五条、伏黒、刀剣男士
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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一方、審神者の生得領域——本丸では。
「いやー凄かったね両面宿儺」
大広間に全刀剣男士が集り、上座に座る審神者と先日の戦闘時の事が話し合われていた。
「とは言っても、僕達戦ってないけどね」
「奴さん、俺っち達に興味無さすぎだろ」
「あのイケメン君に全部持ってかれちゃったもんね〜」
最前列に座る、件の第一部隊だった燭台切は苦笑を、薬研は残念そうに、乱は審神者の後輩を思い出し可愛らしい反応を各々見せて。
「俺らの姿見た瞬間、「物の分際で邪魔するな」だもんなあ」
「我らを侮辱してきたのは確かに遺憾だが、主がご無事で何よりです」
「私としては、被害に遭った人達に祈祷を捧げられたから良しかな」
いつもと変わりない調子の御手杵、長谷部、石切丸の様子に、審神者はうんうんと同意を返していた。
皆が言うように、審神者と両面宿儺が対峙することはなかった。
こちらが乗り込むまでもなく審神者達の元へ現れた宿儺は、己の器となっている少年を人質に伏黒とのみ戦闘を開始したのだ。
『貴様とやり合うのは、またの機会にしておこう』
伏黒を吹っ飛ばし、ほんの僅かな時間、その場には審神者達と宿儺だけになる。そして呪いの王は、身構える彼女達に言い放ったのだ。刀剣男士達には、御手杵が言ったように。審神者には、物騒な笑みと共に。その言葉に審神者が何かを返すよりも早くこの場から居なくなってしまったため——十中八九、伏黒の元へ向かったのだろう——、審神者達は呆気にとられて終わったのだ。
『……追いますか?』
『止めておきましょう』
構えを解いた長谷部が問い掛ける頃には、審神者の髪色も瞳の色も彼女のものに戻っていた。そこで戦闘の意思が無くなったことを確信し、他の刀剣達も本体を下ろす。
『薬研と燭台切は、あの少年の元へ。死にはしないでしょうが怪我は確実なので迎えに行ってあげてください。……あと、器の回収も』
『オーケー』
『大将、なんであの童が死なないって思うんだ?』
『? あの少年も器の少年も〝強い〟ですから』
さらりと、さも当然の事のように告げた審神者に薬研と燭台切は目を見開く。そしてその意味を正しく理解した二振りは口元に笑みを浮かべて、審神者の命令に従った。
『乱と御手杵はもう一度周辺を見てきてもらえる?』
『まっかせといて!』
『うえーい』
『長谷部と石切丸は、わたしと一緒に建物の中へ。望みは薄いですが、生存者や遺体が残っているか確認しましょう』
『畏まりました』
『この辺りもこれ以上呪いが生まれないよう、しっかりと経を唱えないとね』
『ちょっと拍子抜けした感も否めませんが、今はわたし達が出来ることをやりましょう。——では、解散!』
「まあ、不要な争いを避けられただけ良しとして。次に宿儺と相見えることがあったら、またその時考えましょ…——それとは別に、みんなに確認しておきたいことがあるんだけど」
回想に浸ったのも数秒、審神者は全刀剣男士を見渡した後近侍として隣に座る鶴丸へ顔を向けて、ことりと首を傾げてみせた。
「宿儺の器の少年、生き返ると思う?」
燭台切に抱えられてきた器の少年は、宿儺に心臓をくり抜かれ明らかに絶命していた。仲間の死に、薬研から応急処置を受けた伏黒は目を逸らしあまり視界に入れないようにしていたが、関係を聞くと同級生だと小さな声で答えてくれた。あの場でそれ以上のことを聞くのは忍びないと思った審神者は、相槌を打つだけにしておいた。
審神者の胸中に浮上した可能性は、まだ確証が持てないでいたが故に。それを神達に聞くために、審神者は高専に戻り懐かしい顔触れに挨拶をする間もなく、直ぐに眠りについたのだ。
「……へえ。何故そう思うんだい?」
審神者の問いに更なる問いで返したのは、鶴丸だった。胡座を掻いた膝の上に肘を乗せ、頬を付いて覗き込むように審神者を見遣る。その顔は随分愉快そうで、審神者の答えに期待しているようだった。
「あの器の少年を殺して自分の一部も死んでしまうのは、宿儺にとってメリットは無いなあって。だから今頃は彼の生得領域に連れ込んで、〝縛り〟でも結んでる頃かなって思った」
わたしみたいにね。そう言って自分を指差す審神者に、鶴丸は笑みを深めながら先を促す。
「何故、あの器の少年が死ぬと宿儺に利点が無いんだ?」
「だって宿儺が受肉できたのって、封印されて以来初めてなんでしょ? また次いつそんな人間が産まれてくるかわからないし、宿儺だって指が欠けた状態より完全復活を狙ってる筈。——って思ったんだけど……」
審神者の話す内容はあくまで憶測の域を過ぎない。故に呪霊のことは呪霊に聞いてしまえと思い今に至るのだが……ニヨニヨと場にそぐわない笑みを浮かべる鶴丸のことが気になってしまい、審神者の表情がみるみる訝しげなものになっていく。
「……なに、その顔」
「いや何、感動しているんだ。まさかあのちびっ子がここまで成長するとはなあ」
ううっと泣き真似すらしてみせる近侍に、審神者は表情を変えぬまま正面へ向ける。すると驚いたことに、長谷部を筆頭に他の刀剣男士達も泣いていたり微笑ましげに笑っていたり、ほっこりする雰囲気を醸し出しているではないか。
ここに居る付喪神達は、審神者が幼い頃から——それこそ産まれた時から彼女のことを知っている。見守り、加護を施し、沢山の愛を注いできた。そんな彼女の成長を垣間見て、感動せずにいられようか。
それを察したのだろう、審神者の顔はぽぽぽぽっと忽ち紅く染まり、次の瞬間には羞恥を誤魔化すように「その生暖かい視線やめて! 長谷部は泣くのやめて!!」と声を張り上げたのだった。
審神者と刀剣男士、互いの関係性は良好そのものだ。
それが例え、贄と神という奇特な繋がりであろうとも。審神者の命が尽きるその時まで、この家族ごっこを続けていくのだろう。
それが、神達が審神者に課した〝条件〟なのだから。
「主の推察通りの展開になるだろうな」
「あ、やっぱり? 死ななくて良かったあ」
「随分とあの少年らを買ってるな。何かあるのかい?」
「初対面だし、何かあるってわけじゃ……ただわたしより若い子たちに、軽々と死んでほしくないだけ」
「……それもそうだな」
「あ、大将。黒髪の童に『よろしく』って言っておいたぜ」
「それって、あのイケメン君?」
「ああ。流石にあっちでの守り人が五条の坊だけじゃ頼りねえからな。スカウトってやつだ」
「ごじょ先輩、その呼び方嫌がってたなあ……」
「大将も認めてたし、別にいいだろ?」
「あの少年が了承すれば、だね」
「ねえねえ主さん、あのイケメン君は何ていうの?」
「……あ。聞いてないや」