家入、伊地知
name
×刀剣乱舞のクロスオーバー名前は(あるけど)一生呼ばれません。
何せ審神者ですから。
呪術界のみんなと刀剣オタクの家に産まれた審神者と審神者過激派の付喪神達がわちゃわちゃしてる。
※勢いで書いているのでいろいろ設定がゆるい。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「伊地知くん〜久しぶり〜」
「ええ、本当に久しぶりですね審神者さん」
家入に会いに行ったその足——流石に着替えてからではあるが——で、審神者は伊地知に会いに行った。補助監督として上の地位に居る伊地知は多忙を極めておりあちこち出回っていることが多いが、その日は事務処理に追われていたようで高専の敷地内にいた。おかげで改めての再会も難無く叶ったわけである。
「先日は驚きましたよ。まさかあそこで貴女に会えるなんて」
「高専に向かってる途中だったんだよね。でもなんか変な気配感じるなあと思って行ってみたらあらビックリ、みたいな」
まさか受肉した宿儺がいるとは思わなかったからさ〜。と言う割には軽い口調で、ああそういえば学生時代もこんな調子だったなと伊地知は過去を思い返す。彼女の経歴や審神者としてのお役目を聞いた時は、まさかこんなにもいつも笑っている人物だとは思わなかったのだ。それが良い意味で裏切られ、また何度も驚かされる羽目になり、四年も共に過ごしていれば大抵の事では驚かなくなっていた。多少の心配こそあったものの、審神者としてだけではなく呪術師として成長していくも彼女の変わらない笑顔に、伊地知が何度助けられてきた事か。彼がこの世界から離れなかったのは、ひとえに審神者の存在も一役買っていたかもしれない。
「その貴女がまさか、七年も現世から居なくなるとは。当時の私に教えてあげたいですね」
「わたしも、こんなに長くなるとは思わなかったんだよー」
「貴女の補助に回るつもりだったのに、いつの間にか五条さんに着いて回ることが多くなって……」
「それは伊地知くんが優秀だからだよ」
「あの人に振り回されるくらいなら、まだ審神者さんを相手にしていた方が胃を痛めずに済んだものを……!」
「あー……うん、ゴメンナサイ」
だんだんと語尾が強くなっていく伊地知に、審神者は彼の苦労を垣間見た。性格はどうあれ至る面で適度に優秀な五条は、周りにも自分と同じ優秀さを無自覚で求める。そこで白羽の矢が立ったのが伊地知だったのだろう。そして彼は、その求めに応じられた人物なのだろう。
とても快挙な事であるが、見返りは自身の胃に穴が開くかどうかっていうくらいのストレスがかかっているようなので、審神者はとりあえず謝っておいた。
真面目で優秀過ぎるのも困りものだなあと、伊地知を見て思わざるを得ない。そう思った審神者は、腹部を押さえる伊地知の頭に手を乗せた。
「よく頑張りました。わたしは君が同期で誇らしいよ」
突然の頭を撫でられる感触に、伊地知の涙腺は決壊した。
「落ち着いた?」
「ええ……すみません情けない姿を見せました」
「今更気にする仲でもないでしょ〜」
見事大人の男泣きをした伊地知は、今は羞恥で頬を赤く染めている。この部屋に自分達以外居なくて本当に良かったと、内心で胸を撫で下ろしていた。
対する審神者は実にあっけらかんとしていて、伊地知を見て引いている様子は全くない。優しさに飢えている伊地知にとってはそれだけでも十分な救いだった。
「さて、そんな伊地知くんに提案です」
「何でしょう」
「多忙な君をお手伝いする人材、欲しくないですか?」
呪術師をサポートする立場にある補助監督、その仕事は多岐にわたる。ならば更にそのサポート役をつければいいのではないかと思った審神者は、実は家入と会う前に学長である夜蛾に確認を取っていた。呪術界や高専内部の機密に関わる事でもあるのでダメ元で聞いてみたところ、意外にもあっさり快諾されたのだ。
『審神者と主従を結んでいる刀剣男士であれば、情報を売るような真似もしないだろう』とは、夜蛾の言葉である。
伊地知にそう説明をしてやると、彼の表情がぱあっと忽ち明るいものになり「良いんですか!?」と声に力が宿る。その反応は答えを聞かずとも是であることがようくわかり、審神者の頬も緩むというもの。
「良いのですよ〜。とは言っても、任務中に何かあったらこっちでの顕現解いたりしちゃうかもだけど」
「ええ、構いません。審神者さんを守ることが彼らにとって第一でしょうから」
「そう言ってもらえて何よりだよ。伊地知くんの傍だからわたしも安心だしね」
そう言った後、審神者は山姥切長義を顕現させる。銀色の髪に理知的な深い青色の瞳を携えた男士は、勝ち気に微笑んでは伊地知と握手を交わした。
「山姥切長義だ。宜しく頼む、潔高」
「こ、こちらこそよろしくお願いします……!」
「長義は事務仕事が得意だし口も堅いし、社畜根性もあるけどきちんとお休み取らないと怒るからね。だからちゃんと休みながらお仕事してね、伊地知くん」
「審神者さん……!」
「わたしへの任務についても、長義に伝えてくれればいいからね」
補助監督として働くようになってから、ここまで誰かに優しくされた事などあっただろうか。そう思うくらい忙殺し擦り切れていた心に、同期の気遣いはとてもよく染み入った。
また泣き出してしまった伊地知を見て、審神者と長義は顔を見合わせて困ったように笑う。
でもこれからはまた学生の頃のように頻繁に会えるのだと思うと、審神者は嬉しくてしょうがないのであった。