五条、鶴丸
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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「おはよ、審神者」
「……おはようございます。ごじょ先輩」
審神者の目が覚めた時、最初に見たのは五条悟の顔だった。
常時目元を覆い隠す目隠しやサングラスを装着していない、まっさらな素顔。透き通るような白髪や白い睫毛、宝石を嵌め込んだかのような青い瞳。その他のパーツの造形も完璧で、顔だけを見れば世の女性達が虜になってしまう程の整った顔——それが間近にあった。
もしこれが他の女性であれば、前述の通り頬を赤らめたりと何らかの反応を見せるのだろう。
「ご無沙汰しております。息災ですか?」
「相変わらずブレないねお前」
しかし、審神者に限ってそんな反応は期待してはならない。何故なら彼女の使役する付喪神達は揃いも揃って〝顔が良い〟。産まれた時から彼らと共に過ごしてきた審神者にとって、イケメンとは今更黄色い声を上げて反応を示すような種族ではないのだ……審神者と五条が初めて出会った際、その事案で一悶着あったのだがそれはまあ、機会があった時に語るとしよう。
三ヶ月前に一度会っているが、相も変わらず昔と変わらない様子に、それでも五条は嬉しそうに笑い後輩の額を小突くのだった。
「僕は元気だよ、なんたって最強だからね」
「それは何よりです。それより此処は……?」
「僕の家。審神者が全然起きる気配ないから、お持ち帰りしちゃった」
「それはそれは、ご迷惑をおかけしました」
全く色気のないやり取りは五条の「揶揄い甲斐のない奴〜」という不満で幕を閉じる。青と白が離れていったことで審神者もようやっと五条の膝から起き上がったのだった。
「それにしても、出戻り早々宿儺と対峙するなんてね。審神者持ってんねー」
「わあいこれっぽっちも嬉しくねえです」
あれから。五条の作った朝食を二人で頬張りながら互いの近況を報告しあった。
審神者は元々、お家のやんごとなき理由で高専卒業後は家に戻る約束で学生生活を送っていた。学校で呪力の扱い方や知識を学び、戦い方を知り、自衛の術を身に付けたら、残りの人生は審神者としてのお役目を全うするのだと一族中から言われていたからだ。ちなみにここでいう〝お役目〟とは、簡単に言えば三つ。
基本引きこもって自分で自分の身を守りながら少しでも長く生きてね。
付喪神達の機嫌を損ねないでね。
審神者の力を継ぐ子供を産んでね。
というものである。
まだ何も知らなかった高専入学前の審神者は「そういうものなのか」と特に疑問を抱くことも無かったのだが、しかし彼女が入学したその年、当時三年生だった五条達と出会い、同級生達と苦楽を学び、世界の広さを知ってしまった。
その影響をモロに受けた審神者は自身の卒業式前日に一族の者を集め声高々に宣言してみせたのだ。『審神者としての責務は果たすけど、それは名字のためじゃない。長生きとか子供とか知らんわ!』と。これを聞いた当時教育実習生だった五条が腹を抱えて笑ったのは言うまでもない。
『わたしは〝審神者〟として生きるのと一緒に、〝呪術師〟としても生きていく。例えそれで早く死のうが、わたしが満足していれば男士達は喜んでくれるもの』
そう告げた翌日、無事に卒業式を終えた審神者はそのまま文字通りこの世からいなくなった。自らの生得領域に引きこもったのだ。ちなみに、睡眠を鍵として昔から現世と本丸を行き来していた審神者だからこそ容易に出来る芸当であり、長時間意識を肉体から放すなど五条でも不可能である。
『一族全員の考えが変わるまで、わたしは戻りません。その間、名字のお家に男士達からの加護も受けられませんので悪しからず!』
それから実に七年もの間——三ヶ月前、名字家に保管されていた審神者の肉体に五条が会いに行くまで、審神者は刀剣男士達とずっと共に居たのだ。
勿論、ただ逃げ隠れていたわけでもなく。
「戦のことや人間のどろどろした感情・関係性を、彼らはずっと傍で見てきましたからね。いろいろ教わりましたよ。あと、主従関係を結んで顕現出来る男士の数を増やしたりとか」
「引きこもり前は六十ちょっとだったっけ?」
「今は九十四振になりました」
「ヤバイね(笑)」
ただの呪霊じゃない、末端とはいえ神を使役すると言うだけでもとんでもない話なのに、事も無げに、むしろちょっとドヤった顔で胸を張る審神者に、流石の現代最強も失笑を禁じ得ない。伊達に数多くの神達に愛される人間ではないなと思うと同時に、七年間も俗世から離れたところで過ごしていた所為もあってか、五条より二歳下の実年齢よりも若干精神年齢が幼く感じた。
「——で、いろいろ学んで、呪術師として復活して早々呪いの王と実際に会ってみて思ったことがあるんですけど」
かと思えば、次の瞬間には先程までの幼い印象から一転、艶やかに微笑んでみせて。
「宿儺の器の少年、生きてますよね?」
純粋で無知だった学生時代の少女はそこには居らず、大人としての狡猾さをしっかりと身に付けた一人の女が居た。
「……審神者が僕好みの女になって帰ってきてくれて、ほんとに嬉しい」
五条悟の〝夢〟がまた一歩、しかし確実に近付いたような心地に、男の青は綺麗に細められたのだった。