五条、真人
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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五条の緩い合図で始まった交流会の様子を、審神者は部屋の一番後ろから眺める。先程五条に「隣においで」と誘われたものの、自分を守ってくれる男士達のこともあり丁重にお断りした。
「それにしても、仕合というのはいつの時代も心が躍るものだな。」
「お頭、いつも手合わせ楽しそうだもんな……にゃ。」
「あら、じゃあ本丸でも団体の模擬戦でもしてみる? 同田貫とか喜びそう。」
「ああ、それはいい。私や子猫はまだ練度が低いし、この身を動かすことが些かぎこちない所もあるから。」
「ふむ、検討してみましょう。」
声を潜めて小さく盛り上がっていると、ふと画面の一つに虎杖悠仁の姿が映る。
「ほう……」
その姿はすぐに見えなくなってしまったものの、初めて虎杖を見た山鳥毛の赤い瞳がサングラス越しに見開かれ、そして細められる。
「彼が『両面宿儺の器』か。なかなかどうして……」
「ええ。奇跡の生還を果たした虎杖悠仁くんです。彼本人はとてもいい子ですよ。」
「で、あのツンツン頭が新しい守り人か……にゃ。」
「伏黒恵くんです。彼も優しくて聡明な子ですよ。」
「交流会が終わったら挨拶に行きましょうか」「楽しみにしておこう」などと穏やかな空気で話す傍らで、審神者の脳内では虎杖……宿儺に言われた言葉を思い出していた。
——『貴様は四代目という事になっているのか。』
——『己の出生を、もう一度探ってみてはどうだ?』
あれから三日月と話をして、幾つか分かったこともある。けれど依然として謎は残ったままで、審神者はどうしたもんかなと考えていたのだ。
……一度、〝家〟に帰ってみようか。もしかしたら何か新しい発見があるかもしれないと、密かに数ヶ月ぶりの帰省を企てる審神者の視界に、〝とある姿〟が入り込む。
それはほんの一瞬画面の端に映っただけで、他の者達は気にも留めていないようだった。しかし彼女の〝目〟を通して画面を見ていた男士がそれに反応し、ややあって山鳥毛が警護に当たっている男士から連絡を受ける。
「小鳥、〝奴〟が現れたそうだ。」
その声は、今までの音より更に小さく、審神者の耳にだけ届く程の小さなものだった。
「みたいだね、反応したし。」
山鳥毛にそう返した審神者は、観覧している教師陣の邪魔にならないよう音を立てずに移動し、五条の隣に立つ。
「ごじょ先輩、ちょっと気になる事があるので様子を見てきます。」
そして上体を屈め耳打ちすると、審神者の報告に反応した五条が彼女の腕を掴んだ。
「僕も行くよ。」
「いいえ。こちらはまだ不確定なので、わたしと山鳥毛達だけで行きます。」
「今後何か起こるかもしれませんし、先輩はそれに備えてください」と言って離れようとするも、五条は納得がいかないといった具合で腕を掴む力を強くする。これは……と五条の行動に思う所があった審神者は、反対の手でそっと五条の手に触れた。
「大丈夫です。今度は無茶しません。ちゃんと自分の足で戻ってきますから。」
先日の事だ。あの用水路で倒れた審神者が現世で意識を取り戻したのは数日経っての事だった。目が覚めるなり決して穏やかじゃない空気を醸し出していた五条に痛いくらいの力で抱き竦められ、家入からはお説教を喰らい、伊地知には泣きつかれた。……あの時の事を、五条はまだ気にしているのだろうと思ったからこそ、そう断言してみせた。
引く気のない審神者を見て、折れたのは五条の方だった。僅かに嘆息して、審神者の腕を解放する。
「……絶対、無事に戻っておいで。」
「はい、必ず。」
明らかに気落ちする五条にそう微笑みかけて、審神者は踵を返す。既に部屋の外で待っていた山鳥毛・南泉と共に駆け出す頃には、先程まで浮かべていた笑みは欠片も残されてはいなかった。
「警護に当たっている皆は、そのまま待機。何か気になる事があれば直ぐに報告を。」
駆ける審神者の髪色が、瞳の色が、みるみるうちに変わっていく。
「もしそちらで不測の事態が起きた場合、各々の判断に任せます。子供達を守ってください。」
左腕には龍の紋様が浮かび、腰には一振の刀が出現する。
「こちらへは、山鳥毛と南泉、そして〝大倶利伽羅〟をお供にわたしが行きます。——皆、各々の役割を果たしてください。」
「「応。」」
そして審神者達は、学生達がいる交流会の会場ではなく。それとは真逆の位置にある、忌庫への入口へと向かう。
程なくして、会場全体を覆うように帳が降ろされた。
侵入者の事は逐一報告を受けていた審神者だったが、向こうのことは男士達に一任しているため、彼らを信頼して審神者は審神者の為すべきことを遂行する。何より向こうには、最強の男がいるのだ。心配するだけ野暮というものだろう。
己の事も、子供達の事も、今だけは置いていこう。それよりも優先すべき事が、審神者にはあるのだ。