五条、伏黒、刀剣男士
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
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わたしは審神者である。名前はあるが、まだ知らない。
わたしの名前が明かされる時、それはわたしの肉体が死に魂が神様達に捧げられる時だからだ。
故に、生きている時には名前を紡いではならない。真名を知られてはならないのだ。
——それが、神様達に愛された審神者の宿命である。
審神者とは何か。
この場合、役職としての意味で捉えてほしいのだが、簡単に言うなれば〝刀剣に宿る付喪神を降霊し、主従関係を結び〟
〝現世にヒトガタで顕現・使役する事ができる〟者のことを指す。
「まあ、ざっくり言うと〝特級被呪者〟だね」
複数のカミサマに取り憑かれてるようなもんだから。ととんでもない事をさらりと告げるこの男、現代にて最強の呪術師・五条悟は自身の膝で寝転ける審神者の頭を撫でていた。
「名字家は代々、日本刀——槍や薙刀なんかも含めて、刀剣に信仰が厚いお家でね。今では現存している刀剣の管理は全て名字家が担っているくらいだよ……で、先祖代々大切に大切に愛でていたら、付喪神が宿るようになったんだって」
呪術師の家系ではないけれど、一族の中には〝視える人〟もいたみたいでね。神達は名字の者に告げたらしいんだ。
『いずれ我らを現世に顕現し、使役する者……審神者が産まれ落ちた際には、我らの力を惜しみなく差し出す事を約束しよう』
「それを聞いた名字の者達はそりゃあ狂喜乱舞したらしいよ。ただでさえ大好きな刀剣に神が宿っただけでも歓喜するくらいだったのに、一族の繁栄が約束されたようなものだったからね……——でもまあ、そんな美味しいだけの話じゃないってのはよーくわかってるよね?」
『我らが力を与える代わりに、審神者の魂を貰い受ける。その者の〝真名〟を教えよ。——それが条件だ』
「審神者の力……まあ呪力だね。それは、神達にとってとても甘美なものらしい。だから彼らは、審神者の事が欲しくて欲しくて堪らないんだそうだよ」
え? 真名を知られたらどうなるかって? そんなの、審神者の命が尽きる前に神隠しされちゃうに決まってるじゃん。
それでも一族は、喜んで審神者の真名を神達に差し出し続けたそうだよ。これぞまさに人身御供だ。きっもちわるいよね? 僕もそう思う。
「でもそんな都合良く、毎回審神者の力を持つ者が産まれるなんて奇跡は起きない。三代差し出してから五十年近く、審神者は産まれなかったらしい」
その五十年の間、名字家は緩やかに衰退していったそうだよ。これに焦った当主は、四代目となる審神者が産まれたと同時に、神達と約束を取り直した。
『審神者が現世での生を全うしたその時に真名を教えます。だから審神者が生きている間は、ずっと力を与えていてほしい』
「神達の前で真名を口に出す=いつでも連れて行ってください、って暗黙の縛りが出来上がってたからね。真名を知られなければ審神者は神達を従わせる事ができるけど、真名を知られてしまうとそのパワーバランスが逆転するんだ。つまり、神達は好き放題できるってわけ」
その好き放題を止めさせるため、名字家は神達を説得したらしい。そしたら意外にも神達はその案を承諾したようで、今に至るってね。
「神達は、刀剣の付喪神。崇められるより刀としての本分を発揮したかったっていうのもあったみたいだよ。だから四代目からは「審神者」と「呪術師」を兼任して、神達を使役しては呪いを祓い続けているってわけ……まあ、その四代目ってのが今ここで寝転けてるコイツなんだけどねー」
だから恵が見た……会ったと言うべきかな。六人の姿は呪霊であるし、付喪神でもあるね。
ぺらぺらと饒舌に喋る五条に向かい合うようにして座っていた伏黒は、漸く自分が抱えていた疑問が解消された事に安堵の息を吐いていた。
突然邂逅を果たした女……審神者の事情さえ把握しておけば、今後どう接していけばいいのか自ずとわかるというもの。それさえわかっていれば混乱することも取り乱すこともなくなるから、今回の二の舞にはならない筈。そう思っての安堵だったわけだが、隙間が開いた思考回路で目の前の光景を改めて見て、また新たな疑問が浮上しているのも事実。
聞くべきか、聞かざるべきか。正直面倒な事になりそうな気もする。
だからここは敢えて触れずに、この場を離れよう。そう思い立ち上がった伏黒の動きを止めるのは、勿論目の前に座る男だ。
「あっれー、聞かないのこの状況?」
「俺が知りたかったことはとりあえず聞けたんで」
「え〜あんなので満足しちゃったの?」
欲がないなあ、と肩を竦める五条に苛つきながらも、言われた言葉が引っかかった伏黒は仕方なく、ほんとうに仕方がなく、「…………なんでその人、こんな所で寝てんすか」と聞いてみることに。
伏黒の問にこれでもかと口角を持ち上げた五条は、「よくぞ聞いてくれました!」と声を張った。
「審神者が現世で眠っている間、その意識は〝どこに行ってると思う〟?」
「? 質問の意味が……」
「正解は、付喪神の集う場所——〝本丸〟だよ」
刀剣に宿る神達を、審神者の身体に取り憑かせるには何分数が多過ぎる。しかしいちいち降霊術を施していては戦いの最中では圧倒的に不利となるし、多くの刀剣を持ち歩くのも一苦労。
「そこで審神者は、一度降ろした神達を自らの領域へ住まわせることにした。まあ控え室みたいなもんだね。あとは恵が見た通りだよ」
意思を持って名を呼ぶだけで、彼らはすぐに応えてくれる。審神者が呼び出さない限りは領域外……本丸を出ることもないから、神達の行動も把握できる。こんな芸当ができるのは、審神者と神達との間にしっかりとした主従関係が結ばれているからこそだね。
「審神者が現世で眠っている間、つまり今も、その意識は本丸へ行ってるのさ。そこで神達の相手をしてるらしいよ」
「相手って……」
「あー、今ヤラシイこと想像したでしょ!」
「してません。アンタじゃないんで」
「ノリ悪いなあ」
拗ねたように頬を膨らませるアラサーを見るのは正直堪えるな。そんな思いを隠すことなく表情に乗せた伏黒に「師匠に対してその態度な」と一頻り笑ってから、五条はからかいの姿勢を解いた。
「ヒトの身を得た神達は、ヒトとしての生活を楽しんでるんだってさ」
「ヒトとして……」
「刀剣達は、常に人間と共に生きてきたからね。自分たちも同じ経験をしてみたかったそうだよ」
布団で眠り、料理を作っては食べて、野菜を育て馬の世話をして。花を愛で、酒を嗜み、鍛錬や教養に励む。そんな生活を、自分達が寵愛する審神者と共に過ごしているというのだ。
随分と所帯地味た領域もあるもんだと、伏黒は呆気にとられていた。
「審神者が子供の頃は、現世と領域内での二重の生活によく混乱してたみたいだけど。流石に今は平気だね」
「……でもじゃあ、その人いつ寝てるんすか」
昼は現世での生活を、眠れば自らの領域での生活を送っているとなると、審神者の意識が休まる時はあるのだろうか。
呪力を回復するには、休養は不可欠だ。だからずっと起きているような状況でいれば、やがては呪力が底をついてしまうのではないか……そう危惧した伏黒に、五条はまたも口角を持ち上げる。
「そこは神達のおかげもあるみたいだね。審神者が死ぬのは万々歳だけど、きちんと生を全うして欲しいとも思ってるみたいだから」
呪力の量だけで言えば、僕より多いんじゃないかなあと零す五条に目を剥くが、これまでの話を聞いていればすぐに納得してしまった。
神だって呪霊の一種だ。それを数多く使役するには、それだけの呪力が必要になるのだから。
「でも厄介な事に、審神者は一度眠ると向こうで眠るまで絶対に起きない……完全無防備になる。それを狙う輩も少なくないからね、審神者が眠るまでは最強の僕がこうして傍についてなきゃいけないってわけ」
特級で最強の僕をこんな贅沢な使い方するのは審神者くらいだろうね。そう言ってくつくつ笑う五条は、迷惑に感じている風ではなく。むしろ光栄とばかりに、審神者の髪に指を絡ませ遊んでいた。審神者を見下ろすその目は隠されていて見えないが、なんとなく想像がついてしまい伏黒は気まずげに二人から視線を外した。
「あ、今ヤラシイこと想像した?」
「思考回路バグってんすか?」
「安心してよ。恵もこのお役目を担うことになるから」
「は?」
「神に『よろしく』って言われたんでしょ? それってつまりそういう事だから」
まあもう少し強くなってからだけどね! サラッと告げられたとんでもない事実に、伏黒は今度こそ開いた口が塞がらなくなってしまうのだった。