌われる前提なのかがわかんないけど。ねーちゃんならみんなほっとかないから大丈夫だよ。」
「えっ、わたしモテ期来たことないし守りたくなるような見た目も性格もしてないけど……?」
「そんなんじゃなくて。ねーちゃんって構いたくなる性格してんだよね。打てば響くというか……あと、ねーちゃんの傍は心地好いからね。」
みんなそう思ってると思うよ。と自信アリアリなお顔で断言されてしまい、実に反応が困りますええ。絶対悠仁くんだけだと思う! って言いたいけど、裏を返せばつまり、少なくとも悠仁くんはそう思ってくれてるってことを認めてしまうことになる。
何それ、恥ずかしい! 拗れた性格持ちのアラサーが素直に喜べると思ったら大間違いだよ!
思わずぬいぐるみで顔を隠すわたしに何を思ったか、悠仁くんがにんまりとした笑みでもって覗き込んでくる。
「あれ、照れてる?」「照れてない!」と不毛な争いをしつつも、お互い口角は笑ってしまっているからもうどうしようもない。
嬉しくて、楽しくて。こんな日が明日以降も続けばいいと、刑執行の前日に罪人が思うのは許されることだろうか。
◆
「やあ。逃げなかったんだね。」
「逃げる意味がありませんからね。」
——刑執行日。
校庭の中心に、わたしと傑は立っていた。
わたしの背後には十数の呪具、全部高専や真希ちゃんから借り受けたものだ。その形は様々で、近接、中距離、遠距離用で一通り揃っている。
どれも本来備わっている呪力に加えわたしの呪力が混ざっている程度のものだから、悪癖のことはバレないだろう。
「わたしは、わたしの罪を認めています。だから罰を受けに来ただけです。……相応かは判断できかねますが。」
「その割には、反省の色が見えないのは気の所為かい?」
「彼女にあれだけ酷いことをしておいて」と傑が促した方には、車椅子に乗った手足包帯ぐるぐる巻きのあの女がいた。その左右には建人と雄が女を守るように立っていて、女の膝には覚えのあるぬいぐるみがちょこんと置かれている。
それを一瞥だけして、すぐに傑へ向き直った。ちなみに女の顔は見ていない。
「——退院したんですか。それはそれはオメデトウゴザイマス。それにしたって随分大袈裟な見てくれじゃないです? 傷は硝子に治してもらったんでしょう?」
「身体の傷より、彼女は心にそれ以上の傷を負ったんだよ。君が誠心誠意、謝罪をするというならあの子の傷も少しは癒えると思うのだけれど。」
「謝罪? 何故? わたしはわたしの正義に従ったまでのこと。——間違っているなんて思いません。」
謝れば治る心の傷なんて随分ちっちぇえ傷だこと! と言わないでおいたわたし超偉いと思う。それでも十分煽ってたみたいで、初めこそ笑みを浮かべていた傑の顔にはもう何の感情も浮かんでいない。
……でも、ああ、目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。
傑の細めの目に見えるのは、強い怒りだ。
「さ。そろそろ始めましょ。貴方も我慢の限界でしょうし。」
「……そうだね、そうしよう。」
促したわたしに乗った傑は、自分の周囲に呪霊をいち、に、さん……はは、10体出現させる。
「——ではこれより、糸田紬への刑を執行する。
私が選んだ呪霊100体を相手にしてもらうことが執行内容。もし100体全てを倒せた暁には、今回の事件について不問とする。執行中、他者の干渉は厳禁。
——尚、執行中に負った怪我、万一にも死してしまった場合でも、こちら側に一切の責任はないものとする。
以上、承諾してくれるかい?」
傑が告げた内容と突然出現した呪霊の数に、ギャラリーは騒然とする。傑に抗議する学生達の声、戸惑いの悲鳴をあげる補助監督さん達や高専関係者の人達に、
「ねーちゃん……!」
悠仁くんの、声。その心配げな声を聴きながら、わたしはおもむろに手を前へ伸ばして。
パパパパパン!! と銃声を響かせた。
わたしの手には銃型の呪具、飛び出した弾丸は呪霊全てに命中し、たちまちザフッと消えていく。
「この銃声を開戦の狼煙として、謹んでお受けいたします。——さあ、あと90体。大切な呪霊が減っても文句は言わないでくださいね?」
腹の中では良かった当たったー!! と感涙しながらも、傑に対しては不敵に笑ってみせたのだった。
◇
『常に先手を打っていったほうがいい。後手に回ったらあっという間に囲まれて呪霊からリンチ喰らうからな。』
とりあえず初見殺しに、最初はこれを使え。真希ちゃんに渡されたのが、件の銃型の呪具だった。
何でも真希ちゃんの双子の妹・真依ちゃんが銃を使って戦う遠距離タイプなのだそうだ。彼女からインスピレーションを受け、わたしの戦闘スタイルに組み込めないかと考えてくれていたのだと聞かされた時は、単純に嬉しいやら妹ちゃんのこと好きなんだなあと微笑ましいやらで変な笑顔を向けてめっちゃしごかれたっけ。
でもそのおかげで真希ちゃんの作戦通り、最初のうちに10体も落とせたのは大きかった。その後は傑も油断することなく呪霊を出してくるし、呪霊自体も動きが素早かったりしてわたしの付け焼き刃の銃の扱いでは弾を当てることは出来なかった。
だから、それからは武器を変えわたしの得意な近接戦闘に持ち込んだ。常に先手を心掛けて、出てきたところを叩くといったスタンスを基本として、次から次へと倒していく。
武器が壊れたらまた新しいのを、途中でも武器を変えたりしながら、何とか食らいついていく。それでも三体以上を相手にしなくちゃいけないこともあって、わたしの身体も無傷ではいられなかった。
合間に、呪霊にわたしの呪力を流したらどうなるのかなとふと思った。が、すぐにその考えは却下する。呪霊はぬいぐるみとかとは違って、呪力を持った化け物だ。どちらかと言えば人に呪力を流すイメージだから、わたしの意思を伝えて操れる可能性は限りなく低いし、操ることに関してはプロである傑に勝てる見込みは無いからだ。試してみる余裕は、残念ながら今はない。
「あと40!」
残り半分を切った辺りから、呪霊の強さが急に上がった。
それまでは3級〜準2級レベルで、それだって4級の糸田紬には強敵に違いないけど、かつての紐束縁の等級は2級だったこともあってまあ対応出来ていた。
でもこの頃から呪霊の等級が2級、または準1級レベルになってきた気がする。傑も一度に出現させる数が減っていて、それはきっと一体あたりの強さが比例してるんじゃないかなと思った。
「あと、24!」
一度に相手にする数は減っても、個体数が強ければ倒すのに手間が掛かるのは必然で。加えて、残っている武器はあと二種類。
——うーん。これはちょっと、しんどくなってきたかもしれない。
それでも動きを止めたら一気にやられるから、先手を取るために呪霊に向かって駆けていく。でも攻撃は防がれ、生じた隙を突かれ腕を掴まれたわたしは、そのままぶん投げられた。
やばい、と思った瞬間には地面に叩きつけられていて、ギリギリ取れた受け身のお陰ですぐに立ち上がることは出来た。でも掴まれた力が強かったせいか、右腕が折れている感触があった。
——痛い、めっちゃ痛いけど、気取られるな。
持っていた武器も壊れてしまったので、捨て置いて新たな武器を手にするため置き場まで走る。そして一番相性のいい武器……刀を取り構えたところで、呪霊はぴたりと動きを止めた。
それまで黙っていた傑が、眉間に皺を寄せたまま話しかけてくる。
「……驚いたよ。まさかここまで耐えるなんて。」
「……そりゃどうも。」
「いや、本当に驚いてるんだ。呪術師としての強さも2級くらいはありそうだし……勿体ないな。」
「ここで死なすには、ですか? 生憎貴方の思い通りにはなりませんよ。」
怪我してボロボロのわたしがそう言うのはただの強がりだと思われたかもしれない。実際その通りではあるんだけど、まあ虚勢を張っている今、それを悟らせるにはいかないからなんて事ないように答える。
すると傑は顎に手を充て少し考える仕草をして。
「私の思い通りに、か。じゃあこれは予想出来ていたかい?」
「……あ?」
そう言って傑が横にずれると、彼の後ろに一体の呪霊がいた。そしてその手には、一匹の黒猫の姿があった。
黒猫の姿を見た瞬間、またあの時と同じような感覚が蘇る。脳が熱く燃え滾り、そして一気に冷めていくようなあの感覚が。
「取り引きをしないかい?」
傑の声が、耳を通過していく。
「貴女がこれ以上、手を出さずに大人しくやられてくれる、または縁に謝罪をしてくれると言うなら、この猫はすぐに解放しよう。でもそれを拒否すれば、この猫は殺す。」
何を言ってるんだろうか、この男は。いや、あの女の差し金だろうか? わたしにとって一番効果覿面な脅し文句を吐く傑に、周りの一切の音も、傷の痛みさえもなくなっていく。視界には目が笑ってない笑顔の傑、呪霊に捕らわれた黒猫、そしてそれらの奥に見えるあの女の狂気的なまでに歪んだ笑みが映り込んできて、いっそ吐き気すらした。
——でも、女の膝に乗っているぬいぐるみを見た途端、わたしは正気を取り戻していく。
「……随分、非道なことをするんですね? 特級ともあろうお方が。」
「貴女相手の交渉材料としては相応しいだろう? で、どうかな。謝るだけで自分と猫の命が助かるんだ。悪くない話だと思うけどな。」
「確かに、その通りです。わたしが拒否することでその子が殺されるというなら、わたしはそうならないようにするんでしょう。」
「それなら——」
「でも、非道には非道でお返しするのがわたしの流儀なので。」
そう言って、パチン、と指を鳴らす。
その行動に傑は身構えたが、わたしや傑には何も起こらなくて。「きゃあ!」と響いた悲鳴に傑が、ギャラリーが声の方へ振り向くと、そこには人一人分の小さな結界に閉じ込められたあの女がいた。
「縁!」
「ちょっと! 何なのよこれぇ!?」
その結界の中には、あの女とぬいぐるみだけが入っている。そしてそのぬいぐるみがもそもそと動き出したかと思えば、女の肩によじ登っていき、自分の体の中に隠してあったナイフを手にその刃を女の首に当てているではないか。
「ヒッ……!!」
「縁!! ……お前、縁に何をした!」
あの女の危機的な状況を見て、傑が鬼の形相でわたしへ向き直る。対してわたしは、へらりと笑うだけだ。
「何って、特殊な結界に閉じ込めて人質に取りました。外から結界を解こうと妨害したり、またはその黒猫を殺したら、わたしは今度こそあの女を殺しますよ。」
わたしの説明に、傑は慌てて結界を解こうとしていた建人や雄の動きを止める。後輩二人は騒ぐあの女の必死な様子を間近で見守るだけとなり、誰もが女から距離を取っていく。
「わたしの弱点がバレているのに、何の対策もしていないと思ってました? 残念ですね。あの女なら何かしてくるだろうと予測済みでした!」
「お前……!!」
「いやいや、そもそもそちらが汚い手を使わなければ、わたしだってあんな事はしなかったんですよ? それなのに、貴方達がそんな事するから……」
よよ、と泣き真似をするわたしを、傑は親の仇を見るような目付きで睨んでくる。正直怖いっちゃ怖いけど、わたし悪くないし!! と言い張っておく。
「さて、取り引きしましょ? 夏油さん。貴方がその猫ちゃんを解放してくれるなら、わたしもあの結界を解いてあげます。ぬいぐるみにも手は出さないよう伝えますよ。」
こんな破格の条件、飲まないわけがないですよね? と言外で伝えると、傑は忌々しげに舌を打ってから呪霊に黒猫を解放するように伝える。放された猫が一目散に逃げていくのを確認してから、わたしはもう一度パチンと指を鳴らした。
すると女を囲っていた結界は解け、意思を無くしたぬいぐるみもナイフと一緒に地面に転がる。
「……悟、縁を守っていてくれ。」
危険から解放された女は青白い顔のまま、どこからともなく現れた悟に泣き付いていた。
……え? というか悟、ホントに今までどこにいた??
そういえばギャラリーにいなかったな? 違うところで見てたんかな。と頭を捻るも、まあ今はどうでもいいことなのですぐに頭から追い出す。それもこれも、傑のお怒りがまたわたしに向いたからである。
「糸田紬……一度ならず二度までも。」
いや、自業自得じゃん。逆ギレされても困るっつーの。と腹の中でボヤくものの、わたしだってキレているのだ。非道には非道で返すし、売られた喧嘩は高値で買ってやんよ!
これで、わたしの悪癖のことはバレるかもしれない。
「挑発してきたのはそっちです。でもまあ、お望み通り乗ってあげますよ、特級様。」
でもそんな事、もうどうだっていいわ。
「残り24体。ここからは本気で行きますので、どうかついてきてくださいね?」
傑にそう告げたわたしは、片手で刀を構え、大きく息を吸う。
そしてどこからか飛び出してきた〝彼ら〟に、わたしはひとつの意思を伝える。
「ぬいぐるみ戦隊、総員出動!! 出てくる呪霊を、祓って祓って祓いまくれ!!」
——さあ! 楽しい狩りの時間だぜ!!