あの頃の産物
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今日もベットに入る時間がやってきたので明かりを消した
「ふぁ~…同じ、休む」
そう言うと、這いばい男さんがニコニコと這い寄ってきた。
ベッドの端に両手を置き、膝立ちになり横になっている私の顔を覗き込んできた。口が三日月のような形に吊り上がっている。
『あなた 寝る?』 「うん。寝る」 彼は私の答えに嬉しそうに頷くと、ズルズルとベットに入ってきた。
最初は驚き、意識しすぎて中々寝付けない日が続いたが最近は慣れてしまったせいでベットのサイズを気にする余裕もある。
彼は全長2mくらいあるのだ。
あの世界から這いばい男さんと脱出し、暮らし始めて数か月。
特に変わったことはない、私は毎日仕事して帰宅、その繰り返しだ。
添い寝をしたがるようになったとき彼が落ちないように、くっついて休むよう伝えたので毎回くっついて寝ている。
もぞもぞと衣擦れの音がして、這いばい男さんの、実はイイ身体が目の前に現れる。ボロボロになった黒い和服から見える胸元がちょうど私の前に。
「…眼福」
気がつくと長い腕が伸びて、彼に抱きしめられた『あなた かわいい』
彼特有の温度の腕にまどろんでいると、 『ない 見る あなた 顔……』 這いばい男さんの切ない声が頭上で聞こえた。
体格差ができているので彼からすると私の頭しか見えないらしくそれが不満なようだ。
『見る 顔 上』 と悲しそうな、あのクローゼットの中で悲しんでいた時のような音で言われると意地悪をしたくなる。
仕方なく顔をあげると、ふにゃりと蕩けたカオでこちらを見つめていた。 『あなた 見た 私 嬉しい』
かわいい彼の顔に手を這わすと、ぎゅうっと抱きしめられ、すりすりと頬擦りされた。
彼の背をさすると私の背に回された彼の腕に力がこもる。
『……今』 「ん?」 『私 さわる』 「なにを?」 『……あなた』 そう言うや否や、体が正面を向き這いばい男さんが至近距離で覆いかぶさっている。長い黒髪が垂れ下がり、まるで閉じ込められてしまったみたい。 わざと逃れようと片手を彼の肩に押し付けてみるもびくともしない、それどころか彼の片手で両手首をつかまれ、いともたやすく頭上に縫いとめられた。
もう片方の手で私の顎をつかみ、親指で唇をなぞられる。
触れ合う寸前の間に、静かな空気が流れた。
『私 おかしい あなた』 ゆっくりと彼の顔が近づき、そっと角度を合わせられるとべろりと頬を舐められた。
「ひゃっ」
『私 あなた ほしい ここ』
這いばい男さんの長い舌がぬらりと耳をかすめ、くすぐったい。
ほんの少し唇が重なるだけで、息が詰まりそうになった。だけどそれだけじゃ足りないみたいに、彼は何度もそっと、ゆっくりとキスを重ねてくる。くすぐったいほど長くて、丁寧な舌先が唇の端をなぞるたびに、身体の奥がじんわりと熱を帯びていく
まるで開けてと言わんばかりに。 「ふぁ……」 私の唇がかすかに開くとすかさずそこに彼の舌が入り込んでくる。
首の後ろに回された手に固定され、うなじを撫でる手つきに甘い疼きがぞくぞくと背筋を這い上る。 『したい 口 たくさん…ジュ』 「っはぁ、ぁ」 『あなた 一緒 ずっと』
おねだりの声は甘くて、どこか切実で、断れるわけがなかった。次の瞬間には、更に深く口づけを交わしていた。
うわごとのように繰り返される言葉と、乱れた息使い、普段は温厚な彼が私に激しく欲情していることが伝わってきて、もうどうにでもなれ、と彼に身を任せた
愛しさが重なって、指先も腕も、唇も、どこまでも優しく、でも離れたくないという想いがあふれていた。
こんなふうに甘えてくる彼に、胸がいっぱいになる。
――これが怪異だって、もうどうでもいい。
彼がいるなら、この世界がどんなに変でも、私にとっては「幸せ」なのだと思った。
『あなた』
