七海、真人
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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——しくった。
腹部に走る痛みに、審神者は密かに顔を顰めた。
「よっし! これで片付いたっスね!」
「……そうだね」
動くものが猪野と審神者、刀剣男士達だけになったところでひと息を吐く。男士達と猪野が元気よくハイタッチしている傍らで、へし切長谷部は心配げに審神者に駆け寄ってきた。
「主! 先程の攻撃……っ!」
声を荒らげそうになる長谷部に「しー、」と人差し指を立て言葉を止めさせた審神者は、ひとつ深呼吸をして「それより、向こうはどうなったかわかる?」と金の瞳で長谷部を射抜いた。
審神者自身の瞳とは違う色にハッとした長谷部は、戦闘前と同じように審神者へ顔を寄せる。
「陸奥守らと戦っていた特級呪霊は逃走、用水路から地下を移動しているそうです」
「そう。じゃあ仕留めに行かないとね」
審神者がそう言うと同時に猪野の携帯端末から電子音が鳴り、勝利を喜んでいた彼は電話に出るために審神者達へ背を向ける。
その隙に審神者は長谷部以外の三振の顕現を解き、長谷部と共にその場を離れた。
……猪野がただ一人残されたことに気付くのは、電話を切ってからだった。
長谷部に抱えられながら距離を移動した審神者は、適当なところで降ろしてもらい自身の腹部へ手を掲げ呪力を流し込んだ。
審神者に、反転術式は使えない。しかし損傷をした刀剣男士達を〝手入れ〟と称しなおすことは出来る。今の審神者には、大倶利伽羅が憑依している状態だ。したがってあの時、家入の前でやって見せたように自身の身体の〝手入れ〟が可能ということになる。
「主……!」
「あはは……あれだけ大口叩いといて、情けないねえまったく……」
しかし今の審神者は、決して万全の状態ではなかった。度重なる任務、休めなかった身体はやはり疲れが蓄積しており、その所為もあってか先程の戦いでも呪力の消耗が激しかった。当然手入れにも呪力と集中力が必要になるのだが、今の彼女にはそのどちらもが減りに減っていた。
加えて、腹部損傷による出血だ。審神者の意識は、既に落ちかけていた。
「主、酷ですが意識だけは落とさないでください。主の意識が生得領域へ行ってしまえば、俺の顕現も解け貴女の御身を守るものがなくなってしまう」
もしそこへ、逃走中の特級呪霊が来てしまったら。考えただけで長谷部の顔は蒼白になり、身体の震えが止まらなくなってしまう。
そんな臣下の様子に、審神者はぼんやりする頭で矛盾してるなあ、なんて思った。
——わたしの魂を食べたい筈なのに、わたしに死んでほしくないだなんて……ああそれとも、相手が相手だから、かな?
確か、これまで未確認だったという今回の特級呪霊は、その人の魂に触れることで肉体を改造させているのだと七海からの報告で聞いていた。そんな奴に触れられることで、わたしの魂がどうにかなってしまう事を恐れているんだろうか。この神様は……と、審神者が思ってしまうのも無理はなかった。
と、現実逃避をしてみても現状は何も変わらない。ぐらっと最後に大きな眩暈を感じて、審神者の意識はとうとう限界を迎える。
——ああ、まだ手入れ終わってないのに……。
手に感じる温かな血液に、審神者は心の中で「ごめんなさい」と呟いて。
まるで眠るように、意識を手放したのだった。
「ある、」
審神者の意識が無くなったことで、顕現状態を保てなくなったへし切長谷部は彼女の生得領域へと強制的に戻される。別の場所に居る、陸奥守吉行や山姥切長義も同様だろう。
刀剣男士達の近くに居た者達は、初めての現象に皆驚きを隠せないでいた。しかし同時に、皆が察する。——審神者の身に、何かあったのだと。
「——あれ? こんな所に人間がいる」
そして、審神者を守る者が居なくなった地下で。満身創痍の特級呪霊が彼女を見つけたのも、時同じくしてであった。