五条、真人
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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「何この部屋、治安悪っ!」
部屋に入るなりゲラゲラ笑い出す五条に、一体何人の人間が「オマエもな!」と思っただろうか。
「ごじょ先輩が言います? それ。」
「ええ〜? こんなプリティフェイスの五条さんにそんなこと言っちゃう?」
「そのプリティフェイスとやらを隠している目隠しのせいで、より治安が悪くなったことにはお気づきで?」
席に座らずドアの近くに立つ審神者が五条を窘めるも、全く効果は見られなかった。相手が五条悟という時点で結果はわかりきっていたため、誰もが審神者を責める気すら起こすことなく、ただただ静観を貫いていた。冥冥のみが笑みを零していたが。
これより始まるは、東京校・京都校に所属している学生らによる姉妹校交流会だ。開催場所は東京校の高専敷地内の一画で、一日目に団体戦、二日目に個人戦を予定している。交流会が行われる際、会場周辺には呪術師を配置し結界の調整やイレギュラーな事態に備えて待機していた。
両校の教師陣は会場からやや離れた一室の観覧席にて、勝負に打ち込む学生達を見学する。遠隔で映像を送って貰うため、その部屋には協力者である外部の呪術師・冥冥の姿もあった。
そんなメンバーの中に、何故審神者がいるかというと。
「五条殿。お茶をどうぞ。」
「おっ! 気が利くねアリガト〜。えーっと……」
「前田藤四郎です。よろしくお願い致します。」
「ありがとう前田。あとはわたしがやるから、見張りに戻ってもらえる?」
「はい! お気を付けて、主君。」
「前田もね。」
自ら買って出たお茶出しの役目を終えた男士は、審神者に頭を撫でてもらった後満足したように意気揚々と本来の持ち場へと戻っていった。その幼い後ろ姿を見送りながら五条は前田から受け取ったお茶を啜り、「これでとうとう本格的に治安が悪くなっちゃった」などとぼやいていた。
そんな五条の行動に目を剥いたのが、自他共に五条悟嫌いを認める京都校の引率教師・庵歌姫だ。「あんたソレっ、飲んでも平気なの……!?」と五条を指差す彼女の手元にも、男士から受け取った湯呑みが置かれていた……歌姫だけでなく、ここにいる人間全ての手元にだが。
そこにいる誰もが、男士が淹れた茶に未だ口をつけてはいなかった。
歌姫の言を聞いて、五条と審神者はきょとんとした顔を見合わせる。
「えっ。平気も何も、わざわざカミサマがいれてくれたお茶を飲まないなんて無礼なこと出来ないでしょ。」
「あ、もしかして〝ヨモツヘグイ〟を心配してますか? 大丈夫ですよ歌姫さん、使ったお茶っ葉は伊地知くんが用意してくれた高専御用達の最高級のものですから。」
そもそもここは黄泉ではありませんし! と快活に笑ってGOサインを出す審神者の隣では、まるでそれを証明するかのように五条が湯呑みの中身を飲み干していた。珍しくまともな事を言い、行動にまで起こしている嫌悪の権化が歌姫や他の者達の警戒を解き、各々が湯呑みを手にしていく。
普段から本丸にて男士達の作ったものを食べている審神者としては、たかがお茶の一杯を恐る恐る口にする同僚達に苦笑いを浮かべるしか出来なかった。
「せっかく前田が淹れてくれたってのに、失礼な奴らだ……にゃ。」
「そう言ってやるな、子猫よ。戦人が警戒を怠らないのは良いことだろう。」
そんな審神者の両隣では、五条に『治安が悪い』と言わしめた要因のひとつである二振りがそれぞれ嘆息していた。
審神者がここにいる理由、それは交流会の警備面の強化要員としてだった。呪術師を六人用意するよりも、審神者の命令の元動くろくにんがいた方が効率が良いし安上がりというものだ。良いように使われていると男士達は憤慨していたが、審神者はのんびりと「みんなを紹介する良い機会じゃない〜」と快諾していた。
「それに、堂々と動ける方がこちらとしても都合がいいしね。」
これは審神者と男士達だけの、内緒の話である。
◇
「刀派・福岡一文字が長、太刀の山鳥毛だ。」
「同じく福岡一文字が打刀・南泉一文字だ……にゃ。」
「二振とも、降霊して縛りを結んでからまだ日が浅いんです。だからごじょ先輩達に顔見せがてら、現世のことも学ばせようと思って。」
「そっか。よろしくね〜ふたりとも。」
「ちょっ!! 五条、アンタねえ……!!」
審神者に忠誠を誓っている臣下の身とはいえ、彼らは古くからある刀の付喪神。神に対しあまりにもフランクな物言いをする最強に、一同先程のお茶の件の時同様ぎょっと目を剥く。耐え切れず歌姫が口を挟むも、審神者は相も変わらずのんびりとした口調でもう一度「大丈夫ですよ歌姫さん」と宥める。
「貴殿が五条家の長か。鶴丸から色々と話は聞いている。」
「え、アイツから? どーせロクなことじゃないんでしょ。」
「そんなことはないさ。君が小鳥のことを懇意にしていることや——」
「アーアーアー、この話はもうイイデース。っていうか〝小鳥〟って審神者のこと??」
「ほら、もう仲良しになったみたいですし。」
「あれを仲良しと言っていいの……?」
自分らと審神者や五条との男士達に対する温度差の違いに、もはや歌姫は呆れ返ったように息を吐く。まだ不敬な態度を取ることに畏れはあれど、審神者が言うようにもっと肩の力を抜いても良いのかもしれないと認識を改めることにした。
気を取り直すように、咳払いをした歌姫が審神者へ問う。
「ここに二振いらっしゃるということは、残り四振の刀剣男士が警護に当たってくれてるの?」
「はい。主に短刀や脇差達にお願いしています。本当ならもうひとり、向こうに行かせるつもりだったんですが……」
「この間の無謀な行動のお陰で、主には必ず二振付くことにしたんだ……にゃ。」
苦笑する審神者の言葉の続きを継いだのは南泉だった。審神者の肩に顎を乗せ、口を尖らせ至近距離で主を見る目はじっとりと、「信用してません」といった具合だ。
「うちの主さんは、すーぐ無茶するからな……にゃ。」
「だからごめんってば。」
「口で謝るだけじゃにゃあ……」
そう渋々言っているものの、審神者がその顎下を撫でると気持ち良さそうに目を細めていた。今にもごろごろと音が聞こえてきそうな南泉のその表情を見て、まるで猫みたいだと歌姫は微笑ましくなる。
反対に自分の落ち度を言われた審神者は、少しだけ気まずげに「だから、」と再度歌姫に向き直った。
「数は少なくなりますが、どうか信用していただいて構いませんよ。男士達は皆わたしの呪力を元に繋がっていますので、異変があった場合すぐ知らせてくれますから。」
「そこは疑ってないから大丈夫よ。それに、男士達にとって審神者が最優先ということも理解しているから。」
「……ありがとうございます。歌姫さん。」
こんな主従関係もあるのだなと物珍しげに思って、そりゃそうかと思い直す。この子と男士達の関係は、それこそ審神者が産まれた時から始まっているのだ。ただの主と臣下だけではない、彼女らは時に友人であり、きょうだいであり、親子であり、師弟でもあるのだ。こんなにも固く深い絆で結ばれているのを目の当たりにすると、このままでいいのではないかと思う。
……なのに、なんで〝アイツ〟は審神者の呪いを解きたいと思うのかしら。
ちら、と歌姫は横目に生意気な後輩を見る。意外にも太刀の刀剣男士と談笑を続けている様は穏やかで、喜怒哀楽の激しい奴にしては珍しいそれがますます歌姫を困惑させていた。
斯くして、それぞれの思惑が水面下で蠢く中、交流会の幕は切って落とされる。