甚爾(過去)
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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「夏油傑は、本当に死んだのか」
「え?」
部屋の入口に〝手入れ中〟の札を掛け、一人と一振は手入れ部屋の一室に入る。札が掛かっている間は審神者の集中力を削がない為にと、よほどの緊急がない限り他の男士は立ち入ることは許されていない。
それが意図的か偶然かは審神者にはわからなかったが、自然な流れで人払いをする辺りきっと他の男士には聞かれたくない話なんだろうと思った。
奥にある布団の上に大倶利伽羅は腰掛け、手前に敷いてある座布団に腰を下ろした審神者は道具を引き寄せ、早速本体の手入れを開始する。
本体に呪力を流れ込むのを感じたのか、大倶利伽羅は眉間に寄っていた皺の数を減らしていく。そうして余裕が出てきたのだろう、彼は淡々とあの時——審神者が意識を飛ばしてからの出来事を語った。
あの場に、大倶利伽羅だけとなった時。審神者の身体を守るため彼女の中に残り続けた男士の元に、虎杖や七海から逃げてきた特級呪霊・真人と鉢合わせたこと。
真人が審神者のことを知っていたこと、その上で〝あちら側〟へ誘われたこと、本体を触られ術式の被害を受けそうになったことなどなど。審神者にとっては心の傷を抉られるほどの報告を、よりにもよって本人が淡々と言うものだから、思わず両手に持つ彼の本体に力を込めてしまった。
——今、わたしの手の中にあるこの美しい刀が、壊されそうだったなんて。
「痛い」
「はっ! ご、ごめんなさい……」
審神者にとって、刀剣男士の破壊……つまり死は恐怖以外の何物でもない。それなのに自身の自己管理の至らなさで大倶利伽羅を危険に晒したことが、審神者は許せなかった。
「ごめんなさい、大倶利伽羅。わたしの所為で貴方まで失うところだった」
「……今、その話はいい。俺がアンタの身体を使いこなせなかったせいもある。」
涙ながらに頭を下げる審神者に、大倶利伽羅は溜め息を零すだけに留める。「話はまだ終わっていない」と言いたげな雰囲気を醸し出す彼に審神者は慌てて目元を拭って、しっかりと視線を合わせた。
「……まだ、何かありそうだね」
まだ脅かされるようなことを言われるのかと内心でビビりまくっている審神者をじっ……と見据え、それから大倶利伽羅はふいと顔を逸らす。
そして一度だけ歯噛みして、冒頭の言葉を吐いたのだった。
「なんで……ここでげと先輩の名前が出てくるの?」
ガツンと、鈍器で頭を殴られたような衝撃が審神者を襲った。それか、油断していたところを死角からナイフで突き刺されたような。それほどまでに、審神者にとっては予想だにしていなかったのだ。
明らかに動揺しているのは男士としての目から見ても刀から流れてくる呪力の流れからもわかりきっていた。しかし大倶利伽羅は、追い打ちをかけるようにただ事実を伝えるだけだった。
「そのツギハギの呪霊が言っていた。」
「で、でもげと先輩は昨年のクリスマスに、ごじょ先輩に……」
「五条の男が、情に絆されて夏油傑を逃がした可能性は?」
「それは……有り得ないよ」
それだけは有り得ないと、審神者の心は確信していた。でなければあの日、五条が審神者に向かって『離れないって言って』と望むわけがないだろうと思うし、自身を『最強』と語るとき、単称を使うはずがないからだ。
夏油傑は、五条悟に殺された。それは真実に違いない。
「なら、死体はどうだ」
「死体?」
「殺したあと、ちゃんと処理はしたのか」
しかしその問いに対しては、審神者は答えられなかった。
——知らなければいけない。
「……大倶利伽羅。その特級呪霊の呪力の気配、覚えてる?」
呪霊が言った夏油が夏油傑のことを指しているのか、そして指していたとしてもそれが本人なのかどうか。確かめなければいけないと、審神者は思った。
「……アンタならそう言うだろうと思った。」
「あら、わかってくれてて嬉しい」
「ただし、条件がある。」
決意を固めた審神者に直接賛成も反対もしない大倶利伽羅は、布団から腰を上げ審神者の前に片膝を着く。龍の彫られた腕を差し出され、その手の上に審神者が彼の本体を置くと、その距離のまま大倶利伽羅は審神者を見据えた。
「俺を、修行に行かせてほしい」
そして極となって自分が戻ってきたその時から事を起こそうと告げる彼の強い意志が込められた金の目を見て、審神者もまた力強く首を縦に振ったのだった。