五条、鶴丸
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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「〝鶴丸国永〟」
膝で眠る五条の頭をゆっくり撫でながら、審神者は一振の名を紡ぐ。顕現に応じた鶴丸は桜の花びらを舞わせながら審神者の背後に現れ、ソファの背もたれからヒョイと男の寝顔を覗き込んだ。
「なんだ、坊は眠っているのか」
「珍しく感情が揺れ動いていたみたいだから……誰かさんのおかげでね」
頬をつつこうとする鶴丸の手は、男の無意識下の術式に阻まれ触れられずに終わる。つまらないと言った顔をする鶴丸を審神者が睨め付けながら「あんまり意地悪しないであげてよ」と頬を膨らませた。
「意地悪とは心外だな。俺は坊と親睦を深めようとしただけだぜ?」
「つまり、何か言ったのは認めるのね」
「坊があからさまに嫌な顔をするから、つい口が過ぎたんだ」
「鶴丸って昔から先輩のことお気に入りだよね……同じ〝五条〟だから?」
「それもあるが、打てば響くから話していて楽しいってのもあるな」
「だからって悩ませないであげてよ」
高専時代から五条は鶴丸が嫌い、というより苦手であるが、鶴丸に限ってはそうではなかった。裏表のない審神者とはまた違うタイプの、良くも悪くも明け透けな物言いには好感が持てたし、人間にしては力も申し分無い。付喪神相手に自らを謙ることもしない、自信に溢れている様は見ていて不快になることはなかった。
つまり、鶴丸は鶴丸なりに五条の事を可愛がっているつもりなのだ。それを相手にどう思われようが構いやしない、と思っている以上、五条に対する態度を改めることも今後無いだろう。
「悩むほどの事でもないだろうになあ」
「まあ、それに関しては鶴丸に同意だね。葛藤したところで先輩が夢を諦められるわけないんだし……みんなが先輩の夢に乗っかってるだけなのにね」
言い出しっぺの法則というものだ。自分では行動しない弱い人間が、声を上げ行動してみせる強い人間に「自分もそう思っていた」と同調してみせ、自分の夢を託す。ここで恐ろしいのは、託すだけ託して強い人間に丸投げする人間がいるという事だ。共に夢を叶えるのではなく、自分の夢を他者に押し付け、何もせず高みの見物をする人間がいるのだ。叶えばまるで自分の手柄だと言わんばかりに威張り散らし、叶わなければ行動していた人達を責め立てる。残念な事に、そんな人間は決して少なくはない。
「先輩は、ただ前だけ向いてればいいのにねえ」
そんな人間達は振り落としてしまうくらいのスピードで、ただ突き進んでくれればいい。我武者羅に走ってくれていい。強者に心惹かれた弱者は、自ずと着いていくから。自分で選択して、道を決めて、後をついてゆくのだから。
勿論、疲れた時は立ち止まってくれていい。後ろを振り返ってくれていい。その時見える顔触れは、きっと本当に信の置ける者達しか居ないはずだから。
……それが出来ないのが五条の優しさであり、植え付けられたトラウマでもあるわけだが。
「ま、上に立つ者こその悩みや葛藤だね」
「大変だあ」と、数多の付喪神の主である審神者はどこか他人事のようにぼやいては、労わるように五条の髪を梳く。自分は触れられなかったそれに易々と触れる審神者に、鶴丸は五条の心情を見た気がした。
「ちなみに、他には何もしてないでしょうね?」
「あとは……遥々あの家まで来た坊に褒美として君の裸体をチラ見せしたんだが、まるで反応が無くてなあ。君、女子としての魅力が足りないんじゃないか?」
「ちょっと待って。何て??」
男のが駄目なら、と言った具合で審神者の頬をつついてくる鶴丸の行動を特に止めもしなかった審神者だったが、聞き捨てならない言葉を聞いて思わずその手を掴む。横を向けば近くに鶴丸の顔があり、その顔がみるみる愉快そうに変貌していく。反対に、審神者の表情はみるみる色を失くしていった。
「わたしの裸を? 先輩に見せた??」
「君の上半身を、坊に見せたぜ」
「……逆セクシャルハラスメント!!」
思わず大声で叫んでしまうのは、仕方のないことだろう。
「いつ!?」「君がこちらに戻った時だな」「なんで!?」「言ったろ、親睦を深めようとしただけだって」などと問答を広げる二人の温度差が凄まじい。片や顔色を蒼くしたり赤くしたりと忙しないが、片や飄々といつもと変わらない調子だ。審神者にとって、鶴丸のその態度は憎たらしくてたまらない。
「あああだから先輩、わたしのお腹摘んで重いだのなんだの言ってたんだ……!」
そう嘆き頭を抱える自分の主を見て、鶴丸は頬を緩ませる。
五条も、審神者も、感情豊かに人生を謳歌している。面白可笑しく、時には悩み苦しみながらも、心を動かし自身の生を輝かせている。
それが、鶴丸にとって何よりも嬉しい。
『不変の場所に居たって、刺激がなくて退屈なだけだ。——そんなの、面白くないでしょ?』
三ヶ月前、鶴丸の問いに対し五条はそう答えた。人生には驚きが必要だと提言する鶴丸にとって、その答えは正解とも言えた。だから鶴丸は、審神者をこちらに戻したのだ。
「え、大丈夫かなこれ、わたしが訴えられたりしない? 痴女だって言いふらされたりしないかな……」
「ぶはっ!」
すべては、我が主が素晴らしい人生を送るために。
主を通して、自分の心が退屈しないために。