伏黒
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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『これから、大将のことよろしく頼むぜ。旦那』
あの小さな神様に言われた言葉の意味を五条から聞かされ、伏黒恵はどうしたものかと頭を悩ませていた。
その女と伏黒の再会は、意外にも早く訪れた。
「はいみんなちゅうもーく! 今日から臨時講師となった先生を紹介しまーす」
「審神者です。高専卒業したあとは訳あって七年間引きこもってました。みんなよろしくお願いします!」
「何だって??」
来たる二ヶ月後の、京都校との交流会へ向けて一年生と二年生が鍛錬を重ねている時に現れた五条。その後ろには覚えのない女性と少年の姿があり、皆が首を傾げる中で唯一彼女達を知っている伏黒は「あ、」と声を洩らした。
意外な反応をする伏黒に隣に居た釘崎野薔薇が知り合いか尋ねようとしたところ、五条と女性自らが紹介を始めたことで彼女の意識はそちらへと向く。クソみたいな自己紹介に、突っ込まざるを得なかったのは言うまでもないだろう。
「〝審神者〟ってのは、ウチ特有のお役目の名称でもあるんだけどわたしの呼び名でもあるの」
「じゃあ、アンタ……サニワさんには名前がないの?」
「わたしの名前はちゃんとあるよ。でも知らないの。うっかり知られると取り返しがつかなくなるから」
「どういうこと?」
「ウチは昔から、刀剣の付喪神様達と主従関係を結んでるんだけど……それを結べるのは審神者だけで、その神様達に〝真名〟を知られると神隠しされちゃうんだ」
「……なんか、とんでもないワードを一気に言われた気がするのは気のせい?」
「大丈夫だぞ釘崎、気の所為じゃねーから」
「しゃけ」
「刀剣ってことは、名字家の奴か」
「お、よくご存知で。えーと、」
「真希。禅院真希だ」
「禅院家! なんか凄いところだ!」
それから暫くは、女性……審神者への質問タイムへと時間を費やした。あまりにも謎すぎる審神者に矢継ぎ早に繰り出される質問に、審神者は隠し立てすることもなく朗らかに答えていく。反対にと審神者から生徒達へ紹介を促せば、各自俺は私はと名乗りを上げていった。
呪具使いの真希、呪言師の狗巻棘、芻霊術式を扱う釘崎、と簡単に紹介をしていき、みんなに倣い伏黒も軽く会釈した。
「あの時は、どうも」
「わたし何もしてないけどね。怪我はもう大丈夫?」
「はい」
「なら良かった」
本当に安心したように笑うものだから、伏黒の目が驚きで僅かに大きく開かれる。それに気づいた者は居なかったため、触れられることはなかった。
「俺はパンダだ」
「パンダ?」
「パンダ」
「そっかあ。もふもふしてもいい? セクハラにならない?」
「ならんならん。俺はパンダだからな」
「わあい」
最後に、二足歩行で喋るパンダを相手にしてもなんて事ないようで、この人は大物なのかそうではないのか。判断できかねた伏黒は、早々に考えることを放棄した。
ちなみにこの時初めて、審神者の持つ警察手帳ならぬ〝呪術師手帳〟が他の呪術師には支給されてない、五条お手製のイタズラグッズであることが判明する。それを聞いた審神者が羞恥に頬を赤く染め五条を振り返るものの、当の五条は質問タイムが始まったあたりで既にこの場から姿を消していた。やり場のない恥ずかしさや悔しさで叫び出したいのをぐっと堪えた審神者は「超恥ずかしい……わたしドヤ顔で伏黒くんにこの手帳見せちゃったよ……」と両手で顔を覆っていた。
「審神者の階級も適当か?」
「それは合ってる……」
「マジか」
「明太子」
審神者が1級呪術師であることにみんながまた目を剥く中、そんな審神者の肩を叩いたのは狗巻で、彼は審神者の背後に静かに待機している少年を指差す。一通り互いの紹介を終えた彼らの興味の矛先は、未だ謎の少年に向けられているようだった。
「あ、そうだ忘れてた。彼は薬研藤四郎、短刀〝薬研藤四郎〟の付喪神様です」
忘れていたという事実に呆れた一同だったが、その後に告げられた言葉の方が衝撃的で伏黒以外の生徒達が「……は?」と呆気に取られる。彼らからしてみれば神様の存在を忘れるなんてどういう……? と戸惑いが生じるわけだが、その様子が気にならないのか気づいていないのか、審神者本人は「本人達は神様って呼ばれたくないみたいだから、わたしは刀剣男士って呼んでるよ」とのんびり補足していた。
審神者より一歩前に出た少年が、ふっと儚げな印象の笑みを浮かべる。
「よお、薬研藤四郎だ。こんなナリだが、人間の年齢で言やウン百歳ってところだ。まっ、俺っちのことは気軽に「薬研ニキ」とでも呼んでくれや」
しかし見た目とは裏腹の、まさに竹を割ったような堂々とした物言いに、先程感じた儚さは一瞬にして消え去る。そのギャップにも皆幾らかやられたのか、生徒達は身体を動かしていたわけでもないのにぐったりと疲れた顔をしていた。
審神者が現れてからというもの、驚きの連続でもう何がなんやら。一足先に事情を知っていた伏黒でさえ若干ついていけてないのだ、審神者と付喪神——刀剣男士の存在に、生徒達は置いていかれっぱなしだった。